ハードモード開放
「私も借りがありますね…アダン……あの戦争の時…弱者だった私に情けをかけて…見逃した…あの大きな借りが…」
「前戦ったら時に勝ったやん」
「…私は足手まといでした……それ故…あれは王と他の聖騎士が倒したようなものです…」
そんな中、アリアはエミリアをジッと見つめていた。するとエミリアが嘲笑いながら、アリアへ言った。
「私の借りが増えた事を忘れるな…エミリア…」
「……借りが増えた?…あれ?……アリア君…そもそも僕に借りなんてあったっけ?」
「貴様…ッ!」
聖騎士と魔王の四騎士が、今にも暴れ出しそうな雰囲気になった瞬間、その場の全員がミユキさんの方へ向いた。
「もう…仲良くしてよ!…みんな!……仲間になったんだからさぁ……それと…借りの話は僕の話が終わってからしてね…!」
そして、その場の全員が静まり返ると、ミユキさんは咳をして言った。
「……それじゃあ…話をしてもいいかな?」
「…ああ……」
「なるべく早く終わらせろよ…」
さっきまでの険悪な雰囲気が、嘘のように無くなった。俺が周りを見ると、聖騎士と魔王の四騎士全員が汗をかいていた。
「…ミユキさんから滲み出るプレッシャーを感じて……怖じけたようですね…」
「そりゃあそうだろ………あそこまで重圧なプレッシャーが飛んできたら…いくら聖騎士や四騎士と言えどビビるわ…」
あのミユキさんのプレッシャー、それはその場の全員を静まり返らせる程、重圧なものだった。あのレベルのものを出せるのは、世界に何人もいないな……
「例えるなら……怖い先生が来た時に…不良も…プライドが高い奴も…中二病も…みんな意気投合したかのように静まり返るあの時みたいな…」
「僕ってそんなに怖い?」
「え!?」
ミユキさんが、いつのまにか俺の目の前まで来ていた。
「さっきから聞いてたけどサ…!」
「…え?……作戦内容話してたんじゃ…」
「ミユキさんはずっと梅岡さんの目の前にいましたよ?」
何だと?…気配を感じさせずに…ずっと目の前で俺の話を聞いていたというのか……
「…梅岡殿…修行が足らぬでござるな…!」
「……気配消すの上手すぎだろ…」
「…後でやり方教えてあげるよ……それじゃあ…今度こそ話をするよ…!」
そしてミユキさんは、作戦について話し始めた。
「まず…梅岡君と十郎君のおかげで…悪神のアジトはこのライド大陸の……この範囲の何処かにある事が分かった…!」
「…ここは……」
スクリーンには、ライド大陸南方面が写し出された。
「ふむ……」
「だからみんなで…この辺りでアジトを探そうと思ってる……探す時は魔王の四騎士一人…聖騎士二人の三人一組でよろしくね!…手元にある紙に自分が誰と組むか書いてるから!」
「……あれ?」
話し終えると、ミユキさんは「なるべく早く終わらせろよ…」と言っていた、エルアトラの方を見て言った。
「…作戦を話すのが遅くなったけど……一応なるはやで終わらせたよ…!」
「……それはどうも…」
「それじゃあ20分後に…アロン郊外で集合ね!……梅岡君と十郎君は残るように!」
「は……」
そして、作戦の話は瞬の速度で終わり、聖騎士達と魔王の四騎士達が、お互いを見ながら出て行った。王達も、ミユキに促されて出て行った。
「さて……何で残されたか分かりますか?」
「……あ!…気配の消し方教えてくれんの!?」
「まぁ…それもそうだけど……その前に言いたい事がある!」
俺と十郎の名前は、紙に書かれていなかった。それを不思議に思っていると、ミユキさんに残れと言われた。
「なんすか…?」
「いやね…十郎君はいいんだけど……梅岡君…君に言っておきたい事があるんだ…!」
「え?…なんすか?」
ミユキさんは、少しの沈黙の後に俺へ言った。
「……ここからは…悪神との戦い……魔族やモンスターとは格が違う……だから恐らく…目の前で人が死んだりするかもしれない…」
「え……」
人が死ぬという生々しい表現を聞いて、俺は固唾を飲んだ。
「…だから……目の前で人が死んでも…なるべく気を確かに保つように…ね…」
「……あ…あぁ…」
ミユキさんはビー玉みたいな目、そして無機質な声でそう言った。
「………モンスターや魔族と戦った時は…死人が出なかったし…大丈夫だと思うけどなぁ…」
「あれは運が良かったのと…相手が大した事なかったからさ…」
「魔王軍が…大した事ない…?」
俺が尋ねると、ミユキさんは笑顔で頷いた。
「うん!……この際…ハッキリ言うけど…魔王軍程度にやられるなら……この先…瞬で死んじゃうよ…?」
「悪神との戦いは……そこまで厳しいものなのか…!?」
「そりゃあ…神だからね……相手は…!」
こりゃあ、帯を締め直さないとな。そういえば、確かに相手は神だ。簡単に倒せる筈がない。
「……すみません…」
話が終わると、十郎が紙を持ちながらミユキさんへ尋ねた。
「何故…僕達の名前が入っていないのですか?」
「ああ!…それはね……」




