表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/457

もう一人の勇者




「……大変です!!…戦士が攻めてきました…!!」

「…まだ力の差が分からん奴がいたようだな…軽く潰せ」

「いえ…それが……奴()です…」

「奴等…?……複数なのか?」

「………1000人の戦士です」


帝王が大きな窓から外を見るとあちこちの城壁から煙が上がっていた。


「…貴様ら!!…ぐわぁ!?」

「よっしゃ!!…このまま押せ!!」

「勇者様城まで援護するんだ!!」


さすがの兵士も1000人の戦士に押されていた。


「…黒騎士全員に城を護衛させろ…城の中にさえ入られなければ渦で愚かな戦士どもは駆逐できる」



……



「…くッ!」

「数の暴力では僕等に勝てないよ」


戦士達は城の前に立ちはだかる三人の黒騎士になすすべもなかった。


「…クソ……」

「ほらほら!…かかってこいよ!!」

「そこちょっと通るよ、ごめんね」


戦士達を掻き分けて青年と少年が現れた。それを見て黒騎士達は笑みを浮かべる。


「…やっと勇者様のご到着か」

「そこから先にいかなければならないんだ…どきな」


青年がそう言うと黒騎士は剣を構えた。


「そうはいかない」

「ぼ…僕!?」


三人の黒騎士が少年に斬りかかった瞬間に三人は城の大窓に吹き飛んだ。


「お…おお!…勇者様すげぇ!!」

『ホントは本物の勇者様が三連パンチをしたからなんだけど……みんなは見えていなかったのかな…」

「さっさと行くぞ」


青年はそう言って城の中へ入った。そして少年は周りの戦士達に叫んだ。


「皆さん!!…ここから先は僕達が行きます!!…皆さんは兵士を倒しておいてください!!」

「分かったぜ!!」

「王は任せたぞ!!」


そう言い残すと少年も城の中へ入っていった。



……



「…いやはや…見事だな…勇者とやら」

「なんだオッサン」


青年の目の前には白い髭を生やした帝王が立っていた、帝王は青年と少年を見ながら言った。


「……勇者よ…私と一対一で勝負しろ」


そして目にも留まらぬ速さで少年に近付き、剣を突き付けた。


『ぼ…僕と勘違いしてるぅぅ!!?』

「なんてな……勇者ってのはお前の事だろう?」


帝王は青年の方を向いて言った。


「……人々はこの子供を勇者と呼んでいるが…本当はお前が…黒騎士や兵士を倒したのだろう?」

「…ああ」


帝王はニヤリと笑みを浮かべて剣を構えた。


「いざ…私と勝負してもらおう…勇者がどれほどのものか…」

『良かった……僕は何もされないようだ……』


少年がそう思った瞬間に帝王は子供の方を向いて言った。


「…私が勝てば勇者と…そのお供のお前よ命を貰うぞ」

『………嗚呼…神さま…』

「勇者様!!…絶対勝ってください!!」


少年は青年に叫んだ。青年は少年の方を向くと無表情で頷き、そして帝王と向かいあった。


「…我が名はヴァン……死ぬ前に覚えておくといい」

「俺の名前は霧島勇兎(キリシマ ユウト)…気絶する前に覚えとけ」


そしてヴァンとユウトの目が合った数秒後にヴァンは高速でユウトとの間合いを詰めた。


『おそらく今までの黒騎士や兵士とは比較にならない強さだ……勇者様でも厳しいかも……勇者様頑張って…!!」


ヴァンがユウトを斬りつけた。しかし身体は素肌にも関わらず傷一つ付いていない。


「…ほぅ……」


今度は思い切り回転しながら上空に飛び上がり、ユウトの首を狙って回転斬りをした。首に刃が当たる瞬間にユウトが思い切り剣を殴った。


「…!!」


剣が奇妙に曲がった。ヴァンは剣を捨て、もう一つの剣を抜き、振り下ろした。だが、掴まれる。


「…フンッ!!」


しかし、ヴァンは顔色一つ変えず、そのままユウトを蹴り飛ばした。しかしユウトは表情を変えず、剣も離さない。


「…ッたく…しょうがないな…………少し本気出すか」

『何かくる…!』


ヴァンは急いでユウトから距離を取った。だが、ユウトは目にも留まらぬ速さでヴァンの目の前まで迫っていた。


「はやッ…」


そして思い切り殴りかかった。拳がヴァンの頬をかすめて、壁に当たった。


「……ッ!!」


ヴァンが壁の方を向くと壁には直径が約5m程の穴が開いていた。するとヴァンは勝てないと悟ったのか、その場で崩れ落ちた。


「…勇者様……すごい…」

「メルト……いや…勇者……人々が待ってるぜ…」

「…え?」


ユウトは少年メルトにそう言い残してスタスタと穴の外へ飛び出した。メルトが困惑していると戦士達が入ってきた。


「…勇者様やったんですね!!」

「帝王が跪いているぞ!!」

「外の兵士は全員片付けたぜ!!」

「今夜は宴だ!」

「え?…ちょ…」


戦士はメルトを囲んで賞賛した。メルトは穴を見つめていた。


“……勇者…人々が待ってるぜ…”


「…あなたという人は……」


メルトは涙を流しながら穴を見つめていた。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ