エルアトラの話
「…話した通り……僕達は魔族と手を組む!……昔のようにね!!」
「……大丈夫…なのか…?」
「………魔族って…血に飢えた獣だろ…?……絶対人間を襲うぞ……」
王達は国民の前で、魔族と友好条約を結ぶという事を伝えた。それはテレビ、ラジオ放送もされており、全国へと生放送で伝えられた。
「……魔族と手を組んで…大丈夫なのかよ…」
「…それでは……聖騎士最年長のアレキリオンのコメントです…」
エミリアがアレキリオンにマイクを渡すと、アレキリオンは元気よく言った。
「やぁみんな!…聖騎士のアレキリオンだよ!」
「リッ…リオたん!?」
「……やっぱり魔族って怖いイメージがあるよね………けど大丈夫!…君達が思っている程……魔族は怖くない!!…話も分かるしね!」
そして最後、アレキリオンは締めくくるように言った。
「だから過去の事は忘れて……みんなで魔族を迎えよう!!」
「「おおおおお!!」」
それを聞いた国民は、一斉に歓声を上げた。
「リオたんが言うなら間違いない!!」
「魔族を迎えよう!!」
「リオたん万歳!」
国民的アイドルのアレキリオンの言葉に、国民が歓声を上げる中、ミユキと梅岡、十郎は影でそれを見ていた。
「……国民的アイドルってスゲーな…」
「…アレキリオン君は……その容姿と…元気の良さから…男性からは[みんなの妹]…女性からは[みんなの弟]として…愛されているからね…」
それを見ていた梅岡は、改めてアイドルの影響力を思い知ったのだった。
「よし!…国民も納得してくれた事だし……明日…魔族のとこへ行こうか!」
「…そうだな」
「…そうですね」
そうして王達と梅岡、十郎は次の日に魔族と友好条約を結ぶ為、アロンへと向かっていった。
……
「…まぁ……そういう事で…虐殺の黒幕は……悪神だということだよ…」
ミユキさんは、シャルルへと言った。するとシャルルはミユキさんへ言った。
「……人間と魔族が…敵対関係になった元凶が悪神だとしても……お前達は戦争の時に魔族を殺し……武器にした…」
「あぁ…その事だけど…」
するとミユキさんは、魔族の魔素を机の上に置いて言った。
「…君達は『一度武器にされた魔族は元に戻らない』と思っているのかもしれないけど…それは違う…」
「なに…?」
「武器から魔素を外せば……武器になった魔族は…元に戻るからね……ちなみに魔素を外した武器は少し劣化するよ」
机の上にある魔素が、突然光を放った。そしてその光が消えると、不気味なフードを被った骸骨が机の上に立っていた。
「……エルアトラ…!?」
「………友好条約を結んでくれるなら…人間が殺した事になってる魔族全員を…解放する」
エルアトラは机から降りると、シャルルへ言った。
「…お前が……2代目魔王となっていたとはな…」
「エルアトラ……」
するとエルアトラは、シャルルとその周りの魔族達へと言った。
「……ミユキの言っている事は…全て事実だ……お前達が死んだ事にしている魔族は…全員収監されている…」
「…死んで……いなかったのか…?」
「ああ……」
……
人魔戦争が終わり、倒され魔素となった魔族と、捕まった魔族は牢に入れられた。我等は殺されて、武器にされると思っていた。
「……何故…我等を殺さぬ……」
「……………」
「…牢に入れて……一ヶ月以上は経っている筈だぞ……」
牢の前に来たレクスへと尋ねた、するとレクスはそんな我へと言った。
「何故…殺さなければならぬのだ?」
「…は……」
「……無駄な殺しは…良くないだろ……常識的に考えて…」
人間は魔族を殺す気は無かった、しかも、牢に囚われている我にしっかりと一日三食くれた。
『………人間は…思っているよりも……悪い存在ではないのか…?』
するとそんなある日、レクスと女子のような少年が牢へと入ってきた。
「…何だ……その餓鬼は…」
「……この子が…君を武器にしたいと言ってな…」
「ほう…」
我を殺し、武器にする。やはり人間は、魔族を平然と殺し武器にする野蛮な種族だと、その瞬間は思っていた。
「……フン…やはり我を殺して…武器にするか…」
「いや……別に武器になるのに…死ぬ必要はないぞ…?」
「なに?」
「…武器を作る時は…魔素をそのまま…使う…だから死ぬわけではない…」
武器にされたら、死ぬと聞いていたが、どうやら死なないらしい。
「そうか……死なないのか…」
「ああ」
死なないという事が分かった我は、レクスへと言った。
「……なら…さっさとするがいい……」
「…………随分と素直だな」
我は不思議な気持ちだった、口もききたくないと思っていた人間と、普通に会話しているのだからな。
「今ので確信したからな…お前達人間は……魔族の殺しを愉しむ…野蛮な奴等ではない…ということが…」
「…エルアトラ」
「……それに…お前等が運んでくる食い物…その一つである…粉雪アイス…だったか……あのような美味なるものを毎日貰っているのだ…少しはそっちの頼みも聞いておかぬ…と思ってな…」
「…そこまで美味かったか…粉雪アイス……」




