魔族と人間の同盟
「…人間と魔族は分かり合えない?……分かり合えないと決め付け…分かり合おうとしてないだけだ!……魔族の儂とカスミは…打ち解ける事ができたぞ!?」
「…………………」
「それに…ここで潰し合っていたら…儂等魔族と…この人間達に亀裂を作った黒幕の思うツボだ…!」
アザミさんは、魔族と俺達人間の全員へ言った。シャルルは、何やら呟いている。
「……ッ……ッ…ッ…ッッ…」
「…魔王様…?」
側近らしき人物がシャルルを見ると、シャルルはミユキさんに尋ねた。
「お前等が殺し…武器にした魔族…そして捕らえている魔族は……全員…自由にしてくれるんだな?」
「うん」
するとシャルルは、その場で立ち上がり、机を叩いて叫んだ。
「俺達は…お前等の申し出を受け入れるッ!!」
「…え?……じゃあ…」
「お前等人間に…ッ……協力するって事だよ!!」
ミユキさんは答えを聞いて、優しくシャルルへ言った。
「……良い答えをありがとう…」
「…だがもし……またあの惨劇になるようであれば…速攻……友好条約は破棄させてもらうからな…!」
「分かってるよ…!」
そしてシャルルは、近くの側近に伝えた。
「…………明日…民にこの事を知らせる準備をしておけ…」
「…はい」
その後に続けて、シャルルは少し落ち着いたような様子で尋ねた。
「…………それで?…悪神探しにおいて……俺達は何をすればいい……一応…今日から仲間だからな……出来る限りの事はやるぜ…」
「……このライド大陸へ…僕達人間の立ち入りを許可して…このライド大陸のどこかにいる悪神探しを手伝ってほしい…!」
「分かった…人間がこのライド大陸に踏み入れても…攻撃しないよう魔族の兵士に伝え…共に悪神を探すように命じよう…」
「ありがとうね!」
そして話が終わると、俺達は明日の発表の為に魔王城に泊まる事になった。魔王城のベッドは、高級ホテルのようにフカフカで、寝心地が良かった。
……
そこからは早かった、魔族の民に人間と手を組む事を伝えても、反感を買う事が無かった。
「……なぁ…」
「…なんだ?」
それを不思議に思った俺は一人で街に行き、アロンの魔族達へ何故人間を簡単に信用したのか、人間と友好条約を結ぶ事に対して、反発しなかったのかを尋ねた。
「何故反発しないかって?……戦争が無くなって…人間と仲良くできるならいいかなって……多分みんなそう言うよ」
その魔族の言う通り、魔族の殆どはそう答えた。俺は人間を嫌っていると思っていた魔族がそんな事を言うとは思わなかった。そして話を聞いていると、興味深い話を聞いた。
「何故…人間を嫌っていないんだ?」
「……このアロンで有名なカフェの店長が…人間についての話をしていてね…それを聞いていたら……人間ってのは…そこまで悪い奴じゃないのかなって…思ったんだ…」
人間の事をよく知っている、カフェの店長。あの人の事だな。話を聞いて思ったが、多分、アザミさんが魔族の民達に人間の話をしていたんだ。そしてその話が広まり、魔族達の中から[人間=悪]という考えが無くなった。
「…ん?」
そんな時、十郎からメールが届いた。メールの内容を見ると、どうやらミユキさんが悪神探しの説明をするから集まれとの事だ。
『……行くか…』
……
「……梅岡さん…何ですかその格好……」
「買ってきた」
城の廊下に立っている十郎に言われた、俺はアロンでド派手な服を買って着ていたのだ。
「…悪神探しについての集まりがあるというのに…そんな格好で大丈夫ですか…?」
「……大丈夫だ…問題ない」
そして扉を開けると、そこには厳格な雰囲気の聖騎士達と魔王の四騎士達が座って、変な格好をしている俺をジッと見ていた。そんな中、ミユキさんだけが笑っていた。
「問題ありのようですね」
「フッ……くく……ッ…」
俺は速攻で着替えて席へ座った、何で聖騎士がいるんだよ。
「……こんなメンツが揃ってるなんて…予想してねぇよ……聖騎士の前でふざけてしまったじゃねぇか…」
「魔王の四騎士の前ではふざけてもいい…みたいな言い方ですね」
そんな時、後ろに座っているエルアトラが、重々しい声で呟いた。
「…我等も舐められたものだな……」
「い…いえ……」
『エルアトラ……この人の声…高校の体育教師みたいに重々しくて…超怖いんだよなぁ……』
するとミユキさんが、俺達の方を見て言った。
「梅岡君…十郎君!……何故レイド大陸にいる聖騎士達が…このライド大陸にいるか分からないだろうと思う!」
「はぁ…確かにそうすね」
「では説明しよう!……聖騎士達には…魔族と共に悪神探しをしてもらう為…僕の移動魔法で来てもらったのだ!」
『移動魔法…テレポート的な奴か…?』
そしてその後、今度はその場の全員へと話し始めた。
「…それでは……悪神探し大作戦について話します…」
「……毎回思うけど…作戦名がダサいよな」
「梅岡君、後で僕の部屋に来てね」




