ライド大陸の少女
「…入れない……」
「クソ!!…もう二度と……生まれ育った世界へは…戻れないのか…」
世界から追い出された魔族達は、テオロンを彷徨った。
「……外にも…人間がいる…」
「…俺達は……もう普通の生活は…出来ないのか…」
魔族達は、黒い土と岩に覆われし呪いの大地と呼ばれ、人間達に忌み嫌われていたライド大陸へと移り住んだ。同じように人間に忌み嫌われた自分達と、通じ合うものがあったのかもしれない。
「………ここなら…人間は入ってこない…」
「……食糧があるからな…生活には困らない…」
ライド大陸に移り住み、魔族達はかつての生活を取り戻しつつあった。しかし一人だけ、レイド大陸の方角を見つめる青年がいた。
「…ここで……人間にバレないよう…コソコソ生きていく……そんな事…できるか…」
『だが……今の俺の力では…人間を倒す事はできない……』
魔族の青年アザミは密かに、人間に対する憎悪の炎を燃やし、何処かへと消えていった。そしてそれから時が経ち、少なかった魔族の数も徐々に増え、かつての活気が取り戻されつつあった。
「………人間だ!!」
「何だって!?」
増えすぎた魔族は、ライド大陸調査に向かって人間に見つかった。
「…魔族!?……しかし…魔族はクリスタルの世界にしか存在しない種族…」
「…それに…あの惨劇で…死に絶えた筈…」
【クリスタルの世界】からテオロンに移り住んでいた人間、そして元から存在していた人間達は、魔族の発見に混乱した。
「……ひとまず魔族が何故…このテオロンにいるかは置いといて……問題は…魔族が我等人間を怨んでいる事だ…」
二人の青年が人の王を唆し、魔族を虐殺したという真相を知るテオロンの王達は、かつてのように魔族と共存するという結論に至った。しかし……
「逃げるぞ!」
「…くッ……ああ!!」
魔族は全員、人間を怨んでおり、話は通じなかった。
「今の我等なら…人間に勝てるぞ!!」
「「おお!!」」
これが、人間と魔族の諍いの誕生だった。
「……駄目だ…やはり話が通じない…」
「この勢いでは…近いうちに魔族は攻めてくるぞ……そうなれば…民の命が危うい…」
「…………仕方がない…魔族を殲滅する…ッ!」
最初は話合いに持っていこうとした人間も、いつしか魔族と同じように完全な敵意を持ったのだった。
「…何だこの魔族は!?」
「つ…強い!!」
一人の魔族が、ライド大陸へ攻めてくる人間の軍隊を、容易く蹴散らしていた。
「……俺を倒したければ…今攻めてきた人数の倍以上の数で来い…」
「…ッたく……凄いな…アザミは…」
「………ケビン…」
ライド大陸とレイド大陸を繋ぐ大橋へ、立ち塞がるアザミの元へ青年が歩いてきた。
「あの数の軍を…簡単に壊滅させるなんてな……」
「………フン…」
そんなある日、魔族達がレイド大陸へ侵攻しようと計画を立てていた夜。アザミは一人、外へ出ていた。
「………ゴフッ!…ガハッ……グブッ……ッ…」
アザミは外で、大量の血反吐を吐いた。アザミの身体には、無数の傷跡があった。中には、心臓や肺に到達している刺し傷も。
『……今日も…結構食らっちまったな………さすがにこのままだと…数日後には…死ぬな……』
「ハァ…ハァ……クソ…ッ!」
『…この命が無くなるまでに…人間を滅ぼさなければ……ッ…』
すると木の影から、少女が飛び出してきた。アザミは目を丸くして少女を見つめた。
「人間…!?」
「……酷い怪我…」
少女はアザミの元へ駆け寄ってきた、アザミは混乱しながら少女へ叫んだ。
「な…ッ……何だテメェは!?」
「動かないで!…死んじゃうよ!」
「う…るせぇ!…というか…な……なん…で……二…ンげん…ガ……ッ…」
アザミの意識はその瞬間、プツリと無くなった。そして目の前には暗闇が広がっていた、目をこするとアザミは、誰かの家の中へいた。
「…何だ……ここは…」
ベッドの上で寝ていたアザミが、身体を起こすと、身体には手当てされた形跡があった。
「………ッ!?…何だこれは!?…」
『身体が…軽い……手当てされてる!?』
「…確か……俺は…人間のガキを見つけて……」
すると扉が開く音と共に、声が聞こえた。
「ガキって……あなた…私とあまり歳が変わらないでしょ…」
「……お前は…!」
アザミはベッドから飛び上がり、構えると少女へと尋ねた。
「お前…人間だな………何故俺に手当てした……というか…何故ライド大陸に……いつ入った!?」
「私は元からこのライド大陸に住んでたのよ!……というか…質問には答えるから…一つ一つ聞いてくれない!?」
「……なんだと…このガッ……キ…ッ……!」
胸から鋭い痛みを感じ、アザミは思わず膝をついた。それを見た少女は、苦しむアザミをベッドに戻した。
「…まだ完全に治ってるわけじゃないのに……激しい動きするからよ……」
「う…ぐッ……」
「…………痛みが引くまで安静にして……その混乱してる頭を冷やしておきなさい……」
そう言って少女は、部屋から出ていった。アザミは痛みが和らぐ中、天井を見つめていた。




