シン・トウキョー
光へ向かって歩いていくと、森を抜けた。そして俺は思わず声を漏らした。
「……スゲ…」
「…幻想的ですね……」
俺達の目の前には、幻想的な平原が広がっており、薄っすらと見慣れた街並みが見えた。
「………アレは…東京…ッ!?」
「…どう見ても東京ですね……」
幻想的な平原にある、東京の街並みに向かって、俺達は歩いていった。
……
「うぉぉ……」
俺達の目の前には、東京の街が広がっていた。それもビルの配置、店など全てが完璧に再現された状態で。だが…何より驚いたのは……
「……魔族と人間が…共存している…」
「…人間を敵視していないようですね」
魔族が人間と、共存している事だった。俺達が街を呆然と見ていると、背後から声をかけられた。
「君達…外から来たの?……よくあの森を抜けられたね…」
「…ッ!」
俺が後ろを向くと、そこには誰もいなかった。すると十郎が俺に言った。
「前ですよ」
「え!?」
前を向くと、そこには猫耳の魔族が立っていた。
「…引っかからない人は…二人目だよ……それで…ここに何か用かな?」
「……これを渡せと言われて…」
「それは…!」
猫耳の魔族は、目を丸くして手紙を凝視していた。周りの魔族や人々も驚いている。
「何だ…?」
「……とりあえず…ジークの元へ案内するよ…」
「ジーク?」
……
「ジーク!」
「あぁ…言わなくとも分かってるよ…」
俺達は市役所のような場所へ案内された。そこには、いかにもな魔法使いの帽子を被った中学生と、秘書らしき男がいた。
「……歓迎するよ」
「…あ……あぁ…」
「とりあえず座って」
言われるがまま、俺達はソファに座った。ジークとやらも、机を挟んで俺達の目の前へ座った。
「………ミユキさんが…これを渡せって…」
「……………………」
ジークは、手紙を受け取ると封を開けて中の手紙を読んだ。
「………………外ではそんな事になってたんだ……」
「……え?」
手紙を読み終わると、ジークは手紙を掌から消して俺達に言った。
「…喜んで引き受けよう……君達の手助け…」
「……手助けを引き受ける?…じゃあアンタが……助っ人?」
「…そうだね」
ジークは笑みを浮かべて答えた。そして、立ち上がると俺達に自己紹介をした。
「俺はジーク…トラベラーさ!……ちなみに本名は陣屋 倉真…」
「クラマ…君…」
「…だけど…ジークで定着してるからジークでいいよ…!」
「それじゃあ早速行く!…ってわけにもいかないでしょ?……疲れてるだろうし…」
「まぁ…そうだな…」
「……休憩がてらに街を回るといいよ…レストランも…ゲーセンも…東京にあるものは殆どあるし……良ければ案内するよ…?」
「マジ!?」
……
「……凄いですね…」
「あぁ……東京へ帰ってきたようだぜ…」
「………この街の名前は…何ですか?」
街を歩きながら、十郎がジークへ尋ねた。
「……真東京…」
「シントウキョー…ですか……」
「疲れたからか…いいにおいがしたらか分からんが…腹が減ってきたな…」
「それじゃあ…ここで食べよう!」
ジークは、有名なラーメンのチェーン店を指差して言った。そして、俺達はラーメン屋の中へと入っていった。
「あ!…ジーク様!」
「やぁ!…店はどうだい?」
「いつも通り…繁盛してるよ!……そこの二人は?」
「客人だよ!」
店主と軽い会話をした後、俺達はカウンターに座ってラーメンを注文した。
「……野菜塩ラーメンで…ネギ少なめ…メンマ大盛り……あ!…チャーシューおまけして!」
「いつものやつね…二人は?」
「あ……じゃあ…醤油ラーメンで…!」
「…僕は豚骨ラーメンで」
注文してから、1分後くらいにラーメンが目の前に置かれた。なんて早さだ、魔法でも使ったのか?
「…まさか……異世界でこのラーメンが食えるとはな……いただきます…!」
「いただきます!」
「……いただきます」
俺は割り箸を割って、ラーメンをすすった。汁を吸った麺が舌に接触した瞬間、俺は思わず声を出した。
「うんめーーッ!!」
「……これは…」
「…俺達の元いた世界の材料が…テオロンには無かったから…材料にはこのテオロンでしか採れない肉や野菜を使ってるんだ…!」
「異世界流ということか…」
口の中に醤油の風味が広がり、異世界のチャーシューやネギ、メンマが見事にマッチしている。麺もコシがあり、すするのを止められない。
「……美味しい…」
「ご馳走さま!」
「…は……早いね…」
いつのまにか、俺のラーメンの器の中にあった麺やスープは無くなっていた。
……
「食った食った…」
「…それじゃあ…ん?」
ラーメン屋を出て、少し歩くと騒ぎが起きていた。
「なんだ?」
「…行ってみよう」
俺達は騒ぎのする方へと、走っていった。




