シントウキョーで人探し
そして、作戦の話は瞬の速度で終わり、聖騎士達と魔王の四騎士達が、お互いを見ながら出て行った。王達も、ミユキに促されて出て行った。
「さて……何で残されたか分かりますか?」
「……あ!…気配の消し方教えてくれんの!?」
「まぁ…それもそうだけど……その前に言いたい事がある!」
俺と十郎の名前は、紙に書かれていなかった。それを不思議に思っていると、ミユキさんに残れと言われた。
「なんすか…?」
「いやね…十郎君はいいんだけど……梅岡君…君に言っておきたい事があるんだ…!」
「え?…なんすか?」
ミユキさんは、少しの沈黙の後に俺へ言った。
「……ここからは…悪神との戦い……魔族やモンスターとは格が違う……だから恐らく…目の前で人が死んだりするかもしれない…」
「え……」
人が死ぬという生々しい表現を聞いて、俺は固唾を飲んだ。
「…だから……目の前で人が死んでも…なるべく気を確かに保つように…ね…」
「……あ…あぁ…」
ミユキさんはビー玉みたいな目、そして無機質な声でそう言った。
「………モンスターや魔族と戦った時は…死人が出なかったし…大丈夫だと思うけどなぁ…」
「あれは運が良かったのと…相手が大した事なかったからさ…」
「魔王軍が…大した事ない…?」
俺が尋ねると、ミユキさんは笑顔で頷いた。
「うん!……この際…ハッキリ言うけど…魔王軍程度にやられるなら……この先…瞬で死んじゃうよ…?」
「悪神との戦いは……そこまで厳しいものなのか…!?」
「そりゃあ…神だからね……相手は…!」
こりゃあ、帯を締め直さないとな。そういえば、確かに相手は神だ。簡単に倒せる筈がない。
「……すみません…」
話が終わると、十郎が紙を持ちながらミユキさんへ尋ねた。
「何故…僕達の名前が入っていないのですか?」
「ああ!…それはね……」
するとミユキさんは、俺達へ言った。
「…ミノル君の師匠の…キイチローという人を……僕と一緒に探してほしい…!」
「キイチロー……」
ミノルさんの師匠で、確か無喰流という、他の流派の技や技術を、取り込んで進化し続ける流派を創った人……
「……その人にも…悪神討伐を手伝ってほしいんだ……」
「なるほど…」
確かにあのミノルさんの師匠だ、加わってくれたらかなりの戦力になるだろう。
「…けど…探すって言ってもこのテオロンは広いぜ?……こんな広い世界で一人の男を見つけるなんて…砂場でアリのコンタクトレンズを探しているようなもんだ…!」
「……いや…実は……シントウキョーで…キイチローを見たって人がいるらしくてね…!」
「…マジで!?」
シントウキョーにいるのか…だが一体何をしているんだ?……俺が疑問に思っていると、十郎がミユキさんへ言った。
「………早く行きましょう」
「そうだね」
するとミユキさんが、指を鳴らした。その瞬間、俺達の周りを光が包み込んだ。移動魔法か!!
「…新しい移動魔法を創っておいた!…この魔法は……どんな場所にも移動できるよ!」
「……『創っておいた!』って…そんな簡単に創れるものなのか…」
そして光が消えると、俺達はシントウキョーから少し離れた場所に立っていた。
「…またここに…来る事になるとはな……」
「それじゃあ…行こうか!」
俺達がシントウキョーの中へ入ると、人々の目線がミユキさんへと向けられた。
「…ミユキさんだ………なんだか今日は…オーラが凄いな…」
「……機嫌が悪いのか…?」
「話しかけないようにしよ…」
歩いていると人々は、道を開けていた。こんなシーン、任侠映画で観たな。
「……めっちゃ怖がられてるな…」
「…そうだね……おかしいな…………あっ……ONのままだった……OFFにしとかないと…」
そう言うとミユキさんの身体から、滲み出ていたヤバいオーラが綺麗さっぱり消え、周囲の重々しい雰囲気が一気に軽くなった。
「いつもの…ミユキさんだ!」
「……さっきまで殺気がだだ漏れだったから…怒ってるのかと思って避けちゃったよ!!」
すると突然、人々がフレンドリーに接してきた。
「驚かせないでくださいよ!」
「ごめんごめん!」
「……ところで…何の用で来たんですか?……ジークさんとその仲間の方々は…ライド大陸に行っていますが…ー
「…人探しだよ!……ここにキイチローって人が来てるらしいのだけど…知らない?」
ミユキさんが人々に尋ねると、奥の方の人が人をかき分けて、俺達の方へ来た。
「はい!はい!……知ってます!!…さっきウチのレストランに来てましたよ!!…客待ち名簿に名前も書いてありましたし!!」
「マジすか!?」
「マジっす!!」
「今は!?」
レストランの店員は、少し残念そうに言った。
「……2分前くらいに…店から出て…あっちへ行きました……すみません…」
「いや……貴重な情報さ!…ありがとう…!」
そして俺達は、キイチローという人が向かった方向へと歩いていった。
「ごめんね!…通るよ!!」




