異世界の人々と出会いました
「…ここが異世界か…」
周りには古い服を着た人々が歩いている。どうやら俺たちはハイランド王国という国にいるようだ。
「…このステータスバーのようなもの……スマコって名前らしいですね」
「そんな名前なのか…」
俺たちのスマコの電話とメールにはホワイトが登録されていた。
「…どうする」
「まずは武器を買いませんか?…今のところ5万G持ってるみたいですし」
「……それもそうだな」
俺たちはまず、モンスターに対抗するために武器・防具屋に入った。中にはいかにもなおっさんの店主がいた。
「…らっしゃい!………ほぅ…変わった服装のお客さんだな…」
「武器と防具ある?」
「あるよ、この最新の鎧がね!…値段は1万Gだが」
「………じゃあそこにある鎖帷子と…そこのグローブと…その隣の靴をくれ」
オッさんはキョトンとしながら俺に確認した。
「……そんな軽装備でよろしいんで…?」
「十分だ」
そんな時に店の商品を見ていた十郎がオッさんに尋ねた。
「…装備を加工できる店…ってあります?」
「あぁ…鍛冶屋か……この先にあるよ」
「ありがとうございます」
「……防具買わないのか?…というか防具か武器が無いと加工できないだろ…」
鍛冶屋がある事が分かると十郎はすぐに店を出ていった。ちなみに俺の防具の合計は2300Gだった。俺は急いで十郎のあとを追った。
…
「…何を加工するんだよ」
「……この服です」
「服…?……それを…?」
十郎は鍛冶屋の中へ入って剣を作っている鍛冶屋のオヤジに言った。
「…すいません!…加工してくれませんか?」
「……何をだ」
低い声でオヤジは聞いた。すると十郎は全身の服を脱いだ。
「おまッ…」
「……その服をどう加工するんだ?」
十郎の女みたいな細い体を見て、俺は思わず声を出したがオヤジは全く動じていない…
「…水や泥などの液体に濡れてもすぐ乾くように……というよりも濡れるという事を防ぐようにしてください」
「防水…って事か?」
「はい」
オヤジは服を持って部屋の奥に入っていった。俺はその時に気になった事を尋ねた。
「何で防水にする必要があるんだよ」
すると裸になった十郎は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「…返り血が服に染み付いたら嫌じゃ無いですか?」
「……ッ!」
俺はその時、思わず後退りした。忘れていた、コイツは裏社会に入り、一年程で数々の組織をぶっ潰し…単独で大人数を無力化する事から…死神と呼ばれていた事を…
「……もう終わったのですか?」
「ああ…防水は魔術を付与するだけだからな」
オヤジはすぐ部屋から出てきて十郎に服を渡した。服は前と比べて大きな変化は見られなかったが、よく見ると胸の部分にD.Sという文字と黒いフードを着た髑髏の様な刺繍がされていた。
「…コレって何ですか?」
「…おまけ……あと防水以外に…剣や魔術…弓矢…そして炎に包まれても燃えないようにしといたから…」
「ホントですか?…ありがとうございます!」
「…良いなぁ…」
「……そっちもその加工しようか?」
「頼みます!」
俺も服を加工してもらった。裸で待ってる時に十郎にずっと見られてて恥ずかしかったけど。しかし久しぶりに十郎のあんな顔見たな……
…
中学の頃は十郎とよく遊んでいた。そして中学二年の時、俺が桜さんから誕生日にギター買ってもらったからカッコつけて十郎と路上ライブしたら十郎の歌声が買われてスカウトされたんだよな…
結局夏休みの一ヶ月間だけ『バッドラビット』っていうバンドで活動したら、十郎の歌声が人々を妖しく揺さぶり、一週間目にして東京ドームでコンサートをする事になった。
引退後は十郎と俺に様々な音楽事務所からスカウトがきた。十郎は断れず女装して歌姫『桜 純子』となった。そして『桜 純子』も中学三年の時に引退した。
そして去年、俺は十郎に引っ張られる形でe-Sportsの大会に二人で出場した。対戦ゲームはFPSだったが、十郎は終始ノーデスだった。決勝の時の十郎のスコアは確か…35キル0デスだったな。35ー7で俺たちの勝ちだった。
「やりましたね!…梅岡さん!」
「俺は18キル7デス…完全に足手まといだったがな………お前…一人で出場すれば35ー0だったんだぞ?」
「………そんな事言わないでくださいよ…僕は梅岡さんがいないと僕も本領発揮できませんから…」
…
この時の笑顔とさっきの笑顔は被っていた。
「…どうしたのですか?…ボーッとして…」
「……え?」
「…できてるぞ」
俺の目の前で俺の服を持ったオヤジが立っていた。
「すみません!」
俺は急いで受け取って、服を着た。そして俺の胸の部分にはD.Sという文字と煌めく光のような刺繍がしてあった。
「…あ…ありがとうございます!」
「……料金は初回だからタダでいい…」
そう言ってオヤジは工房に戻っていった。そんな時に十郎が5万Gを置いて言った。
「……いえ…それは悪いので」
「…だな……オヤジ!…俺達はちゃんと払うぜ!」
俺はカッコつけて全財産をオヤジの工房の机に置いた。今思えばそれは最悪の選択だったんだがな。
「……そう…なら遠慮なく貰う」
「…それじゃあ…」
そうして俺たちは加工屋を出た。次目指すのはギルドか?
「…ギルドに行くのか?」
「はい」
ということで、俺たちはギルドに向かって歩いていった。太陽が俺たちの出発を見送っているのか、眩しく煌めいていた。