防衛完了
エミリアはスマコを開き、倉庫の中から禍々しい気を放つ兜を取り出した。それを見て王達はハッとした。
「……それは…」
「…なるほどな」
「念の為…持ってきて正解だった…!」
アダンは、その兜をジッと見ていた。
「…その兜は……あのアレキリオンの兜か…」
「うん!」
「……それで…その兜を持ってどうするの?」
兜を持つエミリアに、アダンは笑いながら尋ねた。するとエミリアは自信満々に答えた。
「…アレキリオンを…呼ぶ!」
「呼ぶ?…アレキリオンを?」
「うん!」
自信満々にエミリアが答えると、アダンは納得したように言った。
「……分かったぞ…我が飲み込んだアレキリオンは…どう見ても年齢が合わないし…そこまで実力も無かった……つまり偽物…別に本物のアレキリオンがいるという事か…!」
「………………」
「そうだろう?…本物のアレキリオンを呼ぶつもりなのだろう?」
するとエミリアは、ため息を吐いて言った。
「…惜しいね……半分正解…」
「……え?」
「君が飲み込んだアレキリオンは…力を封じ込めた偽物のアレキリオンさ…だけどこの兜を使えばその偽物が…本物へと変貌する…!」
アダンは不思議そうにしたが、すぐにエミリアへ向かっていった。
「よッ…と!」
エミリアはアダンの飲み込みを華麗に避けて、王達を見た。王達はエミリアの思惑を理解したのか、頷くとアダンへ向かって走っていった。
「……ふッ!」
「…………………ッ!!」
「オフッ!…危な…」
王達の攻撃を、アダンは魔法で防御しつつエミリアを見た。
『何を企んでいるのかな…?』
すると王達は、一斉に畳み掛けてきた。アダンは防御に夢中になっていた、その時、エミリアがアダンに飛びかかっていた。
「エミリアァァァア!!」
「うわ!」
アダンは、それを待っていたかのようにエミリアに向かって攻撃した。エミリアはその攻撃を避け、アレキリオンに兜を被せて着地した。
「よし…!」
「……兜を…」
するとその時、アレキリオンの身体が段々と大きくなり、鎧を砕いて筋骨隆々となった。
「な…なに!?」
「………吾輩はアレキリオン……魔族殺しの…アレキリオンよ…」
そして、アダンの中から思い切り飛び出して着地した、首から下は裸だった。
「エミリア王…魔族に不覚を取った……申し訳ない…」
「……それはいいんだけど…アレキリオン…鎧……あそこにあるからさ…」
「…うむ……」
エミリアは裸のアレキリオンに言った、アレキリオンはエミリアの指差した箱の中にある鎧を素早く着た。
「……あれが…本来のアレキリオン…」
「さて…魔族…」
アレキリオンは、盾と剣を持ってアダンの目の前へ立った。すると、思い切り地面を殴った。
「…【共鳴する剣心】…」
その時ギルド戦士を襲う竜巻と、聖騎士を襲う鮫が消えた。
「……うげッ!」
「…消えた……?」
竜巻に巻き込まれていたギルド戦士達は、その場に落下した。
「………吾輩を中心に…半径10km以内にいる者は…一時的に魔法が使えなくなる…」
「……ナイスゥ!」
エミリアは、アレキリオンの背中を叩いた。そしてその後に、アダンへ言った。
「…アレキリオンはミユキと同じで魔法を無効化出来る術を持っている……これで…僕達の勝ちだね…!」
「……魔法が使えなくとも…大丈夫さ…!」
アダンは再び、土や岩を纏い始めた。ギルド戦士達はハッとして銃を構えるが、アレキリオンが手を挙げた。
「吾輩が倒す」
「…え?」
するとアレキリオンは、地面を蹴って飛び上がった。そして、土の竜と化したアダンの胸へ剣を突き刺し、土ごと思い切り斬った。
「……エミリア王!」
「オーケー!」
そして露出した胸へ、エミリアがモンスタークラッシュを投げ飛ばした。モンスタークラッシュはアダンの胸へ突き刺さり、アダンは落下した。
「…うぐぐ…ッ…」
「……やったか!?」
「うごごごご!!」
アダンは口から魔族や人の兵士を吐き出すと、土の装甲を壊して肥大化し始めた。だが、肥大化は途中で止まった。
「…耐えるの!?」
「……わ…わわ我わはわわは…まだ……ッ!!」
その瞬間、三本のモンスタークラッシュが、他に露出していた部分へ突き刺さった。投げたのはエミリア以外の王達だった。
「…う…うおおごぉぉぉおお!!」
「……爆ぜろ…!」
アダンは、自分が喰らった様々なものを吐き出し、爆散した。
……
「…………魔族…帰ったね…」
「……ああ…」
アダンの吐き出した魔族の兵士達は、満身創痍で退いていった。
「…とりあえず…防衛は成功だ…」
「うん…後は……ミユキ達がアロンを内部から破壊するだけだね…」
兵士が魔素を拾う中、傷だらけの戦士達は橋の向こう側にあるライド大陸を見ていた。
「ひとまず…アダンと…負傷者と……リコを運ぶぞ…」




