森の中に潜むカラス
「あの宇川だと?……まるで俺が有名人みたいな言い方だな!」
「師匠は有名だよ!…八咫烏の一人だし……とっても強くて…凶悪で…残虐な男として知られてるからね!」
「おいおい!…俺は凶悪でも残虐でもねぇぞ!……まぁ…強いのは本当だがな〜!」
戯けながらそう言うと、宇川は王達へ言った。
「……それでお前ら…この森を抜けたいんだよな?」
「ああ…だが……この森は危険なモンスターが多くてな……相手にしていたら日が暮れる…」
「…まぁな…この森は何故か…凶暴やモンスターがわんさか現れる……そのおかげで退屈しねぇけどよ!」
すると宇川は前のめりになって、王達へと言った。
「……モンスターとヤらずに森を抜けられる方法を知ってるぜ!」
「…なに?」
「教えて!」
宇川は、方法を聞こうとする王達へ言った。
「まぁまぁ落ち着け!……俺の頼みごとを聞いてくれたら教えてやるよ!」
「……何だ…」
すると宇川は立ち上がって、青竹を持つとムサシへと投げ渡した。
「お前…あの宮本武蔵だろ?」
「………………………そうだとしたら?」
「宮本武蔵ってのは……切り出した青竹を一振りでバラバラにするって漫画で描かれてたぜ!…ホントかどうか…見てみたい!」
ムサシはゆっくりと立ち上がり、青竹を軽く振った。すると、青竹は簡単にバラバラになった。
「……青竹をバラバラにするのは…本当だったようだな!」
「……………………脆いな…」
バラバラになった青竹を地面に落として、ムサシは宇川の方を向いた。
「これでいいか?」
「ああ!…見たいもんは見れたしな!……方法を教えるぜ!」
そう言って宇川は、手首を回し始めた。そして指の骨を鳴らした後にミユキへ尋ねた。
「……目的地ってどの方角だ?」
「…あっちだよ」
「………よし…!」
すると宇川は、ミユキの指差した方角に向かって立つと、前方へ向かって思い切りブン殴った。その瞬間、凄まじい風圧が巻き起こった。
「こ…これは!?」
……
「…何だ?」
「……凄い地鳴りですね…突風…雷…地震……あらゆる天災が襲いかかったような…」
「地震でもあったのかな…」
梅岡と十郎、ジークは遺跡に向かう途中に大きな地鳴りを聞き、思わず立ち止まった。
「おい!…アレ見ろよ!」
「うぉぉ…空が割れてるぜ…」
ギルドのトップランカー達が空を見ると、雲が割れ、直線に光が差していた。まるで、道のように。
……
「これは…」
「……………………空を割る拳…か……」
「俺がほんの少し…本気を出せば……こんなもんよ!」
宇川がブン殴った方角の木々は、直線状に無くなっていた。
「……これならモンスターの相手しなくていいだろ…!」
「…だね……」
モンスターは、生物的本能で危険を察知したのか、直線の道の横で震えながら止まっていた。
「……感謝する…」
「おう!」
そして、ムサシの方を見ると、宇川は肩に手をポンと置いて言った。
「…言い忘れたが…ネット掲示板では……『この記録によれば…』…とか…『この文書では…』とか言って…お前を卑怯者扱いしてる奴が多いが……気にするな!」
「ふむ、確かに俺の事を卑怯者だと言う者もいる。だが、それは恐らく俺に敗れた者が、戦いでは太刀打ち出来ないと知って、悔し紛れに俺が卑怯な人間という事を人々に伝えたりしたからだ、文章や言葉でな。まぁ、確かに卑怯な手は使ったかもしれない。しかし、そもそもの話、殺し合いに卑怯というのはあるのだろうか。侍と侍の決闘、即ち殺し合いは、スポーツでは無い、それ故にルールは無いようなもの。殺し合いの最中に、この手は卑怯だから使わないなんて事をして死ねば馬鹿みたいだろう。勝つ、生き残る為ならばどんな手でも使う、卑怯だとしても。それが真の侍、兵法家、剣士というものだ」
「お前…よく喋るな!……寡黙に見えたが実は饒舌なんだな!」
宇川はムサシの喋りを聞いて、笑いながら言った。ムサシはハッとして、咳払いをした。
「……………………行くぞ…」
「…ああ……」
「宇川とやら…感謝するぞ」
ムサシとスカーレット、レクスは、目的地へ向かって歩いて行った。
「……へへ…面白そうな事になってんな!」
「…師匠も悪神探し……する?」
「いや!…俺はいいわ!…めんどくさいし!!」
「………ふふ…変わらないね……師匠は…!」
ミユキは宇川に微笑んであと、王達を追いかけて走っていった。
「……道作ってくれてありがと〜!…じゃあね〜!」
「ああ!」
王達は、光の差す道を歩み、目的地へと向かっていった。
「……………ふわぁ〜あ…ねむ……」
宇川は欠伸をした後に、割れている空を見上げた。
『霧島…川畑……お前らとも久々に…会ってみてぇなぁ!……俺と互角に渡り合えるのは…お前らしかいねぇし…!』




