変身
「……俺達ヤタガラスは…この日にミユキと勝負して……ミユキが勝てば…ヤタガラスをミユキへ継がせる約束をしていたんだ………『ヤタガラスを倒せば、ヤタガラスという組織を継いでいい』…ってな…」
「…そんな約束をしてたんだな……」
「僕の夢だったのだよ…ヤタガラスに成るのは…!」
「その勝負をしねーといけねぇから…早く来たんだよ!」
「…早く天界へ行くぞ」
ヤタガラスは、光の中へと入っていった。それを見ていた人々や、他のメンバー達も追いかけるように入っていった。
「あのヤタガラスと…あのミユキの勝負なんて……見ない筈がねぇ…!」
「最強と…最強……どっちが勝つんだ…!?」
そして、光の中へ入るとそこは大きな闘技場だった。人々はその中心を囲むようにして立ち、向き合っているヤタガラスとミユキを見ていた。
「……ミユキさんと…ヤタガラスか……どっちが勝つと思う…?」
「………どちらか決めるのは…とても難しいですね……」
「…おいお前ら!……巻き込まれんなよ!」
……
「さて……ミユキよ…」
「うん」
「……誰と戦うか言え」
ユウトさんが、ミユキさんへ尋ねた。俺的には、とんでもない破壊力を持つが、獣みたいに動きが単調な、宇川さんを選ぶ予感がする。
「…宇川さんじゃないか…?……お前は誰を選ぶと思う?」
「……まぁ…僕がミユキさんなら……宇川さんを選びます…」
するとミユキさんは、少しの沈黙の後に、笑みを浮かべて答えた。
「全員」
「…は?」
「……だ〜か〜ら〜…父さんと先生と師匠の全員だよ…!」
「…フッ……」
それを聞いたユウトさん、川畑さん、宇川さんは笑い始めた。しかし、ユウトさんと川畑さんの、目は笑っていなかった。
「…ふ…ふふ…w」
「おいおい…ミユキw…そいつぁ…………少し無謀だと思わねぇか…?」
とんでもねぇ圧が、会場を包み込んだ。
「…とんでもねぇ圧だな…ッ……ビリビリくるぜ…ッ…」
「……ユウト兄…相変わらずヤベェな…」
そんな雰囲気の中、ミユキさんは全くビビらずにヤタガラスへ言った。
「……父さんは…『ヤタガラスを倒せば、名を継いでいい』…って言ったよね?」
「………ああ…ヤタガラスの名を持つ俺達のうちの一人を倒せば…名を継いでいい…」
「…何か…それじゃあ駄目なんだよね…」
「……は?」
ミユキさんは、ヤタガラスの圧に負けない程の殺意を、醸し出しながら言った。
「…『ユウト、宇川、川畑に勝つ』というのが条件ならまだしも……『ヤタガラス』に勝つというのが条件だからな……」
「……………………」
「ヤタガラスは三人が揃ってこそのヤタガラスだ……だからその三人を一度に倒してこそ……本当の意味で『ヤタガラスを倒した』…って事になるんじゃあねぇか?」
突然、ミユキさんは口調が荒々しくなった。けど、まぁ、確かにミユキさんの言う事に一理あるな。
「へへ!…確かにそうだな!!」
「…ッたく……仕方ない…か…」
すると、ホワイトがヤタガラスとミユキへ言った。
「……そういえば…」
「…んだよこんな時に…」
「いやね…今の君達も充分強いけど……高校生の頃が一番強かったような気がするから…君達を高校生の頃に戻そうかなと思ったんだ……」
「おお!」
ヤタガラスを、全盛期に戻す事が出来るんだな。それにしても…高校生の頃が全盛期って……
「…だけどミユキ君と戦うんでしょ?…三人で…それも全盛期のヤタガラスが相手だと…ミユキ君困ると思って…だから戻すの後にしry」
「今して」
「え?」
ホワイトの言葉を遮って、ミユキさんが言った。
「……全盛期に出来るんなら今しろよ…その方が勝利も…味わい深いものになる…!」
「………だってよ」
「…分かった」
そしてホワイトは、ヤタガラスを見ながら指パッチンした。その瞬間、ヤタガラスの姿が、若返っていった。
「……おぉ…」
「懐いな!…この姿!」
「…………」
「え……えぇ!?」
その場にいる全員は、ユウトさんを見て驚いていた。
「な…なんだよ…」
「宇川さんと川畑さんは…まだほんの少し面影あるけど……ユウトさん……顔別人じゃないスカ!?」
今まで怖いくらい真顔だったユウトさんは、三白眼のマイペースっぽい高校生になっていた。
「え…えぇ!?」
「な…なんだよ…」
「宇川さんと川畑さんは…まだほんの少し面影あるけど……ユウトさん…目元めちゃくちゃ変わってるじゃないスか!?」
「四白から…三白になってますね…」
人々は、ユウトさんを見て驚いていた。前のユウトさんは、怖いくらいの真顔で、真っ黒な瞳の四白眼だったからだ。
「……あぁ…お前らの言ってる顔って…コレの事だろ」
「…そ…そうだよ!」
「この顔は…ジェノサイズモードっつー俺の戦闘形態の一つだな…」
「戦闘形態…?」
するとユウトさんは、説明し始めた。
「…俺の親父は恐怖を感じる程の真顔で……バケモノみてーに強かった……俺は強くなりたかったから…そんな親父の戦い方を真似てみようと思った……そして戦い方を97%程…コピーした時……俺の顔は…こうなっていた……」
「えぇ…」
「だから…ジェノサイズモードを発動してるとこんな顔になるんだ…」




