表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/457

再びアロンへ




「………僕の…この憎悪は……もう自分でも抑えられないのです…」

「………………」

「…すみません……梅岡さん…僕は貴方の声が届かない程……多くの憎悪を生み出してしまいますから…」


虚ろな目でそう言う十郎に、梅岡は元気付けるように言った。


「いや…お前のその憎悪は……人の業によるものだ……お前は悪くない…」

「いえ…それは違いますよ…」


十郎は梅岡に近付いて、光の無い目で見つめながら言った。


「…僕は人の業に取り憑かれていません……父さんや母さんの死に関わった人間を殺めたのは…全て僕の意思です…から…」

「………違う…お前はそんな奴じゃない……そんな筈は…」

「ホントだよ」


焦りながら呟く梅岡に、ミユキが言った。


「…十郎君は……人の業に取り憑かれていない…」


それを聞いて、梅岡は十郎の肩を掴むと強い口調で言った。


「……十郎…誓ってくれ……もう二度と殺しはしないと……」

「………………」

「…お前……悪神を殺したら……もう二度と()に戻れなくなっちまうぞ…!」


十郎は梅岡の声を聞いて、悟ったように言った。


「もうとっくに戻れませんよ……僕は…人を殺めたので」

「あぁ…その事だけど…」


梅岡と十郎の間にミユキが入ってきた。十郎と梅岡は目を丸くしている。


「……十郎君…君は人間を一人も殺していないよ…」

「……………何を…言ってい」

「君の仇は…全員……超重症で病院に何年もいる……けど…死んではいないからね…」

「……………何故…そんな…え……」


戸惑う十郎へ、ミユキは優しく微笑んで言った。


「君にはまだ……ほんの一欠片かもしれないけど…人の心が残ってる…」

「……人の…心…?」

「…その人の心がセーフティーとなって…無意識に急所を外していた…」


梅岡は話を聞いて、ミユキへと尋ねた。


「つまり…身体の奥底では……仇を本気で殺すつもりは無かった…って事か……」

「まぁ…そうだね……」


すると十郎の目に、少しだけ光が見え始めた。


「…死んで……いなかった…」

「……戻れなくなった人は…そんな目をしない………」


十郎に近付いて、ミユキは十郎へ言った。


「…君にはまだ……人間の心が残っているんだ……僕と違ってね…」

「………僕に…人間の心が……残っている…」


そしてミユキは、十郎と梅岡の肩を掴んで言った。


「はい!…それじゃあ辛気臭い話は終わり!」

「……………そうですね……!」

「……だな…」


十郎と梅岡は、元気を取り戻したのか顔には余裕があった。すると梅岡が、ミユキへと尋ねた。


「…ところで……アンタ達は別の用事があるって言ってたが……何してたんだ?」

「あぁ…そういえば言ってなかったね……僕達は……」



……



「……なんか…前よりも禍々しくなってんな…」

「…入ろ!」


俺と十郎、王達は魔族の国アロンに来ていた。魔族になりすましておらず、しかも「アロンへ行く」という旨の手紙を送って。


「………人間の王が来たぞ…」

「…ああ……」


アロンの門へ歩いていって門をくぐった瞬間、俺達には大量の銃口が向いていた。


「……………………随分と豪華な歓迎だな…」

「……魔王軍は一体…いつからマフィア組織になったのかな…?」


兵士達は、人間側が持つマスカット銃とは比にならない程、最新鋭の銃を持っていた。


「…悪神の仕業か……」

「……前魔王が…アサシンにのみ支給していた銃を改良…量産したものだ…」


すると兵士達をかき分けて、王のような風貌のシャルルが歩いてきた。


「……手紙は読んでくれたよね?」

「ああ」

「…それで……答えは?」

「即答でNOだな」


ミユキさんの問いに、シャルルは即答した。そしてミユキへ続けて言った。


「お前ら人間と…()()()()なんて結ぶ筈が無いだろう」


しかし、ミユキさんは負けじとシャルルへ言った。


「……そう言うと思っていたよ………見せたいものがある……お話…させてほしいな」

「…………魔王様…」

「……前魔王が行なっていた実験は…この人間達のおかげで知ることが出来た……皮肉にも…人間によって前魔王の悪事を知る事が出来たのだ…」


シャルルは少し考える素振りを見せた後、俺達へ言った。


「…答えは変わらんだろうが……話くらいは聞いてやる…」



……



「それで?…話とは…」


俺達は大きい机のある部屋で、シャルルと向かい合うように座っていた。


「まず…最初に謝るけど…君達をモンスターと同類だと思ってたんだ…ごめんね」

「フン…あんな獣と一緒にされては困るな…」


そしてシャルルは、机に肘をつくとミユキさんへ尋ねた。


「……それで…話とは?」

「…単刀直入に言おう……人間と魔族が…敵対した真相を……」

「……真相…?」

「うん」



……



十郎と梅岡は、元気を取り戻したのか顔には余裕があった。すると梅岡が、ミユキへと尋ねた。


「…ところで……アンタ達は別の用事があるって言ってたが……何してたんだ?」

「あぁ…そういえば言ってなかったね……僕達は……」


ミユキさんは、俺達が遺跡へ行っている間に何をしていたかを話し始めた。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ