過去の真相
「………やはり生きていたか…」
「…ごめんごめん!……歪みに落ちたらどうなるのか試してみたくて……僕の事心配してくれた?」
「……心配してなどいない…お前はどうせ生きていると信じていたからな…」
「…心配してよ……あぁ…そうそう……歪みは大したことなかったよ!…すぐに順応出来た…」
そしてミユキは、王座に突き刺さった包丁を抜いて、手招きして。
「……それよりも面白いものを見つけたんだ!」
「…面白いもの?」
「うん…そのアビスに関係する…ね」
王達は言われるがまま、ミユキへとついていった。ミユキは城の書庫らしき部屋へ行くと、一冊の黒い本を引き抜いた。
「…ムサシさん!……そこにある赤い本を抜いて!」
「………………………ああ…」
ムサシが赤い本を本棚から抜くと、一番奥にある本棚の一つが消えて、通路になった。
「…これは……」
「隠し部屋さ…僕は歪みに順応した後……この奥にある隠し部屋からこの城へ入った…」
王達は、出現した通路を進んでいった。王達が通路を進むと、消えた本棚は再び出現し、赤い本と黒い本は元あった位置へと戻っていった。
「…この奥には何が…」
「………魔族と…人間が敵対する原因となった…魔族大量虐殺…その真相があるのさ…!」
通路を進んでいくと、大きな部屋へ出た。その部屋には大量の財宝があったが、王達の目に留まったのは、その中心にあるボロボロの本だった。
「…コレに…真相が書かれているよ…!」
「………魔族と人間の誕生から……虐殺事件の…真相までの…歴史が記されている…」
王達は、虐殺事件に関する情報が書かれているページを開き、読み始めた。
「………………なるほどな……」
「……魔族は…大量虐殺を人間が行なったと思ってるけど…違う……真の黒幕は…!」
「………レインとライン…あの二人の悪神だった…という事か……」
……
「……今日は何して遊ぶー?」
「鬼ごっこ!」
魔族と人間の間に壁は無く、差別も無く、お互いに協力し、理解し合い共存していた。
「………いつまでも…魔族と人間が仲良く暮らせたらいいなぁ…」
そんなある日、人間の王の元へ黒いフードを身に纏った二人の男が現れた。二人の男は自らを旅人と言った。
「…私達は仕えるに相応しい者を探し…旅をしていました…」
「……そして…この国へ訪れた時……私達が求めていた…仕えるのに相応しい者を見つけた…」
二人の男は、自らを仕えさせてほしいと王へ懇願した。王は最初、二人の男を怪しんでいた。『国の財宝を盗みに来た賊かもしれない』…『王という立場を乗っ取ろうとしているのかも…』……
しかし、二人の男は人間と魔族の持つ技術の進歩、発展に大きく貢献してくれた。次第に、怪しんでいた人間の王や魔族の王も、二人の男へ絶大な信頼を寄せていった。
「王様…ここの土地はとても肥えているので農業に向いてます」
「うむ…そうだな……」
「王様…この森林を伐採して……資源を確保しましょう……」
「うむ……そうしようか…」
「王様…魔族へ渡す資源を少なくしましょう…そうすればこの国はもっと豊かになる」
「…うむ……」
「王様……魔族との友好条約を取り消すべきです…奴等は……貴方の国の利益を搾取している…」
「………ああ…」
「……王様…魔族は人間に害を成す獣です……早急に駆除しましょう…」
「…………ああ……そうだな…」
人間の王は、いつしか男の傀儡と化していた。王のあまりの変わりように、部下達は王へ問いただした。
「……王様!…魔族を根絶やしにしろとは…どういう事ですか!?」
「……………」
騎士長は王へと問いただした、王は奇妙な雰囲気を醸し出していた。
「…あの二人の男に唆されたのですか!?……クソ……」
「騎士長よ…お前は私に忠誠を誓っていたのではないのか?……それなのに私に反発するとは………残念だよ…!」
「……ッ!!」
人間の王はその姿も、心も、もはや人間では無くなっていた。
「…何だ!?」
「人間が攻めてきたぞ!!」
その数日後の夜、アロンよりも前の魔族の国は、昼と見間違える程の火の海になっていた。
「…………」
「に…人間……なの…か?」
兵士達も王と同様、操り人形のようになっていた。そして夜が明けると、大量の魔族の遺体が太陽に照らされていた。
「…人間……貴様らは許さぬ……許さぬぞ!!」
「……今度は俺達が人間を…根絶やしにする番だ…!」
「やめろ!……この数では…人間に勝てない…」
生き残った魔族はバラバラとなり、憎悪と怨みを胸に、密かに暮らしたとされる。
そして後に、生き残りの魔族の一人が、新たなる魔族の王である魔王を名乗り、新たなる魔族の国アロンを建国した。
……
「……二人の男は…大量の魔族が死に至ったのを確認して…姿を消した……」
「…悪神に唆され…アビスに操られた王様が……魔族大量虐殺を引き起こした……」
「これが…事件の真相だねッ!」
王達は本を読み終えると、スマコに本を収納した。
「……この世界は…虐殺が起きる前に魔族と人間が共存する為に…暮らしていた世界……」
そう言ってミユキは財宝を退けた、すると財宝の中から僅かに光るクリスタルが出てきた。




