梅岡と十郎のコンビネーション
「……他の仲間への連絡は…」
「…もうやった……だが…来るのに時間がかかる…」
「どのくらい…?」
「…………早くても5分はかかるようだ…」
すると女性が目にも留まらぬ速さで、ジェイクへ詰め寄った。そして振り返ったカオルが、ジェイクとサランがしゃがんだのを確認して、大太刀を女性に向かって薙ぎ払うように振った。
「うッ…!?」
「…聖騎士は……刃も脆弱ですね…」
大太刀の刃は、粉々に砕けていた。カオルが一瞬、動揺したのを見て女性が喉元へ刃を突き立てた。
「…鈍臭いわね…ッ!!」
その時、サランがカオルの目の前へ飛び出して、カオルを突き飛ばした。
「あ…ッ……うぐぅ…ッ!!」
「ア…アンタ…ッ!」
女性の刃はサランの喉を貫いて、真紅に染まっていた。
「…き…ア……後…たの…」
「サラン!」
そしてサランは魔素となった、その魔素となったサランを、女性が踏みつけようとした時、カオルが折れた大太刀を女性へ投げ飛ばした。
「……カオル!」
「…先に死にますか?」
女性はカオルの方へ、間合いを詰めて迫った。そして女性がカオルへ斬りかかった瞬間に、ジェイクが女性の胸へ剣を突き刺した。
「…あら……これは…」
「……やったか…」
剣は胸を貫通しており、女性はその場に膝をついた。安堵してしまったジェイクがカオルの方を見ると、カオルの胸から血が吹き出した。
「カオル!?」
「…あれ……これ…」
そしてカオルはその場に膝をついて、虚な目となった。
「……油断は禁物と…教わりませんでしたか?」
「!」
ジェイクが前を見ると、剣を振りかぶる女性の姿があった。
『あぁ…クソ……俺は……こんな…』
「さよなら」
死ぬ覚悟を決めたジェイクが諦めた瞬間、金属音が鳴り響いた。
「こんにちは」
「おや…ミユキさん…」
ジェイクの頭スレスレで、ミユキの包丁が女性の刃を防いでいた。
「……カオルさん…息がありませんね…」
「………………………貴様…」
「…ジェイク君…ごめんね……悲しい思いさせて…………だけど安心してね……今からこの子…グチャグチャにするから…!」
放心状態のジェイクへそう言って、ミユキ一行は女性の方を睨んだ。
……
「…お前……」
目の前にあるカオルの死、それを見た梅岡とムサシは、殺意を抱いた。
「……大丈夫…安心して…」
そんな二人に、ミユキが安心させるように言った。
「ムサシさん……怒るのは分かるけど…今は冷静に……ムサシさん…あなたは感情で動いて死んでいった者達を見てるでしょ…!」
「………………………そうだな…すまない…」
「……梅岡君も…怒りに支配されないで……前にも言ったけど…冷静に相手を見据えるんだ…」
「…ああ」
その言葉を聞いて梅岡の怒りは薄くなってゆき、ムサシも冷静になる事ができた。
「…ミユキとムサシ……あなた達が相手なら…私も少し本気を出す必要がありそうですね…」
女性は、ミユキ達に向かって剣を構えた。そしてミユキに向かって、縦に斬りかかった。ミユキが簡単に避けると、女性は笑みを浮かべて言った。
「狙いは…あなたですよ」
「…ッ!?」
梅岡の方を見て、女性は梅岡へ突きをした。すると梅岡の上半身は無くなっていた。
「梅岡さん…!」
「…な……ッ」
「……ッぶねぇ…」
よく見ると梅岡は、大きく仰け反って刃を避けており、そして刃を白羽取りで止めていた。
「…本気の引き出し方を…あの時に会得していてよかったぜ……」
「ナイスだよ!…梅岡君!」
「…………………うむ」
そしてムサシとミユキが、女性へ斬りかかった。女性は梅岡の手から刃を引き抜こうとするが、梅岡が離さなかった。
「……くッ…」
女性は剣を捨て、ムサシとミユキの攻撃を避けた。
「…剣を捨てて……良かったのかな?」
「………問題ありません…剣は何本でも作れますので…」
「おわ…ッ…」
すると、梅岡の持っていた剣が、溶けて消えた。そして女性の手には、さっきの剣があった。
「…へぇ……」
「……では…いッ!?」
その瞬間、十郎が女性へ斬りかかった。女性はすぐさま避けて、カウンターを喰らわせようとしたが、十郎はすかさずガードした。
「…魔素が無いと……少しだけ重いですね…」
「戦えない事は無い?」
「はい」
十郎が答えると、女性はその隙に十郎の胸へ剣を突き刺した。
「……一人目はこれで…」
「いえ…倒せていませんよ」
女性の背後には、大鎌を持つ十郎が飛び上がっていた。そして女性が振り向いた刹那、無数の斬撃が女性を襲った。
「…ぐッ……」
「こっちもいるぜ!!」
その斬撃に繋がるようにして、梅岡が女性へ殴りかかった。女性は焦りながらも避けた。
「……十郎君や梅岡君が…倒してしまいそうだね…」
「…………………ああ…」
その瞬間、女性は黒い霧に包まれて、姿を消した。
「………………逃げたぞ…!」
「…あれれ?……逃げちゃった?」




