魔法特化型
「………コイツは何日も飲まず食わずで……我を引き抜こうとしていたのだ……だからか手汗が凄まじくてな……」
「…そんな手汗ヤバかった?」
「……コイツの事だから抜けるまで我を握り続けるだろう…それは嫌だったから仕方なく選んでやったのだ」
めちゃくちゃ上から目線だな、この聖剣。まぁ、神に匹敵する力を持つくらいだからな、上から目線なのはしょうがないのか?
「大した理由ではなかったんだな…」
「ああ」
その時に、十郎がジークへある事を尋ねた。
「…ところで…貴方はギルドをやめたと言った……という事は…以前はギルドにいたということ…ですよね?」
「まぁ…そうだね」
ジークの答えを聞くと、十郎はジークをジッと見ながら続けて尋ねた。
「……ギルドを創設した小鳥遊さん達と共に…この異世界へ来たのですか?」
「いや?」
「え?…違うの?」
「うん」
十郎の問いにNOと答えたジークは、何故ギルドにいたかを話し始めた。
「俺は…ギルド創立メンバーがこのテオロンに来る…3年程前にこの世界へやって来たんだ……ギルドでは魔法の指南役として入ってただけ」
「……どうやってこのテオロンへ来たんだ?」
「…ホワイト曰く……様々な世界を管理しているシステムの異常で…俺はこのテオロンに飛ばされたんだ…」
ホワイト、色々と抜けすぎじゃないか?
「……そして…俺はシステムの情報を一部……体内に取り込んでしまったらしくて……このテオロンと元いた世界を行き来できるようになったんだ…」
「えぇ…」
それは何というか、運が良いのか悪いのか分からないな。
「………しかも…通常は神からしか貰えない筈の…スキルまで扱えるようになった…」
「スキル…小鳥遊さん達も持っていた…神の力……ですか……どんなスキルなのですか?」
「魔法関連のスキルだけど…見せようか?」
「見たい!」
するとジークは、十郎の手を握った。一体何をする気だ?
「…よし」
「……なに?…握手?」
「へぇ…結構良い魔法持ってるね…」
そして手を離し、スマコで何かを確認すると席を立ち上がった。
「…【ファントム】……!」
「え!?」
その瞬間、ジークの近くへ十郎と同じ分身が出てきた。それを見て、カフェの中は混乱していた。
「な…なんだぁ!?」
「…あ!」
「きゃあああッ!」
驚いた客がコーヒーをこぼし、そのコーヒーが隣の客へかかり、とカフェの中は地獄と化した。
……
「…馬鹿なのか?…お前は?」
「……何も言えない…」
「何で俺達まで…カフェの掃除をしないといけなかったんだよ……」
カフェの掃除をした後に、俺達は市役所に戻ってきていた。すると十郎が、ジークへ尋ねた。
「…それで…スキルというのは……」
「あぁ…俺のスキルは『触れた生物の扱う魔法をコピーする』スキルだ…」
「えぇ…めっちゃ強いスキルじゃないスカ…」
するとジークは、苦笑いをしながら俺達へ言った。
「…と言っても…想像力を使う魔法しかコピー出来ない……つまりこの世界…テオロンの魔法しかコピー出来ないんだ…」
「……他の世界にある魔法はコピー出来ない…という事ですね…」
「うん…まぁそういう事だね」
なるほど、逆に言えばこの世界の魔法は、全てコピー出来るという事か。めちゃくちゃ良いスキルじゃねぇか。
「…あと……『魂力が無尽蔵になる』スキルとか…『魔法の威力が5倍になる』とか……」
「え?…ちょっと待って……スキル三個持ってんの?」
「うん…スキルはその三つだね」
俺は思わず絶句した、するとその時、背後から気配を感じた。
「…神の力を三つも…偶然手に入れるなんて……ホント凄いよねぇ…」
「うお!…ビックリした…」
振り返ると、俺達がこのシントウキョウに来た時にいた猫耳の少女が立っていた。
「貴方は…あの時の……」
「…アタシの名前はミスト……チェシャの化け猫とも言われてるよ…」
すると、いつのまにかジークの隣へ立っていた。
「それで…ジークはこの子達の……手助けをするんだよね?」
「あぁ…そういえば……そうだったね」
「忘れてたのかよ…」
ジークは、服ととんがり帽子を整えて立ち上がると俺達に言った。
「…それじゃあ行く?」
「はい」
十郎も立ち上がった。もう行くのか、もう少しこのシントウキョウを見て回りたかったが……
「シントウキョウを…もう少しくらい観光したいなぁ…」
「…この件が片付いたら…改めて観光案内するよ……オマケで全ての料理店で食事無料…プラス全てのテーマパークの入場無料のパスも貸してあげるよ!」
「二人とも準備は出来たか?…行くぞ」
俺は立ち上がって、ジークと十郎を見た後に扉を開けて外へ出た。
「…………彼は普段からあんな感じなの?」
「…まぁ……はい……昔から単純というか…」




