最終話:闇は消えて
「………馬鹿が…お前らの負けだ…」
「え?」
「……ホワイト…お前らが管理している世界の数は何個だ…?」
「57個だけど?」
ホワイトが答えると、エラトマ兄弟は馬鹿にするように、続けて言った。
「…数えてみろよ」
「えぇ?……1…2………ッ!?」
その時、ホワイトの顔色が変わった。
「……56個しかない!?」
「…へへ……」
「……何をした…?」
ホワイトが尋ねると、エラトマ兄弟は笑いながら答えた。
「お前らに俺らの真の計画を暴露しよう!」
「…僕達の目的はね……ゴッドカンパニーを破壊する事でも…世界を支配する事でもないのさ……僕達の目的は…業の復活さ…!」
「……なに?」
そして、エラトマ兄弟は真の目的を説明し始めた。
「僕達がテオロンに手を出したのが…確か数百年前……あの時から計画は始まっていた……」
「…俺達はテオロンで人間や魔族を敵対させ…わざと目立つ行動をし……お前らの注意を俺達へ向けさせた…」
「そして…君達の管理する世界のうちの一つをゴッドカンパニーのデータから消し…隠した……その世界で業を復活させる為に…」
「それがバレないように…俺達はお前らを引っ掻き回した……まぁ…ミノルに負け…俺達の力の破片からモンスターが生まれたのは…予想外だったがな…」
エラトマ兄弟は、俺達を嘲笑いながら言った。
「俺達はピエロに過ぎないのさ!」
「…君達が僕達を倒そうと…必死になっていたおかげで……業の復活もできたし!!」
「……やられたね………この2人を操ってた黒幕がいたんだ…」
「…ッ……」
すると十郎が刀を抜き、メメントモリを宿した刃を、エラトマ兄弟の前へ突きつけた。
「……ミユキさん…エラトマ兄弟を見つけてくれてありがとうございます」
「…殺るの?」
十郎は、無言でエラトマ兄弟をジッと見ている。
「……十郎」
「……………」
「十郎!!……やめろ…」
「…!」
俺が叫ぶと、十郎はハッとした様子で、刀を鞘へ戻した。
「…………ここで殺せば…真の計画の詳しい事が分からなくなる……」
そして、エラトマ兄弟はゴッドカンパニーの社員へ連れていかれた。どうやら、俺達はエラトマ兄弟に踊らされていたようだ。
「……僕達が管理している世界の一つで…業を復活させる……その為に…その世界を隠し…僕達の気を自分達へ移動させた……まんまと踊らされたよ…」
「…まぁ……過ぎた事は仕方がない…!」
「…………………」
「……十郎…」
……
「まぁ…という事なの……」
ミユキさんは、トラベラー達へ事の経緯を説明した。
「…エラトマめ……やりおる…」
「それで…どうするの?」
「とりあえずどうするかは…ゴッドカンパニーで会議するらしいよ」
すると、真風がミユキさんへと尋ねた。
「俺達はどうなるんだ」
「君達トラベラーは…元の世界へ帰れるって…明日くらいに迎えが来るよ」
「……そうか…」
それを聞いて、俺は十郎の肩をポンと叩いた。十郎は何かを察した風に、俺へついてきた。そして俺と十郎は、外の平原で向かい合った。
「…エラトマ倒すのが終わったら…お前と勝負する……って言ってたよな?」
「……はい」
「忘れてないようで安心したぜ……」
そして俺は構えた、十郎も刀を抜く。
「今の俺は…お前を止められなかった弱い頃の俺ではない……だから…今からお前を…闇から解き放つ!」
俺は拳を握った、十郎は笑みを浮かべた。
「…今度は俺が…お前を暗闇から助ける番だ…」
「………」
そう言って、俺は地面を蹴って十郎との間合いを詰めた。
「……なんてな」
「…ッ…!?」
俺は拳を寸止めしていた、十郎は呆気にとられている。俺は十郎の頭に、弱々しいチョップした。すると十郎が俺に尋ねた。
「………何故…」
「……俺がお前をぶっ倒そうとしたのは…十郎をブン殴って…ショックを与えたら元に戻るだろうという……馬鹿な考えからだった…」
「…………」
「だがしかし……今のお前の目には…闇が無い……かつての十郎だ…」
そう言うと十郎は、刀を見ながら俺に言った。
「そう…ですか……かつての僕に…」
「俺はお前が復讐に取り憑かれてるから…勝負して…目を覚まさせてやろうとしたが…その必要は無くなった……お前は…元の十郎に戻ったからな…」
「………いえ…完全に戻ってはいません…まだ……僕には」
「君達!」
その時、ホワイトの声が聞こえた。俺達が声のする方へ向くと、ワームホールのようなものの前に、ホワイトが立っていた。
「……ホワイト」
「伝えないといけない事があっから…来た」
「…なんだよ?」
ホワイトは、少しの沈黙の後に話し始めた。
「…………人間の魂は時間が経てば…自動的に記憶が消され…転生するシステムになっている……それで実は……君達の親の魂を探してみたんだ……魂があれば…生き返らせる事もできるから…」
「…な……ッ!」




