トウキョーの聖剣使い
ジークは、有名なラーメンのチェーン店を指差して言った。そして、俺達はラーメン屋の中へと入っていった。
「あ!…ジーク様!」
「やぁ!…店はどうだい?」
「いつも通り…繁盛してるよ!……そこの二人は?」
「客人だよ!」
店主と軽い会話をした後、俺達はカウンターに座ってラーメンを注文した。
「……野菜塩ラーメンで…ネギ少なめ…メンマ大盛り……あ!…チャーシューおまけして!」
「いつものやつね…二人は?」
「あ……じゃあ…醤油ラーメンで…!」
「…僕は豚骨ラーメンで」
注文してから、1分後くらいにラーメンが目の前に置かれた。なんて早さだ、魔法でも使ったのか?
「…まさか……異世界でこのラーメンが食えるとはな……いただきます…!」
「いただきます!」
「……いただきます」
俺は割り箸を割って、ラーメンをすすった。汁を吸った麺が舌に接触した瞬間、俺は思わず声を出した。
「うんめーーッ!!」
「……これは…」
「…俺達の元いた世界の材料が…テオロンには無かったから…材料にはこのテオロンでしか採れない肉や野菜を使ってるんだ…!」
「異世界流ということか…」
口の中に醤油の風味が広がり、異世界のチャーシューやネギ、メンマが見事にマッチしている。麺もコシがあり、すするのを止められない。
「……美味しい…」
「ご馳走さま!」
「…は……早いね…」
いつのまにか、俺のラーメンの器の中にあった麺やスープは無くなっていた。
……
「食った食った…」
「…それじゃあ…ん?」
ラーメン屋を出て、少し歩くと騒ぎが起きていた。
「なんだ?」
「…行ってみよう」
俺達は騒ぎのする方へと、走っていった。
……
「……何かあったの?」
「あ!…ジーク様!」
人混みをかき分けて進むと、広場の中央に豪華な装飾の施された、いかにもな聖剣が突き刺さっていた。
「またウェルテクス様が…」
「…またか……」
ジークは、剣をおもむろに掴むと簡単に引っこ抜いた。綺麗な刃が太陽に照らされている。
「相も変わらず…抜き方が乱暴だな…」
「…こんな場所に突き刺さってたら駄目だろう……ウェルテクス…」
するとウェルテクスという、天乃神宝の一つである伝説の剣は光に包まれて消えた。すると、ジークの隣には少女が立っていた。
「……みんな…お騒がせした…行くぞ…」
「…どこに刺さっていてもよいではないか」
「よくない!」
俺達は、ウェルテクスを引きずるジークへついていった。
……
「……この人はウェルテクス…一応……伝説の天乃神宝…聖剣だ…」
「一応とは…失礼な奴だな」
「…俺がギルドをやめて…少しして平原に刺さっていたのを引き抜いたんだ…」
ジークはジュースを飲む、ウェルテクスを見ながら言った。
「それじゃあ…ウェルテクスさんに……選ばれたということですか?」
「…そうだね…俺もよく分からないけど選ばれたみたいなんだ……どうせだから聞くけど…なんで俺を選んだの?」
するとウェルテクスは、ジークを見た後に俺達へ言った。
「………コイツは何日も飲まず食わずで……我を引き抜こうとしていたのだ……だからか手汗が凄まじくてな……」
「…そんな手汗ヤバかった?」
「……コイツの事だから抜けるまで我を握り続けるだろう…それは嫌だったから仕方なく選んでやったのだ」
めちゃくちゃ上から目線だな、この聖剣。まぁ、神に匹敵する力を持つくらいだからな、上から目線なのはしょうがないのか?
「大した理由ではなかったんだな…」
「ああ」
その時に、十郎がジークへある事を尋ねた。
「…ところで…貴方はギルドをやめたと言った……という事は…以前はギルドにいたということ…ですよね?」
「まぁ…そうだね」
ジークの答えを聞くと、十郎はジークをジッと見ながら続けて尋ねた。
「……ギルドを創設した小鳥遊さん達と共に…この異世界へ来たのですか?」
「いや?」
「え?…違うの?」
「うん」
十郎の問いにNOと答えたジークは、何故ギルドにいたかを話し始めた。
「俺は…ギルド創立メンバーがこのテオロンに来る…3年程前にこの世界へやって来たんだ……ギルドでは魔法の指南役として入ってただけ」
「……どうやってこのテオロンへ来たんだ?」
「…ホワイト曰く……様々な世界を管理しているシステムの異常で…俺はこのテオロンに飛ばされたんだ…」
ホワイト、色々と抜けすぎじゃないか?
「……そして…俺はシステムの情報を一部……体内に取り込んでしまったらしくて……このテオロンと元いた世界を行き来できるようになったんだ…」
「えぇ…」
それは何というか、運が良いのか悪いのか分からないな。
「………しかも…通常は神からしか貰えない筈の…スキルまで扱えるようになった…」
「スキル…小鳥遊さん達も持っていた…神の力……ですか……どんなスキルなのですか?」
「魔法関連のスキルだけど…見せようか?」
「見たい!」




