無理矢理な正面突破
「……君達が戦いを終わらせるのは…ちょっと無理かな」
「…ッ!?」
「後ろの正面…だあれ…?」
俺達が振り返るとそこには九本の尻尾の生えた、大きな狐がいつのまにか佇んでいた。
「……コイツは!!」
「…神獣だよ……君達の何倍も強いよ…!……さぁ…やっておしまい」
すると狐が口を開いた、口からは炎が溢れている。
「……ッ!!」
その瞬間に、十郎が狐の首を一刀両断した。そして炎が消え、狐の頭は地面にぼとりと音を立てて落ち、体と共に淡く消えた。
「…あなたのガード……脆弱ですね…」
「……ほぅ…倒しやがった…」
十郎が、血を払って刀を構えた。レインはクスクスと笑いながら、俺達の目の前へ飛んできた。
「…神獣を倒したのは褒めよう……けど…ここまでだね…」
すると城の方から、ラインも歩いてきた。
「物音がすると思えば……何だお前らか…」
「…ライン!」
「……殺されに来たか?」
そして俺と十郎へ、向かい合うようにエラトマ兄弟は立った。
「さて…どうする?」
「…そう焦るな」
「は?…何が?」
俺は自信満々の表情で、エラトマ兄弟へガンを飛ばした。
「……その余裕も…無くなるからな…」
「強がらなくてもいいぞ」
「…ハッタリ?……泣かすよ?」
そしてエラトマ兄弟は溜息をつき、殺意の眼差しで俺達を見て言った。
「もういいよ……死ね」
「…へへ……やったんだな…樹一郎さん!」
エラトマ兄弟が、俺達へ攻撃しようとしたその時、エラトマ兄弟の身体から何かの破片が飛び散った。
「え…?……な……」
「…ナイスタイミングですね…樹一郎さん……」
「これは……」
俺達はほんの少し焦っている様子の、エラトマ兄弟へおちょくるように言った。
「余裕が無くなりましたね…!」
「さっきまでの余裕はどうしたのかなぁ〜!?」
「…馬鹿な……災神さんが…あのワーガナさんが……ッ!?」
……
「……あの樹一郎と…共闘するなんてな…」
「何だ?…魔族も俺の事を知ってるのか?」
「ああ…アロンの一部では有名だ……あの剣魔ラコウを倒したのだからな…」
「ラコウか…フン……数年前の事だが…懐かしく感じるな…」
魔王の四騎士、そしてミノルと蛇を引き連れて、樹一郎は災神ワーガナの元へ向かっていた。
「……もうすぐ…ッ!!」
樹一郎は殺気を感じ取り、後退りした。すると樹一郎のいた場所へ、弓矢が突き刺さった。前方を見ると、エラトマ兵士が弓を持っている。
「…厄介だな」
「樹一郎」
その時、魔王の四騎士が樹一郎を見て言った。
「時間が無い…こうしている間にこちら側が押されている可能性もある」
「…ああ……それもそうだな…」
「我等を盾にして進め」
「なに?」
樹一郎やミノル、蛇の前に魔王の四騎士が立って言った。
「……我等は魔族…魔素さえ無事なら何度でも蘇る事ができる……さぁ…さっさと後ろへ…」
「…すまない」
魔王の四騎士を前に、樹一郎達は走り出した。すると無数の矢が飛んでくる。
「くッ…」
「大丈夫か!?」
「…心配はいらないよ」
魔法や武器でガードするも、その圧倒的な数の矢を、魔王の四騎士は受けていた。
「……また来るぞ!…踏ん張れ!!」
「…ッ……」
そして、ワーガナのいる古代の神殿に樹一郎達が着く頃には、大量の矢が突き刺さった魔族は魔素になっていた。
「……お前等は死なせんぞ」
樹一郎は魔王の四騎士の魔素を、ミノルに渡して神殿の中へと進んだ。
「…久々だな……樹一郎…!!」
「ああ…ワーガナ」
神殿の奥には、平静を装っているも、怒りを隠し切れていないワーガナの姿があった。
「神を二回殺すのも…アリかもな」
「……相変わらずムカつく野郎で安心したぜ…!」
そして、ワーガナは首の無い神の像から降りて、樹一郎を睨んだ。
「……お前を倒させてもらおう」
「…やってみろ……前のようにはいかねぇぜ…!!」
「ミノル…蛇……下がってろ……無いとは思うが…俺がヤバくなった時だけ…助太刀を頼む…」
「……はい」
ミノルと蛇が離れたのを確認して、樹一郎はハンマーと太刀を取り出した。
「…また神斬りを宿した武器を創ってしまうな……」
「……そういえば…お前はクロウだったな……だが安心しろ…お前のその武器が神斬り化する事は無い…」
数秒ほど静寂が続いた、そして最初に仕掛けたのは、ワーガナだった。
「ラァッ!!」
「……!」
ワーガナの攻撃を、樹一郎は避けた。そして、樹一郎は不敵な笑みを浮かべて、ワーガナへと言った。
「魅せてやろう…前よりも進化した……無喰流を…!!」
「……ッ!!」
その瞬間、光の如き速さの刃が、ワーガナへ襲いかかった。
「これは……閃光流…」
「まだまだあるぜ…ッ!!」




