死神の一閃
「…フン……お前等二人が相手とは…随分と舐められたものだな…」
「君達を血祭りにあげて…君達のお仲間達も……すぐに殺してあげるよ」
「……やってみろ…ッ！」
その時だった、エラトマ兄弟の視線が、俺達の背後へ向いていた。
「…ュゥ…」
「……ユウ？」
「ユウトォォ！！」
俺達が振り返ると、そこにはユウトさんと川畑さん、原始人みたいな格好の髭がめちゃくちゃ生えた人が立っていた。
「…久しぶりだな」
「……そっちにテメェがいるとはな…」
「安心しろ…俺達はコイツらに手は貸さねぇし…お前と戦う気も無いからな」
「フン…コイツらの味方だろうが味方じゃなかろうが……戦いに参加しなかろうが…お前は生かして帰さねぇよ！！」
ラインはユウトさんへそう叫んだ後、俺達の方を見て言った。
「さっさとケリをつけるぞ！…俺はユウトをぶち殺したいんだ！！」
「…それは……できねぇよッ！！」
俺は地面を蹴り、ラインとの間合いを瞬息で詰めて、思い切りブン殴った。
「ぶぐッ！？」
「…あれッ！？」
何故か、神斬りの力が宿った武器を持たない俺の攻撃は、ラインへ効果抜群だった。ラインはその場に膝をつき、レインは驚きの表情を浮かべていた。
「どういう…あ！」
「なるほど…」
数秒して俺は理解した、それを見て十郎が言った。
“……梅岡君の手袋は …僕の父さんユウトが仕事をしていた時に着けていたものだから少しボロくなっているかもしれない……だってさ！”
「…ユウトさんがホワイトさんから引き受けた仕事である神殺し…その手袋がその時に着けていたもの……」
「……それに…この手袋は俺と適合率がMAXだ！！」
俺は拳を握りしめて、十郎へと叫んだ。
「これならやれるぜッ！！」
「…梅岡さん……これで戦えますね！」
するとラインは、立ち上がって俺の方を睨んだ。その表情には、強い怒りと殺意が浮かんでいた。
「……その手袋…ユウトが俺を……チッ…ムカつく事思い出させやがって…ッ！！」
「！！」
俺はラインの攻撃を、瞬時に受け流してカウンターを食らわせた。
「…十郎はレインを！……俺はラインを倒す！！」
「はい！！」
……
梅岡へレインの相手を頼まれた十郎は、梅岡がラインへ向かっていく中、レインへ向かって刀を構えた。レインも、剣を持っている。
「……僕の相手は君か…」
「…はい……貴方をズタズタにします…！」
「やってみろ」
その瞬間、レインが十郎との間合いを高速で詰めた。十郎は冷静にレインの攻撃を避け、カウンターを食らわせようとしたが、避けられた。
「………やるね…」
「貴方こそ…予想よりも少し上でした……少し…ね……」
「…ほぅ？」
それを聞いたレインは、少し怒りを搭載した剣で、十郎へ斬りかかった。
「ッ！」
「…チッ……」
レインの攻撃を避けると十郎は目を凝らして、レインだけをジッと見た。
『……えーっと…ここが…こうで…』
「ッらぁ！！」
『あ…少し違いましたね……計算し直しますか…』
十郎はレインの攻撃を淡々と避け続けた、レインは痺れを切らしたのか、そんな十郎へ言った。
「避けてるだけかい！？」
「少し黙っててください……今…貴方を殺す方法を思考し……脳内で試行錯誤してるので」
「上手いこと言ったような顔してんなッ！」
それを聞いたレインは、より一層攻撃を激しくさせた。それぞれ形や速度の違う無数の斬撃が、十郎へと襲いかかる。
「計算完了」
「…ッ！？」
そう呟き、十郎はレインと距離をとると、刀を構え直して剣技を披露した。それを見てレインは、憤怒の表情を浮かべた。
「計算した結果……この構えこそが…貴方を殺すのに最適だという結果となりました」
「……チッ…ムカつくよ……その構えを見てると…」
“…くた…ばれ……龍野郎…！”
レインはその構えを見て、少し苛立ったように言った。そして憤怒のままに、十郎へと向かっていった。
「内臓引っ張り出して…マフラーにしてやるよッ！！」
「………ここ…ッ！」
突っ込んできたレインが、横切るその瞬間、神斬りの瘴気とメメントモリを宿した十郎の刃が一閃。
「ぐふ…ッ……！？」
「…貴方がこの構えの僕を殺せる確率は……少なくとも1/10000000000000000000…ですよ……」
そして膝をつくレインへ近付き、目の前で十郎は屈むと肩をポンと叩き、ドス黒い殺意を纏いながらも優しい笑みで尋ねた。
「まだ……やります？」
「ひッ……死神…ッ……」
怖気付いているレインを横目に、十郎は自分に付与されている魔法に気が付いた。
「……Sign of Over…？」
その瞬間、レインの横へラインが吹き飛んできた。
「ぐく……」
「…そっちも終わったようだな……」
「……ええ…！」
