聖騎士の戦い
「…樹一郎さん!」
「……もう…太刀を振る力も残っていない…この一振りが最後だ……次は…助けられないぞ…」
「……………」
「お前が生きて帰る……それが今の俺の…最後の望みだ……」
するとミノルは、樹一郎に背を向けて言った。
「………ッ……分かり…ました…ッ……」
「…じゃあな」
「今まで……ありがとうござい…ました…ッ…!!」
ミノルは目に涙を浮かべながら、崩れていく神殿を走り去っていった。
『…片足だけなら…出ることはできたかもしれないが……両足が動かないのではな……そして…ミノルの力では俺をおぶさる事も不可能…フッ……俺の死場所は……ここか…』
崩れる天井を見つめながら、樹一郎はいろいろな事を想っていた。
『……ワーガナ…悪い……お前との戦いは…俺の勝ち逃げになっちまうな…』
『ミユキ…生きている内には…お前に勝ちたかったな……』
『…ミノル……強くなれよ……俺の分まで…』
『テオス…勝手にこのテオロンへ侵入して悪かった…俺の侵入を助けた神を…責めないでくれ……って…これは手紙に書いていたな…』
『…親父……姿を見せてやれなくてごめんな…』
「サヨナラだ…世界よ…」
「いや…まだ早いぜ」
樹一郎が声のする方を見ると、ジークフリートが樹一郎を、頭上に落ちてくる瓦礫から守っていた。
「お前……」
「…まだだ……お前が死ぬのはまだ早すぎる…」
「……そうだぜ…!」
ジークフリートの支えている瓦礫を、いとも容易く壊して、ユウトが歩いてきた。
「…親父……ッ…」
「まずは謝らせてくれ……お前のヤタガラスへの想い……気付いてやれなくて…すまなかった……」
ユウトは、樹一郎へ深々と謝罪した。
「……親父…………」
「…思う事はあるかもしれないが…とりあえず出るぞ」
するとユウトは樹一郎と樹一郎の武器を担いで、神殿の外へ走り出した。
「………相変わらず…人間離れした腕力だな…」
「…宇川には劣るがな……」
……
「樹一郎さん!!」
ユウトは担いでいた樹一郎を、その場に下ろした。ミノルは樹一郎の事を心配しながらも、ユウトの方を見た。
「……ユウトさん…だったか…」
「ああ」
「…師匠を……助けてくれてありがとう…」
「………ああ」
するとユウトは、その場から姿を消した。それを見て、樹一郎は笑みを浮かべた。
「ちゃんとした親父の顔を見るのは…3年ぶりだ……」
……
「くッ…はやイ゛ッ!!」
「…ッ!……一番敵になってほしくない人が…敵になっちゃったねぇ……」
ミユキは次々と兵士を斬って、エミリアへと斬りかかった。エミリアは、ミユキの包丁をガードして防いだ。
「……おッ…と……」
そして、すぐさまミユキの突きを避けた。周りの兵士は、ミユキを恐れて近付けずにいた。
「…こんな時に……聖騎士がいれば…ッ……」
……
外の状況など知る由もない聖騎士達は、エラトマの手下二人を捜索していた。
「……どこに潜んでいるのでござろうか…」
「…この遺跡は…そこまで広くない……見つけるのにそう時間はかからない筈だ…」
アレキリオンは地面に手をつくと、前を向いた。
「こっちだ」
「……え?」
アーサーとザイン、イリスは困惑しながらアレキリオンへとついて行った。するとその時、アレキリオンが叫んだ。
「伏せろッ!!」
「…ッ!!」
その瞬間、目の前から斬撃が飛んできた。聖騎士達はその斬撃を避け、アレキリオンは斬撃の飛んできた方向へ、火球を投げた。
「くッ!!」
「…よし」
すると少し遠くで、何かが燃える音が聞こえてきた。
「急げ!!…逃げられないうちにカタをつけるぞ!!」
「あ…ああ!!」
音のする方へ聖騎士達が向かうと、そこには火を消すエラトマの手下の姿があった。
「…見つけたでござる……ワナとやら…」
「……ッ…」
聖騎士達を前にして、エラトマの手下ワナは、ニヤリと笑みを浮かべた。
「…追い詰めた…とでも思っているのか?」
「……………」
「フン…人間が……舐めるなよ!!」
ワナは剣を召喚して、聖騎士達へ襲いかかってきた。アレキリオンは、すかさずワナの斬撃を受け止めた。
「……もう…死人は出さない…」
「…小癪な……」
そして、アレキリオンは思い切りワナをぶん殴った。ワナは、少し仰け反った。
「……テヤァァ!!」
すかさず、他の聖騎士が追撃を加えワナが攻撃、防御、回避をする暇を与えなかった。
『…これは……少しマズい…ッ……』
その時だった、ワナは半分ヤケになって聖騎士達へ斬りかかった。
「イリスッ!!」
「…はッ……」
傷が痛み、反応が遅れたイリスへ、ワナの刃が近付いてきた。




