手厚い歓迎
「え?…ユウトって名前……偽名なの…?」
「いや…偽名っていうか……あだ名だな…」
「あだ名?」
「ああ…俺は元々…樹勇兎って名前だったんだが……コイツが……」
“お前の名前を聞かれて…答える時に漢字も教えねぇといけねぇじゃん?……その時に樹が浮かばねぇし…思い出そうとすると頭痛が起きるんだ!…お前の名前の樹って漢字ヤバ過ぎ!!”
「…って言ったからさ……宇川が『樹』っていう漢字に慣れるまで…勇兎って呼び合ってたんだ……そんで…宇川が樹に慣れた頃には…俺の名前は勇兎で定着してたんだ」
「おー…そういう事もあったな…」
「……宇川さんの頭がヤバいだろ…」
「!!」
梅岡が呟くと、宇川は凄いスピードで梅岡の方を向き、真顔で見た。
「何でもないです」
「…だがまぁ……そろそろナオトに戻そうと思ってたし…同じ名前だとややこしいからな……今日でナオトに戻すか……」
そして、俺はその場のみんなへ言った。
「…お前ら…これからはナオトって呼べよな!」
「……ナオト…さん…か」
「まぁ…ユウトとナオト…そんな変わらないだろ…」
「ナオト…ナオト!ナオト!ナオト!ナオト!!」
突然宇川が叫び始めた。何だコイツいきなり、怖いな。
「頭痛に悩まされずに『ナオト!』…って言うの超気持ちいい!!」
「…何か気持ち悪いな……」
そして、ナナミがそんな俺達へ言った。
「……他の総特とか…部隊の隊長とか…まだお前らの事をよく知らない奴等に紹介してもいいか?……実は…柄にも無いのだが……歓迎パーティーを開く事になってな…」
「行く行く!」
「即答だな」
歓迎パーティーとは、聞いてた感じSdSは軍隊みたいな組織だと思っていたが、意外とそういうところもあるんだな。
「……せっかく準備してくれたんだ…行かないわけにはいかないだろ!」
「そうですね…」
「じゃあ…行こうか…」
俺達は、部屋を出てパーティーの準備がされているという、大広間へ向かっていった。
「これは……」
「…おー……」
「凄いな…」
大広間は飾り付けされ、人が沢山いる。その真ん中には結構デカめなケーキが置いてある。
「スゲェ!!」
「あ!…あの人達が異界から来たって人達じゃないか?」
「…おお!」
そして、SdSの抵士官達は俺達の元へ集まってきた。
「ようこそアースへ!」
「…お…おう…」
「さぁさぁ…席に座って……異界とか自己紹介とかしてくれよ…!」
俺達は案内されて席へ座り自己紹介と、俺達の世界やテオロンの事を話した。
……
「……へぇー…歴史意外は俺達の世界とそんな変わらないんだな…」
「…ああ」
「いいなぁ…悪魔とか天使がいない世界……」
「あっ…迫田さん…」
いつのまにか俺の背後へ、タトゥーやピアスをした美青年が立っていた。コイツ、強いな。
「アンタは…」
「……さっき来たばかりで自己紹介してませんでしたね……僕は迫田 斬仁と申します……異界の皆さん…よろしくお願いします…」
斬仁、タトゥーとかピアスしてるが、無気力でナヨナヨしてて頼りなさそうだな。
「ナヨナヨしてて弱そーだな!お前!!」
「はい…僕弱いです…」
「認めるのか…」
すると近くの抵士官が、そんな俺達へ言った。
「けど…迫田さんは総特抵士官で…【SdSの死神】って呼ばれてるんだ」
「へぇ……死神ねぇ…」
それを聞いたミユキが、斬仁に近付いて手を出した。
「僕も一応…【死神】って呼ばれてるんだ……奇遇だね!」
「そうなんですか…」
「それなら…僕も【死神】って呼ばれていますよ」
ミユキと斬仁の元へ、十郎が歩いてきた。何かコイツら似てんな。
「……なぁ…」
そんな時、奥の方から美しくも、獰猛な殺意の混じった声が聞こえた。
「…その異界来た奴等は……強ぇのか?」
「……極闇堂さん…」
ファーの付いた、冬着るようなコートを羽織る美青年が、俺達の元へ歩いてきた。
「……この世界には美形な奴しかいないのか…?」
「お前は…確か…」
「極闇堂 乖理……【SdSの魔王】って呼ばれてる……」
「極闇堂…か……へへ…今にも噛み付きそうな名前だぜ…」
すると乖理は俺達、異界から来たメンバーへ言った。
「アンタらがどれだけ強いのか…実際に見てみたいんだが……?」
「…勝負しろ……ってか?」
「いや…俺達SdSの……試験を受けてもらうだけだ………それでどれだけのスコアが出せるか……」
「試験…?」
そんな乖理へ、叫ぶ抵士官がいる。光Pだ。
「おい!…せっかく俺がパーティーの準備したのに!」
「まぁまぁ…実際……あの人達がどれだけ強いのか…俺達も知りたいし…」
そして、俺達はSdSの試験を受ける事になった。




