少女と青年が未来へ繋いだもの
「……ここで…いいだろ…」
「…そうだな……」
レイド大陸が見えるライド大陸の端に、アザミとヒルガオ、ケビンは来ていた。
「………この子のおかげだ…」
「…何がだ?」
「この子とヒルガオのおかげで…人間にも……家族がいるという当たり前の事に気付けた…」
「……ケビン…」
ケビンは眠っているように、目を瞑っているカスミを見ながら言った。するとアザミは、カスミを見ながら言った。
「…カスミ……お前…ケビンが帰った後に…言ってたよな?」
“魔族って…みんなあんな人なの?”
“……アイツが変わってるだけだ…”
“…そうなんだ……だけど…魔族である…あなたやケビンと話してみて感じたよ…”
“何をだ?”
“…今の魔族と人間は…分かり合えないと決め付けてるだけで……いつか分かり合える時が来る!…ってね…”
「お前の予言は当たったぜ……少なくとも二人…人間と打ち解けた魔族がここに…いるからな……」
アザミとケビン、ヒルガオは顔を見合わせて微笑んだ。そしてアザミが棺桶の蓋を閉めると、ケビンが言った。
「………それじゃあ…そろそろ……」
「……ああ」
「…そうだね…」
三人は魔法で、棺桶を燃やした。その後に燃える棺桶を、ジッと見つめていた。
「姉ちゃん…さようなら……さようなら…ッ……」
「…カスミ……じゃあな……」
「……ゆっくり…眠ってくれ……」
そして、燃え尽きた後に地面にある灰を集めた。
“私が死んだら?…うーん……適当に撒いていいよ!”
「…………ここに撒こうか…」
「…そうだな……」
カスミの灰を地面に撒いた後、三人は静かに黙祷した。太陽の日差しが赤く燃え、三人の立つ場所を照らしていた。黙祷をし終わって、ヒルガオが呟いた。
「……姉ちゃん…俺……これからどうすれば…」
「…ヒルガオ」
すると涙目のヒルガオに、アザミが言った。
「実は…お前と……カスミに言おうとしていた事があるんだ……」
「なに…?」
「……人間の住む村を発見した…このライド大陸にな…」
「…え…?」
……
「本当だ……」
カスミの灰を撒いた場所から、少し離れた場所に人間が暮らしている村があった。
「こんな場所に……村が…」
「魔族が滅多に近付かない…ライド大陸の端……そして村を隠すように生えている灰色の森…だからか今まで魔族に気付かれなかったようだ…」
「………ッ…」
「村の人々には…話は通してある……」
そして、ヒルガオの背中をポンと押すと、アザミは言った。
「ここなら魔族にバレる心配もない…だから……安心して暮らすんだ……」
「…アザミ……」
「………念の為言っておくが…変な真似して死ぬんじゃねぇぞ……お前には…カスミの分まで生きてほしいからな……」
そう言うと、ヒルガオはその村に走っていった。ケビンとアザミは走っていくヒルガオを、ただただ見ていた。
……
「…人間と魔族は分かり合えない?……分かり合えないと決め付け…分かり合おうとしてないだけだ!……魔族の儂とカスミは…打ち解ける事ができたぞ!?」
「…………………」
「それに…ここで潰し合っていたら…儂等魔族と…この人間達に亀裂を作った黒幕の思うツボだ…!」
アザミさんは、魔族と俺達人間の全員へ言った。シャルルは、何やら呟いている。
「……ッ……ッ…ッ…ッッ…」
「…魔王様…?」
側近らしき人物がシャルルを見ると、シャルルはミユキさんに尋ねた。
「お前等が殺し…武器にした魔族…そして捕らえている魔族は……全員…自由にしてくれるんだな?」
「うん」
するとシャルルは、その場で立ち上がり、机を叩いて叫んだ。
「俺達は…お前等の申し出を受け入れるッ!!」
「…え?……じゃあ…」
「お前等人間に…ッ……協力するって事だよ!!」
ミユキさんは答えを聞いて、優しくシャルルへ言った。
「……良い答えをありがとう…」
「…だがもし……またあの惨劇になるようであれば…速攻……友好条約は破棄させてもらうからな…!」
「分かってるよ…!」
そしてシャルルは、近くの側近に伝えた。
「…………明日…民にこの事を知らせる準備をしておけ…」
「…はい」
その後に続けて、シャルルは少し落ち着いたような様子で尋ねた。
「…………それで?…悪神探しにおいて……俺達は何をすればいい……一応…今日から仲間だからな……出来る限りの事はやるぜ…」
「……このライド大陸へ…僕達人間の立ち入りを許可して…このライド大陸のどこかにいる悪神探しを手伝ってほしい…!」
「分かった…人間がこのライド大陸に踏み入れても…攻撃しないよう魔族の兵士に伝え…共に悪神を探すように命じよう…」
「ありがとうね!」
そして話が終わると、俺達は明日の発表の為に魔王城に泊まる事になった。魔王城のベッドは、高級ホテルのようにフカフカで、寝心地が良かった。




