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ジプ・ソフィア




兵士は、十郎とミユキさんを見て別れを告げた後、門の方へと歩いていった。


「…『子供を見るのは48年振り』…か……」

「……魔族は…子供を産める種が少ないんだ…」

「…え?」


俺の呟きを聞いていたミユキさんが、俺に言った。


「……魔族系のモンスターは…不老の代わりに……子を産める種が少なく…出産率も低いから……子供が少ないんだ…」

「…だから『48年振りに見た』…と言っていたのですね…」


すると、ミユキさんは歩きながら俺達に言った。


「一旦休憩しない?…この近くに良いカフェがあるってエミリアが言ってた!…実際に行ったけど良かったよ!」

「……そうだな」


ミユキさんと十郎は、そこまで疲れてなさそうだが、俺はあのダッシュで疲れているからな。そうして、俺達はカフェへと歩いていった。



……



少し歩くと[ジプ・ソフィア]という名前のカフェがあった、そこがミユキさんの言う、良いカフェらしい。


「おぉ…スゲェ…」


内装は東京のカフェみたいだった、異世界に来てる事を忘れそうだな。


「……やっぱ客はいないか…」

「…まぁ…戦争の真っ最中だからね…」


俺達はひとまず、カウンターに座る事にした。すると店長、マスターらしき老人が俺達の方を見た。


「………こんな時にお客様が来るとは…おや?」

「……どうもマスター…!」

「ミユキさんでしたか……魔族の姿をしていたので…入ってきた時は気付きませんでしたよ…」

「ゑ?」


マスターが何気無く言った『ミユキさん』という言葉を聞いて、俺は思わず声を出した。


「……ミユキさんの事をご存知なのですか?」

「はい…ミユキさんはよく来られるので…」

「…それに…ミユキさんが人間という事も知っているふうだったが…」


俺が尋ねると、マスターは静かに微笑んだ。するとミユキさんが俺に言った。


「……マスターはね…僕達人間の味方だからね……僕も素性を明かしているのさ…!

「人間の…」

「味方…」


魔族なのに…人間の味方なのか?……一体何故……


「そ…それは何で?」

「………マスターは…魔王の実験の事を知っているんだ……」

「実験の事を…」


ミユキさんが俺達にそう言うと、マスターはカウンターに写真を並べた。写真には、身体の半分が魔族になっている人間の姿が写っていた。


「……私は…人間と魔族が手を取り合う…そんな関係を戻せないかどうかを考えていてね……何度も彼……魔王に訴えた…」

『…昔は手を取り合って生活していた……つまり魔族は人間の事を嫌っているから侵略してきたわけでは無かったのか……』


マスターの話を聞いて、ミユキさんは何かを考えているようだった。


「……その結果…彼は私の願いを聞き入れ……人間と友好関係を結ぼうとした……しかし…」

「悪神がやって来た…」

「はい……あの悪神とやらが来てから…魔王は……変わってしまった…」


悲しさの混じった声で、マスターは話した。


「…あの悪神が来てから…彼は悍ましい実験の虜となった……」

「そして…マスターはこのカフェの従業員の人達と共に……実験の為に連れ去られた人間を救助する活動を始めた…!」

「…へぇ……」


最後に、ミユキさんが話を締めくくるように言った。俺は話を聞いて、マスターに質問した。


「……何で人間との関係を戻そうと魔王に訴えたり…人間を助けるんだ?」

「……………約束…ですから…」


俺の質問に対して、マスターはそう呟いた。そして、その後にマスターは続けて言った。


「あぁ…申し遅れました……私…ここのオーナーを務めさせていただいております……アザミ…という者です…」

「……アザミさん…ですか…」


マスターであるアザミさんは、名乗った後に一礼をした、するとアザミさんがミユキさんに尋ねた。


「ところで……皆様は何故アロンへ…?」

「……マスターには話そうか…」


ミユキさんは、何故俺達が魔族に扮してアロンへやって来たのか、これまでの経緯を話した。



……



「……ふむ…」

「…まぁ……そういう事で…ここに来たんだ…」


するとアザミさんは、ミユキさんが話し終わった後に言った。


「良ければ…お手伝いしましょうか…?」

「…え?……ホント?」

「はい」


アザミさんは、笑みを浮かべて答えた。するとミユキさんは、再びアザミさんへ尋ねた。


「……マスターの友達なんでしょ?……信頼を地に堕とす様な事していいの?」

「…はい……どんな理由であれ…彼はとんでもない罪を犯してしまいましたからね……私と同じ様に…」


そう呟いた後にアザミさんは、ミユキさんに尋ねた。


「人数は多い方がよろしいでしょう……」

「まぁ…そうだね…」

「…では…うちのスタッフを呼びますね…」


アザミさんは、固定電話の受話器を取って電話をし始めた。


「………あの子達は家なの?」

「はい…出来る限り外出するなと国から言われておりまして…」


アザミさんは、電話番号を入力しながら答えた。ミユキさんはそれを聞いて、申し訳なさそうに言った。


「…そんな時に…ごめんね……」

「いえいえ…ミユキさんの頼みと聞けば……すぐに駆けつけてきますよ…」















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