ミユキの魔法創造
人間の王は、いつしか男の傀儡と化していた。王のあまりの変わりように、部下達は王へ問いただした。
「……王様!…魔族を根絶やしにしろとは…どういう事ですか!?」
「……………」
騎士長は王へと問いただした、王は奇妙な雰囲気を醸し出していた。
「…あの二人の男に唆されたのですか!?……クソ……」
「騎士長よ…お前は私に忠誠を誓っていたのではないのか?……それなのに私に反発するとは………残念だよ…!」
「……ッ!!」
人間の王はその姿も、心も、もはや人間では無くなっていた。
「…何だ!?」
「人間が攻めてきたぞ!!」
その数日後の夜、アロンよりも前の魔族の国は、昼と見間違える程の火の海になっていた。
「…………」
「に…人間……なの…か?」
兵士達も王と同様、操り人形のようになっていた。そして夜が明けると、大量の魔族の遺体が太陽に照らされていた。
「…人間……貴様らは許さぬ……許さぬぞ!!」
「……今度は俺達が人間を…根絶やしにする番だ…!」
「やめろ!……この数では…人間に勝てない…」
生き残った魔族はバラバラとなり、憎悪と怨みを胸に、密かに暮らしたとされる。
そして後に、生き残りの魔族の一人が、新たなる魔族の王である魔王を名乗り、新たなる魔族の国アロンを建国した。
……
「……二人の男は…大量の魔族が死に至ったのを確認して…姿を消した……」
「…悪神に唆され…アビスに操られた王様が……魔族大量虐殺を引き起こした……」
「これが…事件の真相だねッ!」
王達は本を読み終えると、スマコに本を収納した。
「……この世界は…虐殺が起きる前に魔族と人間が共存する為に…暮らしていた世界……」
そう言ってミユキは財宝を退けた、すると財宝の中から僅かに光るクリスタルが出てきた。
「このクリスタルに…世界創造の魔法を封じ込めて……この世界を保っていたんだ…」
「……魔導具…というものか…」
「うん!…今で言うところの魔導具だね!」
ミユキは、クリスタルを持ち上げて凝視しながら、王達へと続けて言った。
「…このクリスタルへ…魔法を封じ込めたのは人間……管理していたのも人間なんだ…」
「………………」
「人間は…大量虐殺後……クリスタルを使って…この世界から魔族を追い出して二度と入れないようにした……」
「ふむ……だから魔族は入り口も知っていたし…鍵を持っていたが……この世界に入れず…真相を知る事も…復讐する事も出来なかった…」
財宝を見ながら、ミユキは王達へ締めくくるように言った。
「…この世界の人間は用済みとなったのか……全員……殺されていたよ…スキルによってね…」
「悪神…どこまでもクズだな……アイツは…」
「…けど…この世界の外へ元々いた人間…この世界から出ていった人間が…僕達の国を作った……まぁ…歴史の授業はこれで終わりだね!」
すると突然、地面が揺れ出し、城から轟音が聞こえてきた。
「何だ!?」
「…クリスタルの力が弱まっているんだ……もうじきこの世界は崩壊する…!」
「……………………なに?」
ミユキはクリスタルをスマコで回収して、王達へ言った。
「この世界から出よう!」
「…そうだな……」
王達は急いで秘密の部屋から出て、城の外へと飛び出した。すると地面が陥没し、歪みへと変わっていた。
「……みんな!…僕の掌へ手を乗せて!」
「なに!?…そんな事をして何になるんだ!?」
「いいから!!」
ミユキがそう言うと、王達はミユキの掌の上へ手を置いていった。
「…あッ…!?」
王達が手を乗せた瞬間、空間が歪み始めた。そして少しすると、魔族と人間の世界へと繋がる扉の前で立っていた。
「……【空間の糸】…魔法で創られた世界や空間から脱出する魔法……僕が歪みに順応した時に創ったんだ!」
「…何て奴だ……」
「………………………」
「よし!…それじゃあ帰ろうか!」
その時ムサシが、ミユキの肩を掴んで呟いた。
「………………そういえば…【反殺】を使えなくなったらしいな…」
「…うん……僕の殺意がレベルアップ!…したから……僕自身では【反殺】を発動出来なくなった…」
「…………だがお前は…【反殺】が使えなくとも…理由の無い殺人はしないと言った…だから俺達もあまり気には留めなかった…」
そして、ムサシは掌に赤い炎を生み出すとミユキへ言った。
「……………………だが…やはり心配だ…!……お前に【反殺】を強制的に付与する…!……お前自身では付与出来ないらしいが…第三者である俺が付与すれば…効果はあるからな…!」
ムサシが魔法を付与しようとした瞬間、ミユキはそれを避けた。
「いやいやいや!!…大丈夫だって!……僕の事信用してないの!?」
「ミユキ、これは保険だ。お前が快楽に飲まれて、無差別殺人を起こしてしまった時の為のな。お前が絶対にそうならない保証は無い、避けず、逃げず、素直に付与されろ」
ミユキへ【反殺】を付与しようとするムサシと、ムサシの付与を避けているミユキを、他の王達は呆然と見ていた。
「…こんな時に暴れないでほしいな……」
「……まったくだ…」




