スタッフ達の手助け
「ところで……皆様は何故アロンへ…?」
「……マスターには話そうか…」
ミユキさんは、何故俺達が魔族に扮してアロンへやって来たのか、これまでの経緯を話した。
……
「……ふむ…」
「…まぁ……そういう事で…ここに来たんだ…」
するとアザミさんは、ミユキさんが話し終わった後に言った。
「良ければ…お手伝いしましょうか…?」
「…え?……ホント?」
「はい」
アザミさんは、笑みを浮かべて答えた。するとミユキさんは、再びアザミさんへ尋ねた。
「……マスターの友達なんでしょ?……友達を地に堕とす様な事していいの?」
「…はい……どんな理由であれ…彼はとんでもない罪を犯してしまいましたからね……私と同じ様に…」
そう呟いた後にアザミさんは、ミユキさんに尋ねた。
「人数は多い方がよろしいでしょう……」
「まぁ…そうだね…」
「…では…うちのスタッフを呼びますね…」
アザミさんは、固定電話の受話器を取って電話をし始めた。
「………あの子達は家なの?」
「はい…出来る限り外出するなと国から言われておりまして…」
アザミさんは、電話番号を入力しながら答えた。ミユキさんはそれを聞いて、申し訳なさそうに言った。
「…そんな時に…ごめんね……」
「いえいえ…ミユキさんの頼みと聞けばすぐに……駆けつけてきますよ…」
電話を鳴らしながら、アザミさんは笑みを浮かべて言った。
……
約三分後
「ミユキさん…!」
大学生くらいの人が、ジプ・ソフィアの中へ勢いよく入ってきた。そしてその人に続くようにして、五人の魔族が入ってきた。
「久しぶり〜!」
「この子達がうちのスタッフです……すまないね…突然呼び出して…」
「…………いえ…」
「……お得意様であるミユキさんの頼みなら断れないっスよ!……あッ!…ミユキさんの知り合いっスよね!」
スタッフのみんなは、俺達を見てハッとすると会釈した。そして、会釈した後に自己紹介を始めた。
「…俺はマルコン……よろしく!」
「マルコン君…肩にバナナが乗ってるよ…」
「あ!…ホントだ!」
「……家で何をしていたんだね…」
マルコン、勢いよく入ってきた大学生くらいの人だ。金色の髪に赤目という、外国人のような見た目で、とても美形だ。
「……スグルです…」
「スグル君…身体の方は大丈夫なのかい?……無理しなくてもいいよ」
「いえ…ミユキさんの頼みなので……」
スグル、この人も見た目は大学生くらいの年齢だ、そして目元まで前髪がある。見た目で判断するのはよくないが、口数が少なそうだ。
「初めまして!ウチはマコっていいます!」
「相変わらず元気が良いね…マコちゃん」
「えへへ…!」
マコさん、怒られるかもしれないから声に出しては言えないが、背が小さくて可愛らしい女の子だ。ちなみに、俺はロリコンではない。
「私はアキ…一応……この中では最古参です…」
「アキさん…外の様子はどうでしたか?」
「……多くの兵士達が慌てていました…もしかすると……外出禁止令が発令されるかもしれません…」
「…そうですか……」
アキさん、とてもお淑やかで、清楚を絵に描いたような人だ。それに十郎や、ミユキさんに負けない程の色気がある。というか、俺は何故十郎やミユキさんと比べているんだ。
「…名前はアラン……よろしく…」
「……アランちゃん…私の用意した家はどうかな?」
「…良い感じです………今のところは…」
アランさん、俺よりほんの少し歳上で、男装が似合いそうな女の人だ。とても綺麗な目をしている。最初見た時は男性かと思ったが、声が完全に女性だったので気付いた。
「………自己紹介は終わったかな?」
「はい!」
マルコンが答えると、アザミさんはニッコリと微笑んでミユキさんへ尋ねた。
「…この件は何時頃……行うのですか?」
「……今から30分後…お互いに準備があると思うし…どうやって新聞をばらまくかも話さないといけないからね!」
「そうですね…」
それを聞いて、アザミさんは奥へ歩いていった。俺は時間になるまで、スタッフのみんなと話すことにした。
「…なぁ……」
「んー?」
上着を脱いで武器を手入れしたり、魔法を生み出したりしているスタッフに、俺は質問した。
「……少し聞きたいことがあるんだけど…」
「何かな…?」
……
「…!」
「………リヴァイアサン…どうした…」
魔王の自室に俯いて立っているリヴァイアサンが、突如顔を上げた。その目線は街に向いている。すると、リヴァイアサンは囁くように魔王へ言った。
「…………臭いがする……これは…敵の臭いだ…」
「……フン…人間共か………リヴァイアサン…軽く屠ってこい…」
「…御意」
リヴァイアサンは魔王の命令を聞くと、その場で跪いて消えた。その数時間後に、白衣の魔族が扉を開けた。
「………失礼します…」
「…あぁ…実験の報告か……」
「はい」
白衣の魔族は、実験の報告を魔王に話していった。しかし、魔王は実験の報告が耳に入らなかった。
『おかしい……【予知】が…使えない…』
「魔王様…どうかなさいました?」
「…いや……何でもない…」
魔王の能力である【予知】が、使えない事に気が付いた魔王は、不審に思いながらも、白衣の魔族の報告を聞いていた。




