ミユキの性癖
「な……」
女性は剣を振ったが、ミユキはそれを簡単に受け止めた。女性はミユキから離れて、剣を構えた。
「…天使の使う剣技は…何度も見たことがある……」
「………………」
「…………………………ミユキ…下がってろ…」
攻撃の体勢に入ったミユキの前へ、刀を持つムサシが立った。
「この女は、俺の国の聖騎士であるバラドとイリス。そして仲間となったエルアトラの仇だからな。だからこの女は、俺が斬る」
「あ…そう…」
それを聞いたミユキは、包丁をしまった。すると女性は、ムサシを見て少し余裕の表情になった。
「…あなただけが相手なら……私の勝利ですね…」
「……………ほう」
少し怒りのこもった声で、ムサシは女性を見た。
「ミユキはまだしも…ムサシ……あなた程度の人間には遅れをとりません……では…あなたを始末して…一旦退ひ」
「もう遅れをとっているのだ、貴様は」
「!!」
いつのまにか、ムサシは女性の目の前まで来ていた。そして剣を振るうと、女性はガードした。その瞬間だった。
「グッ…ガふッ…!?」
「二天一流を知っているか?」
女性の胸を、槍が貫いていた。女性が膝をつくと、ムサシは槍を引き抜いた。
「ムサ…シ……ふふ……あぁ…そういえば……あなたは二天一流…扱う武器は二本でしたね…」
『…油断……ッ…』
「相手を甘く、見過ぎていたようだな。戦いでは、相手が格下と思っていると大抵の者は、自身の強さを過信する。過信していると、戦いでほんの一瞬、油断してしまう。それが命取りになるのだ。俺は格下相手だと甘く見て、己の強さを過信し、命を失った侍を大勢見てきた。だから俺は、相手が羽虫だろうと、全力で斬るのだ』
そしてムサシは、槍をスマコに収納して刀を鞘へ納めた。するとミユキが、女性へ自身の血を与えた。
「…傷が……一体何のまッ…!?」
「天使でも…身体の構造は人間と同じなんだよね」
女性の身体へ、ミユキの指がめり込んだ。その瞬間、女性はスタンガンでも撃たれたかのように、その場に倒れた。
「…死んでもらっちゃあ困るからね…!」
『い…しき…が…』
「教えてほしい事が山ほどある…!」
……
「………………」
「悪神の事を…教えてくれたら死なずに済む…」
女性は取り調べ室で拘束されており、魔族の尋問官に尋問されていた。すると痺れを切らしたのか、尋問官が声を荒げて言った。
「強がるのもいい加減にしろよ!!…さっさと言え!!……ぶっ殺すぞ!!」
「……ぶっ殺す?…ふふ……確かに天使は人間の身体と同じ…人間が死ぬ程のダメージを与えられたら天使も死ぬ…」
そして不敵な笑みを浮かべながら、女性は尋問官へ言った。
「しかし…人間と違って天使は……肉体が滅びようと魂は残る……だから何度でも蘇る事ができる……ふふ…殺してもいいですよ?…何度でも蘇りますから」
「クソ…この野郎…」
すると部屋の中へ、ミユキが入ってきた。尋問官はそれを見て諦めたような口調で言った。
「…これだと……拷問しても言わないと思いますよ…」
「……天使とか悪魔は…死んでも復活できるから…死の恐怖が無い……ここからは僕がするよ…」
「…無駄だと思いますがね……」
尋問官が出て行った後に、ミユキは机に並べられた拷問器具を見ながら、女性へ言った。
「…僕はさ……父さんや師匠…先生にヤタガラスの流儀を教えてもらってから…一度も人を殺した事がない……殺すべき人間が見つからないから…」
「……………………」
「だけど…人間の苦し悶える顔が見たくて見たくてたまらない……だから…死なない程度に……それでいて死ぬ方がマシだと思う程の痛みを与えて愉しんでいた…」
そして包丁の刃を触り、指から出てきた血を舐めながら続けて言った。
「…限界まで痛みを与えたり…死にそうになったら僕の血を与えて回復させる…そしてまた……ふふ…」
「……サディストですね…」
「よく言われるけど……一度やってみたら病み付きになるよ!……感触的には…魚とか豚肉をさばくのに近いかな…」
その瞬間、包丁を女性の腹へ突き刺した。女性は無表情で、何の反応もしない。
「やっぱり君は……痛みを感じないか…」
「ええ…あなたとは相性最悪ですね」
するとミユキは包丁をしまって、天使の目を見ながら言った。
「…痛みで歪む顔も好きだけど……快楽に溺れる顔も好きだよ…」
「………………」
「痛みを感じない人は……快楽に溺れさせるといいよ…」
「…へぇ……」
そしてミユキは、指の骨を鳴らすと女性へ近付いた、女性は無表情のままだ。
「耐えてもいいよ?……だけど…気持ち良すぎて…逆に苦痛だと思うけどね!」
「…痛みを感じない私が……快楽に溺れるとでも?」
「……痛みを感じないからこそ…快楽には溺れやすいんだよ……それに今の発言…フラグにしか聞こえないよ…」




