形勢逆転
『聖騎士達が感情的になっている今……聖騎士達が我に戻るまで…私が時間稼ぎをしなければ…』
「ッ!」
ヌカはスカーレットの斬撃を、冷静に受け止めた。そして、思い切りスカーレットへ剣を突いた。
「くッ!」
スカーレットはガードしたが、吹き飛ばされて壁へ激突した。
「ガフッ…!」
「スカーレット王!」
「…好機ッ!!」
ヌカがスカーレットの元へ向かおうとした時、とてつもない殺意を感じ取り、その殺意のする方へ向いた。すると、ジェイクが走ってきていた。
「……ジェイク…!」
「…もう誰も……死なせないッ!」
ジェイクは飛び上がり、ヌカへ斬りかかったが躱され、パペットのはめている左腕を切り落とされた。
「ジェイクッ!!」
「…カスが……お前みてぇな雑魚眼中にねぇよ!!」
「……左腕はくれてやる…ただし……お前の命と引き換えだ…ッ!!」
そして、ジェイクは油断していたヌカを袈裟懸けで斬った。しかし、ヌカはまだ息がある。
「ッ…んの……!!」
「…ッ!!」
その瞬間、ヌカの胸から剣が突きだしてきた。
「ぐぼッ…!?」
「…間に合ったようだな……」
「アレキリオン…!!」
そこには、アレキリオン達が立っていた。それを見て、スカーレット達は安堵の表情を見せた。その瞬間、ヌカは霧状になって消えた。
「ヌカ!!」
「……逃げられたか…」
聖騎士達とスカーレットは武器を納め、ジェイクの元へ駆け寄った。
「ジェイク…大丈夫か…?」
「……はい」
ジェイクは、左腕を止血しながら答えた。スカーレットはジェイクへ魔法を付与する。
「…痛み止めにはなるだろう」
「……すみません」
「…よし……私とアレキリオンはヌカを追うために地上へ戻る……残りの者は怪我人を治療しておいてくれ」
そしてスカーレットとアレキリオンは、神殿の外へと向かった。
……
「…ハァ……ハァ…」
「やっぱ…ミユキは強いね…」
灰色の平原には多くの兵士達が倒れており、立っているのはギルド戦士や王、数少ない兵士だけだった。そして、エラトマの方にはミユキ、エラトマの兵士の大軍の姿があった。
「…マズい状況だ……」
「……あれ?」
その時だった、エラトマの兵士達が消えていったのだ。そして、エラトマの近くへ跪くヌカの姿があった。
「負けたんだね…」
「誠に申し訳ありませんッ……!」
すると、神殿の方からこちらへ向かってくる、二人の影が見えた。
「……ワナは始末したよ…あとはそこのヌカだけだ…」
「…スカーレット……」
そこには、スカーレットとアレキリオンが立っていた。スカーレットとアレキリオンは、地上の様子を見て、何が起こったか理解した。
「……スマコで聞いていたが…まさか本当だったとはな……だが…」
「…天使と兵士はいなくなった」
するとレインはクスッと笑い、スカーレットへ言った。
「…確かに兵士はいなくなったけど……どうする?…その戦力じゃあ……僕達に」
「……いや…そうでもない…」
声のした方へ、エラトマ兄弟が向くと、そこには樹一郎と四騎士、そして桜郎を抱き抱える蛇とミノルの姿があった。
「…神殺し隊が帰ってきたぜ」
「……桜郎は負けたのか」
そしてエラトマ兄弟とヌカ、ミユキを囲うようにして、戦士達は並んだ。
「形勢逆転…とでも言いたそうだな…」
「………………」
「…馬鹿が……満身創痍のお前らなど…相手ではない……俺達も…いくらお前らが強かろうが…満身創痍の人間に遅れは取らねぇし…ミユキがいるからな…!」
「…だね……ミユキ」
エラトマ兄弟が、ミユキの方を振り返ると同時に、ヌカの首が宙を舞っていた。
「……え?…何してんの…?」
「僕のレンタル期限が丁度切れたよ」
そう言って、ミユキは仮面を割った。エラトマ兄弟はそれを見て、動揺していた。
「は?…なんで……」
「…何を驚いているの?」
そして、エラトマ兄弟へ一太刀ずつ攻撃した。エラトマ兄弟は、攻撃を食らって膝をついた。
「ぐくッ…」
「ミユキ…お前……傀儡になっていなかった…?」
「…うん!……君達の傀儡になってたフリをしてたのだよ…お二人さん」
ミユキは、エラトマ兄弟を見ながら言った。
「……さぁ…あとは君達でやっておしまいッ!」
そして、決めポーズをしながら梅岡と十郎へと叫んだ。
「…僕はゴッドカンパニーへ行くから!……後は予定通り君達で決着つけて!!…じゃあね!!」
「あ…あぁ…」
そう言い残して、ミユキは瞬時に消えた。すると梅岡と十郎以外の戦士達は、武器を納めた。
「……という事らしい…それじゃあお前達で決着をつけてくれ…」
「元々…お前達がエラトマを倒すって作戦だしな」
そして、梅岡へ十郎が言った。
「…父さんの敵討ち……やりましょうか…」
「……ああ!」
それを聞いて、梅岡は構えた。




