闇の中へ
「…それで…スキルというのは……」
「あぁ…俺のスキルは『触れた生物の扱う魔法をコピーする』スキルだ…」
「えぇ…めっちゃ強いスキルじゃないスカ…」
するとジークは、苦笑いをしながら俺達へ言った。
「…と言っても…想像力を使う魔法しかコピー出来ない……つまりこの世界…テオロンの魔法しかコピー出来ないんだ…」
「……他の世界にある魔法はコピー出来ない…という事ですね…」
「うん…まぁそういう事だね」
なるほど、逆に言えばこの世界の魔法は、全てコピー出来るという事か。めちゃくちゃ良いスキルじゃねぇか。
「…あと……『魂力が無尽蔵になる』スキルとか…『魔法の威力が5倍になる』とか……」
「え?…ちょっと待って……スキル三個持ってんの?」
「うん…スキルはその三つだね」
俺は思わず絶句した、するとその時、背後から気配を感じた。
「…神の力を三つも…偶然手に入れるなんて……ホント凄いよねぇ…」
「うお!…ビックリした…」
振り返ると、俺達がこのシントウキョウに来た時にいた猫耳の少女が立っていた。
「貴方は…あの時の……」
「…アタシの名前はミスト……チェシャの化け猫とも言われてるよ…」
すると、いつのまにかジークの隣へ立っていた。
「それで…ジークはこの子達の……手助けをするんだよね?」
「あぁ…そういえば……そうだったね」
「忘れてたのかよ…」
ジークは、服ととんがり帽子を整えて立ち上がると俺達に言った。
「…それじゃあ行く?」
「はい」
十郎も立ち上がった。もう行くのか、もう少しこのシントウキョウを見て回りたかったが……
「シントウキョウを…もう少しくらい観光したいなぁ…」
「…この件が片付いたら…改めて観光案内するよ……オマケで全ての料理店で食事無料…プラス全てのテーマパークの入場無料のパスも貸してあげるよ!」
「二人とも準備は出来たか?…行くぞ」
俺は立ち上がって、ジークと十郎を見た後に扉を開けて外へ出た。
「…………彼は普段からあんな感じなの?」
「…まぁ……はい……昔から単純というか…」
……
「ここが…その遺跡か?」
「ですね」
俺達は、悪神がいたとされる遺跡の目の前まで来ていた。
「何で魔法を卓越していなければならないんだ?……複雑でも行けない事ないだろ…」
「いや…」
ジークは入り口の奥に広がる闇を見ながら、俺に言った。
「…この遺跡には強い力が渦巻いている……恐らく悪神のスキル…力だ…」
「……悪神の?」
「ああ……それによって複雑な結界が施されている…だから高度な魔法を扱えないと先へは進めない」
俺が遺跡の奥を覗くと、微かに物音が聞こえてくる。
「逆にいえば…高度な魔法を扱えれば進めるってわけか?」
「…ああ……魔法は極めれば…神の力と何ら変わらないスキルと化すからね…」
「だからミユキさんは…魔法を卓越していないと最下部へ行くのが困難だと言ったわけですか…」
するとジークは、掌に光を生み出すと俺達へ言った。
「俺は高名な魔法使いや…魔法を極めた賢者……様々な魔法の使い手に触れて…高度な魔法をコピーしてきた…」
「……へぇ…」
「この程度の結界ならば…容易く破壊する事が可能だ…」
そして、ジークについていく様に俺達は遺跡の中へと足を踏み入れていった。
「…暗いな……」
「梅岡さんは暗所恐怖症なのです…」
「それじゃあ…もっと光を強くしようか」
するとジークの掌の光が、更に強くなった。これなら大丈夫だな。
「ありがとう…」
「いやいや……おっと…ここから先は少し危ないね…」
ジークが途中で立ち止まった、すると奥から音が聞こえてきた。
「……【シャットドーム】…!」
するとジークの周りに半透明なドーム状の壁が出来た。
「この中へ入って!」
「あ…ああ……」
俺達は言われるがまま、ドームの中へ入った。一体何が危ないんだ?
「…どうしたんだ?」
「ここから先には…大量のトラップが仕掛けられてる……数が多いから解除していると日が暮れてしまう…」
「…トラップだと?」
「とりあえず…進めば分かるよ」
ジークが歩くとドームも動いた。俺達はドームから出てしまわないようにして、ついていった。その瞬間、地面や壁などあらゆる場所から針が飛び出してきた。
「うおッ!?」
「このドームの中にいれば大丈夫だよ」
針はドームに触れると、音を立てて折れていった。
「……確かに…魔法を一つしか持っていない俺達二人だけだと…進むのは困難……ていうか不可能だな…」
「…そうですね……」
飛び出してくる針を折りながら、俺達は奥へと進んでいった。奥に進むにつれて、辺りの空気も重くなってきている。
「………そろそろ大丈夫かな…」
ジークがそう呟くと、ドームが消えていった。針も、もう飛び出してこない。
「針エリア突破…だな……あとどの位だ?」
「……まだまだ先だよ…」




