モンスターの起源
「…これは……」
そこには栄養価が高い保存食、袋一杯に詰まった10万G、最高級の武具、薬草など、旅に必要な物が完璧に準備してあった。
「……ん?」
そして、魔王は一緒に置かれている封筒に目が留まり、封筒を開いた。
「…ッ!」
封筒の中には、魔族の国アロンでカメラが出回った際に撮られた、魔王、民、そしてシャルルの写真が入っていた。
「…………我は…人間を滅ぼそうとするあまり……くッ!」
魔王は、自身の胸に思い切り腕を突っ込んだ。そして、体内からアビスを無理矢理取り出した。すると魔王は、元の姿へと戻っていった。
「………すまない…すまない…ッ…」
「…魔王様……」
跪いていた魔王は涙を拭い、立ち上がると準備をして、執事に言った。
「……今まで…我についてきてくれて…ありがとう…」
「………いえ…」
「……………我は…この大罪を背負って……罪滅ぼしの旅をする………それで…赦されるとは思っていないが…」
そして扉を開けると、最期にシャルルへ聞こえるように言った。
「…アロンは……頼んだ……息子よ…」
「……ああ…」
魔王は息子の目をジッと見た後、城の外へと歩いていった。
「………お前は…」
「…魔王……」
城の出口には悪神と共にいた、メイド姿の女が立っていた。
「……エラトマ様は…アビスで兵器を造れ…との命令をあなたにした筈ですが…」
「アビス……」
魔王は右手に持って蠢いている、アビスをジッと見た。
「………命令に背いた以上…制裁を与えなければなりません…」
「…………ああ…分かってる…」
すると魔王は、アビスを闇系魔法で包み込み始めた。
「…!」
その瞬間女は魔王の右腕を、虚無から生み出した剣で斬った。
「……予知で…お前がそう来るのは知ってた…」
魔王が右手に持っていたアビスは、いつのまにか左手にあった。魔王は、女の反応が一瞬遅れた瞬間に、アビスを闇で包み込んだ。
「…ッ!」
「……アビスが消えてしまったな…」
「この…!」
そして、魔王を袈裟懸けで斬った。魔王は倒れながら、思っていた。
『………ミユキ…あの時……我の予知を無効化したのは…お前だと知っていたぞ……予知が無効化される前に…お前が予知を無効化するという未来を予知していたからな…』
「…ッ!」
『…神の力さえも無効化する…お前なら……エラトマを…ッ!』
魔王は倒れた後、魔素になった。女は魔王の魔素を拾い上げると、粉々に砕いた。
「…これなら……二度と復活出来ないでしょう…」
そして粉々になった魔素を捨てると、闇の中へと消えていった。
……
「こんな事になってたとは…」
「…そのアビスは……魔王のものだったのだな…」
俺達は、ミユキさんの目の前に突如落ちてきたアビスを読み取って、俺達の目の前にアビスが落ちてくる前の映像を見ていた。
「……うん…これで確信に変わったよ…」
「…確信?」
映像が終わり、ミユキさんは映像を消すと俺達に言った。
「………アビスには…洗脳効果がある!」
「洗脳?」
「うん…アビスを取り込んだ生物は…悪神……エラトマの操り人形になるってわけ!」
「…マジかよ……アビスにそんな効果が…」
どうやらアビスを取り込んだ生物は、力を得る代わりに、悪神の命令を聞く操り人形と化すらしい。
「……それで…洗脳効果がある事は分かったが……これからどうする?」
「……………………悪神探しに戻るか?」
「まぁ…悪神探しはするけど……とりあえず見てほしいものがある!」
そう言ってミユキさんは、神殿の映像を映し出した。その映像を見た十郎が、声を出した。
「あ!…その神殿は僕とミユキさんが手合わせした…古代神殿!」
「そう…ここで僕と十郎君が手合わせしていると……迷宮が見つかった…」
映像が、迷宮の映像へと切り替わった。壁には何やら文字のようなものが刻まれている。
「そして…この神殿はとあるモンスターを封印する為に古代に建てられた事も分かった…」
「ふむ…」
すると話した後に、ミユキさんは王達や俺達へと語りかけた。
「…おかしくない?」
「……おかしい?」
ミユキさんは、映像を切り替えた。切り替わった映像には、ボロボロの本が映し出されている。
「…この本には……魔族と人間が何故敵対したかが書かれている…」
「………そんなものが…」
「内容を要約すると……何千年も前…魔族と人間は共存していたが…ある日人間の王が軍に命令して…魔族を虐殺し始めた……そして…敵対し始めたと…」
「…確かに……その本の内容が本当なら…矛盾が生じているな…」
王達は映像を見て、呟いていた。何がおかしいんだ?
「…どこかおかしい所ある…?」
「……モンスターの起源は知ってるよね?」
「あぁ…ユウトさんがぶっ倒した神の力が…このテオロンに落ちて…そこからモンスターが……あ!」
その時やっと、俺は何がおかしいかが分かった。




