魔族攫い
「…この件は何時頃……行うのですか?」
「……今から30分後…お互いに準備があると思うからね!」
「そうですね…」
それを聞いて、アザミさんは奥へ歩いていった。俺は時間になるまで、スタッフのみんなと話すことにした。
「…なぁ……」
「んー?」
上着を脱いで武器を手入れしたり、魔法を生み出したりしているスタッフに、俺は質問した。
「……少し聞きたいことがあるんだけど…」
「何かな…?」
……
「…!」
「………リヴァイアサン…どうした…」
魔王の自室に俯いて立っているリヴァイアサンが、突如顔を上げた。その目線は街に向いている。すると、リヴァイアサンは囁くように魔王へ言った。
「…………臭いがする……これは…敵の臭いだ…」
「……フン…人間共か………リヴァイアサン…軽く屠ってこい…」
「…御意」
リヴァイアサンは魔王の命令を聞くと、その場で跪いて消えた。その数時間後に、白衣の魔族が扉を開けた。
「………失礼します…」
「…あぁ…実験の報告か……」
「はい」
白衣の魔族は、実験の報告を魔王に話していった。しかし、魔王は実験の報告が耳に入らなかった。
『おかしい……【予知】が…使えない…』
「魔王様…どうかなさいました?」
「…いや……何でもない…」
魔王の能力である【予知】が、使えない事に気が付いた魔王は、不審に思いながらも、白衣の魔族の報告を聞いていた。
……
「……アザミさんとアンタ達は何で…人間を助けているんだ…?」
「…私の場合は……気付かされてしまったのですよ…人間は絶対的な悪……ではないと…」
店の奥から、人数分のローブを持ってきたアザミさんが言った。
「………私の準備は終わりました…これは正体を隠すのに使ってください」
「ありがとうございます」
「…あざっす」
すると、スタッフの一人であるマルコンがローブを受け取って言った。
「……俺達は人間が悪だという考えを植え付ける教育を受けた…だからか…人間というのは悪だと思っていた…」
マルコンは話しながら、胸にしてあるバッジを取った。
「そして…俺が10歳くらいになったある日…俺はアロンの外へ出たんだ…」
……
「……紅目草…紅目草……どこかなぁ…」
俺は孤児で、家も家族もいなかった。そして、俺はいつも通り金を稼ぐ為に高く売れる、紅目草という薬草を探していた。
「…紅目そ……ッ!?」
「……へへ…」
足に鋭い痛みが走った、足元を見るとトラバサミが俺の足を挟み込んでいた。すると人間が、苦しむ俺の元へゆっくりと歩いてきた。
「ラッキー…!……まさか吸血鬼のガキが取れるとはな…!」
「…うッ……これは…」
その人間は、俺達みたいに金稼ぎの為に外へ出る孤児の魔族をさらって売買する組織の人間だった。
「……吸血鬼は美形が多いからな…物好きなババアやジジイに高く売れるんだ…!」
「や…やだ……離して!」
「…やめなさい」
俺と男が声のする方を向くと、そこにはオーナー、アザミさんが立っていた。
「ああ!?…何だ…魔族のジジイ!」
「…その子から…手を離しなさい」
「……ッたく…ジジイは売れねぇからな………死んどけ…ヤッ!?」
男がオーナーへ向かっていったその瞬間、男の頭が消えた。異常な光景に痛みを忘れ、目をこすると、いつのまにか男はその場で白目を剥き、口から涎を垂らしながら膝をついていた。
「……大丈夫かい?」
「…は…はい…」
その後、オーナーはトラバサミを外してくれて、この店で手当てもしてくれた。その時にスグル、マコちゃん、アランちゃんと出会った。
「………アンタもオーナーに助けてもらったの?」
「……うん…」
スグル達も俺と同じ様に、孤児で家も家族もおらず、人間に傷付けられた人達だった。オーナーはそんな俺達を育ててくれた。
「人間なんて…全員魔王様に殺されちゃえばいいのに……」
「……俺は…大人になったら人間を殺してやる…」
人間に対する憎悪、嫌悪、憤怒が膨れ上がっていった。
「…君達……」
「……はい」
そして、俺達が13歳くらいになったある日、オーナーが俺達を呼んだ。
「………今から大事な用事がある…だから留守番をしていてほしい……」
「うん!」
俺達が頷くと、オーナーは少し真剣な眼差しになって言った。
「…もし…留守番中に誰かが来たら…この中に隠れていなさい…」
「……え?」
オーナーは魔法を付与した大きな布を持って言った後、外へ出て行った。
「…どういう事だろう……」
「さぁ…」
するとその時、入り口の鍵を開ける音が聞こえた。まだ、オーナーが出て数分後の事だった。
「オーナーかな!」
「…でも…帰ってくるの早すぎじゃ…」
俺達が扉の隙間から見ていると、顔をマスクで隠して大きな袋を持った魔族が入ってきた。その魔族達は、ゆっくりと俺達のいる部屋へ歩いてきた。
「だ…誰だろう…」
「……隠れよう」
「…え?」
「早く!」




