聖騎士に突きつけられた死
「……なに…ッ……」
「よそ見するな!!」
エルアトラの声を聞いて、バラドが女性の方を向くと、女性は目の前まで迫っていた。
「くッ…」
その女性の斬撃を防ぎ、女性に向かって薙ぎ払いをしようとした瞬間、バラドは何かを察知してジャンプした。
「……う…アレ…!?」
バラドは着地した瞬間、バランスを崩して膝をついた。そして痛みを感じる右足を見ると、膝から下が無くなっていた。
「…ま……ッ…」
『クソ…ここまでとは……想定外だったぜ…』
「弱いですね…」
エルアトラは、バラドの方へ向いている女性に、斬りかかった。
「……駄目だ…」
そう呟いたエルアトラの両腕を、女性が持っていた。そしてエルアトラは倒れ、バラドも目の前が暗くなっていった。
「…次は……どこにしましょうか…」
「ク…ソ……」
『早く…この事を………ッ!』
女性が去った後、バラドは薄れゆく意識の中、地面を這いつくばりながら無線を手に取って、王達へ連絡した。
「…悪神の…手先を発見した……だが…奴は死ぬほど強い……返り討ち…に……アッ…テ…」
……
「……なるほどね…」
「…王達や……かつて神を殺した…ミノルレベルの猛者しか…倒せねぇだろうな……」
「手先があの強さだ……神の強さなど…想像したくもないな…」
悪神の手先が、そこまで強いのか。すると話を聞いたミユキさんが、立ち上がって俺達へ言った。
「殺るかぁ…」
「…あ…ああ!」
「…………………ちょっと待て…」
俺達が行こうとすると、ムサシさんが俺達へ言った。
「…………俺の国の騎士を斬った奴は…俺の手で斬る……俺も同行しよう」
「…そうだね」
そして、俺達は窓の外を見た。窓の外には灰色の大地が広がっている。
「…………………悪神の手先は恐らく…他の捜索隊の元へ現れる筈だ…」
「よし…それじゃあ捜索隊のみんなの所へ行こうか……手先ちゃんを……KILL為に…!」
……
「……ったく…アンタ達と行動してるだけで虫唾が走るわ…」
「…それは俺もだ」
「二人とも…喧嘩の前に……」
ジェイクとサランが、カオルの指差した方向を見ると、そこにはメイド風の女性が立っていた。
「あらあら…向こうから来てくれるなんて……手間が省けたわ!!」
「サラン!…待て!!」
サランが女性に、巨大な炎の球を投げ付けたが、女性は傷一つ、それどころか服すら焼けていなかった。
「…へぇ……」
「……悪神の手先のその女は…エルアトラやイリス…バラドを赤子扱いする程の実力者だ……気を引き締めてかかるぞ…」
「はいはい…分かりました…」
三人は女性に向かって構えた、女性は三人を見下しているような目付きで、ジッと見ていた。
「……慎重にか」
その瞬間、ジェイクはすかさず剣で女性の攻撃をガードした。
「…速いな……」
「……フッ!!」
そしてカオルとサランが、女性へ攻撃しようとした。しかし、女性はすぐさま回避して、二人の背後へ回り込んだ。
「なッ…」
女性が二人を斬ろうと、剣を振りかぶった瞬間に、ジェイクが二人の間に剣を通して女性へ突きをした。
「チッ…外した…」
しかし女性は空中で体制を変えて、突きを華麗に躱した。そんなジェイクに、カオルが小さな声で尋ねた。
「……他の仲間への連絡は…」
「…もうやった……だが…来るのに時間がかかる…」
「どのくらい…?」
「…………早くても5分はかかるようだ…」
すると女性が目にも留まらぬ速さで、ジェイクへ詰め寄った。そして振り返ったカオルが、ジェイクとサランがしゃがんだのを確認して、大太刀を女性に向かって薙ぎ払うように振った。
「うッ…!?」
「…聖騎士は……刃も脆弱ですね…」
大太刀の刃は、粉々に砕けていた。カオルが一瞬、動揺したのを見て女性が喉元へ刃を突き立てた。
「…鈍臭いわね…ッ!!」
その時、サランがカオルの目の前へ飛び出して、カオルを突き飛ばした。
「あ…ッ……うぐぅ…ッ!!」
「ア…アンタ…ッ!」
女性の刃はサランの喉を貫いて、真紅に染まっていた。
「…き…ア……後…たの…」
「サラン!」
そしてサランは魔素となった、その魔素となったサランを、女性が踏みつけようとした時、カオルが折れた大太刀を女性へ投げ飛ばした。
「……カオル!」
「…先に死にますか?」
女性はカオルの方へ、間合いを詰めて迫った。そして女性がカオルへ斬りかかった瞬間に、ジェイクが女性の胸へ剣を突き刺した。
「…あら……これは…」
「……やったか…」
剣は胸を貫通しており、女性はその場に膝をついた。安堵してしまったジェイクがカオルの方を見ると、カオルの胸から血が吹き出した。
「カオル!?」
「…あれ……これ…」
そしてカオルはその場に膝をついて、虚な目となった。
「……油断は禁物と…教わりませんでしたか?」
「!」
ジェイクが前を見ると、剣を振りかぶる女性の姿があった。
『あぁ…クソ……俺は……こんな…』
「さよなら」
死ぬ覚悟を決めたジェイクが諦めた瞬間、金属音が鳴り響いた。
「こんにちは」
「おや…ミユキさん…」
ジェイクの頭スレスレで、ミユキの包丁が女性の刃を防いでいた。
「……カオルさん…息がありませんね…」
「………………………貴様…」
「…ジェイク君…ごめんね……悲しい思いさせて…………だけど安心してね……今からこの子…グチャグチャにするから…!」
放心状態のジェイクへそう言って、ミユキ一行は女性の方を睨んだ。




