ジーク
「…この手紙を持って……パラダイスと呼ばれる場所に行ってほしい…」
「……なるほどな…」
「…え?……何で?」
俺が戸惑いながら尋ねると、ミユキさんは笑顔で答えた。
「……そこに…助っ人がいるからさ!」
「助っ人…ですか…?」
「まぁ…言ってみれば分かるよ!」
「はぁ…」
ミユキさんの手紙を受け取って、俺達は立ち上がった。
「それじゃあ遺跡の探査…頼んだよ!」
「はい!」
そうして俺達はエリアスを出て、パラダイスと呼ばれる大地へと歩き始めた。
「パラダイスってどんな場所なんだ?」
「…スマコにも情報がありませんね……」
スマコで調べても、パラダイスの情報は一切載っていない。一体どんな所なんだ……
「とりあえず…行きましょうか」
「……なんだか…俺達この異世界に来てから歩きっぱなしのような気が…」
……
「………なぁ…パラダイスってどの辺にあんの?」
「位置的には…この森を抜けた先のようですね…」
「…よし……それじゃあさっさと抜けるか!」
俺達は、薄暗い森の中へ足を踏み入れていった。森は俺達が行ったことのある中では、比較的明るい。
「……暗所恐怖症に優しいな…この森は…」
「…そうですね」
俺達はゆっくりと警戒しながら、森の中を進んでいった。その瞬間、見覚えのあるモンスターが俺達の目の前へ現れた。足元には魔素が落ちている。
「…ハァ……マジかよ…」
「……またですか…」
[アビスゴブリン]
危険度SS
アビスの影響により変異したゴブリン。魔法を扱い、とてつもない生命力を持つ。知能は無く、目の前にいる生物を人間でもモンスターでも見境なく襲う。
「……ん?…ちょっと待て…」
「…!」
俺は腰にある刀を抜いた。抜いた瞬間、刀は赤黒い波動に包み込まれた。
「…梅岡さん?」
「……神斬りなら…コイツを…」
その時、アビスゴブリンが斧を振り上げた。そして斧が俺に当たる刹那、一閃、俺はアビスゴブリンを斬った。
「オラァァア!!」
「………グロロ…」
「…身体が…!」
アビスゴブリンの身体にヒビが生じて、アビスゴブリンは霧と化した。アビスゴブリンがいた場所には、魔素とアビスが落ちていた。
「……完成に…倒せた…?」
「…これでもう…会うことが無かったらいいな…」
落ちている魔素とアビスを、俺が拾い上げて胸にしまった。
「……よし…じゃあ進もう!」
「はい!」
俺達は更に、森の奥へと進んでいった。不思議と、モンスターは出てこなかった。そして、進んでいると、光が見えてきた。
「森を抜けられそうです…」
「……よし…!」
光へ向かって歩いていくと、森を抜けた。そして俺は思わず声を漏らした。
「……スゲ…」
「…幻想的ですね……」
俺達の目の前には、幻想的な平原が広がっており、薄っすらと見慣れた街並みが見えた。
「………アレは…東京…ッ!?」
「…どう見ても東京ですね……」
幻想的な平原にある、東京の街並みに向かって、俺達は歩いていった。
……
「うぉぉ……」
俺達の目の前には、東京の街が広がっていた。それもビルの配置、店など全てが完璧に再現された状態で。だが…何より驚いたのは……
「……魔族と人間が…共存している…」
「…人間を敵視していないようですね」
魔族が人間と、共存している事だった。俺達が街を呆然と見ていると、背後から声をかけられた。
「君達…外から来たの?……よくあの森を抜けられたね…」
「…ッ!」
俺が後ろを向くと、そこには誰もいなかった。すると十郎が俺に言った。
「前ですよ」
「え!?」
前を向くと、そこには猫耳の魔族が立っていた。
「…引っかからない人は…二人目だよ……それで…ここに何か用かな?」
「……これを渡せと言われて…」
「それは…!」
猫耳の魔族は、目を丸くして手紙を凝視していた。周りの魔族や人々も驚いている。
「何だ…?」
「……とりあえず…ジークの元へ案内するよ…」
「ジーク?」
……
「ジーク!」
「あぁ…言わなくとも分かってるよ…」
俺達は市役所のような場所へ案内された。そこには、いかにもな魔法使いの帽子を被った中学生と、秘書らしき男がいた。
「……歓迎するよ」
「…あ……あぁ…」
「とりあえず座って」
言われるがまま、俺達はソファに座った。ジークとやらも、机を挟んで俺達の目の前へ座った。
「………ミユキさんが…これを渡せって…」
「……………………」
ジークは、手紙を受け取ると封を開けて中の手紙を読んだ。
「………………外ではそんな事になってたんだ……」
「……え?」
手紙を読み終わると、ジークは手紙を掌から消して俺達に言った。
「…喜んで引き受けよう……君達の手助け…」
「……手助けを引き受ける?…じゃあアンタが……助っ人?」
「…そうだね」




