魔族と人間の宴
俺達はオーナーのその言葉を聞いたが、睨むのをやめなかった。すると、ヒルガオさんは俺達の元へ歩いてきて言った。
「………この近くに俺の住む村があるんだが……今年は豊作でね……宴をする事になったんだ……」
そして、俺達の目の前へ膝をつくと真っ直ぐな眼差しで言った。
「…良ければ来ないか?」
「私は行く…君達は…?」
「…………オーナーが行くなら…」
俺達は、オーナーの後ろを歩きながら村へ向かった。
「……俺達…痛い事されないかな…」
「オーナーの友達らしいし…少しは信用できる…」
「だけど…アタシ達は魔族……どうせ良い目では見られない……」
そんな事をコソコソと話しながら、俺達はオーナーとヒルガオさんについていった。
「………ここが村だ…」
辺りが少し暗くなった時、村の前でヒルガオさんが言った。
「…あの酒場で宴は始まってる……さぁ…来なさい!」
大きな酒場に入ると、村の人間達が座っていた。
「あ!…ヒルガオさん!……それに…アザミさんも!」
「……皆さん…お元気そうでなによりです…」
「…あれ……その子達は…?」
「………ッ!」
村の人間が、俺達を見てオーナーに尋ねた。大勢の人間の視線が俺達に集まり、俺達は少し震えていた。
「可愛いわねぇ!…あなたたち…何歳…?」
「………え…?」
オバさんが、俺達の所へ来て尋ねてきた。俺は恐る恐る呟いた。
「……じ…13歳…」
「…あら……幼い顔してるから9歳くらいかと思ったわ!…ごめんなさいねぇ…!」
「…………い…いえ…」
すると、今度は俺達と同じくらいの歳の女の子が走ってきて、アランのツノを見ながら呟いた。
「……綺麗なツノだね…」
「…き……綺麗…?」
アランは困惑しながら、ツノを触った。すると、歩いてきたヒルガオさんが言った。
「まぁ…そんな構えないで……とりあえず座りなよ…!」
「あぁ…はい…」
俺達は言われるがまま、酒場の空いた席へ座った。するとオーナーが、俺達に言った。
「…昔…魔族である私を…この村の人達は種族関係なく助けてくれた……」
オーナーは、宴をする村の人達を見ながら俺達に言った。
「……人間が全員…魔族を嫌っているわけではない……魔族と平等に接してくれる人間もいる…」
「………………」
「でも…人間は……悪だって…魔王様が…」
「…………言っていいものか…」
するとオーナーは、真剣な眼差しになって俺達に言った。
「…君達を怖がらせた魔族……あの魔族は魔王に頼まれて君達を攫いにきたのだ…」
「……え?」
その時、俺達は魔王の実験の事を教えられた。俺達は動揺を隠せなかった。
「…そ…んな…」
「……それじゃあ…あの時……隠れてなかったら……」
すると、人間の女の子がこちらを向いて走ってきた。
「………これあげる!」
「……え?」
「…悲しそう……これあげるから元気出して!」
そう言って女の子は、俺達に手作りの花のバッジをくれた。そして、母親らしき人物に呼ばれて戻っていった。
「………今まで…人間は悪だと思ってた…けど…」
「……人間にも…優しい人がいる……そして…人間だけじゃなく…魔族にも……悪い人がいる…」
「…アタシ達は……視野が狭かったのかもしれない……」
……
「……っていうわけで…魔族にも…人間にも…優しい人と…悪い人がいる事が分かったマルコス達は……オーナーの活動を手伝い始めたのだった…!」
「…紙芝居なんてあるのか…」
マルコスは、紙芝居を持ちながら話した。
「…………いい話だな…」
「それは初耳だった……君達にそんな過去があったなんてねぇ……」
「…すいません」
すると十郎が、アザミさんに尋ねた。
「何故…魔王の実験の事をこの国の民に知らせたり……魔王を倒そうと思わなかったのですか?」
「………あ…それ正直…俺も気になった…」
アザミさんは十郎の質問に対して、少しの沈黙の後に答えた。
「……友を地に堕とす事は出来なかった…たとえ……変わり果ててしまったとしても…」
「………………」
「それに…可能性を…信じていたのです……魔王が…もしかしたら…元に戻るかもしれないと……」
少し悲しみの混じった声で、アザミさんは言った後、ミユキさんを見て続けて言った。
「しかし…ミユキさんの話を聞いて目が覚めました……魔王は一度…王座から離した方が良いと…」
「アンタらは魔王を倒そうとしなかったのか?」
「…俺達はオーナーに従っただけだ……オーナーが魔王を倒したいのならそれを手伝うし……嫌なら何もしない…」
「……だからかぁ…」
すると、ミユキさんがスマコから紙を取り出して俺達の前に広げた。
「言い忘れたけど…これが作戦…こんな感じで特大スクープの載った新聞を配るから…!」
「……なるほどな」
俺達が作戦の書かれた紙を見ていると、アザミさんが時計を見て俺達に言った。
「…この時間は兵士達が警備の交代に入る為…チャンスだと思います…」
「……じゃあ行く?…作戦は分かったよね?」
「…ああ」
「よっしゃ!…行くか!」
俺達はローブを身にまとって、カフェの外へ出ていった。




