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ムサシの考察




ムサシはアダンに向かって、ゆっくりと歩いていった。


「どうする?…武器を失ったイリスは…もう戦えないけど…」

「…………………」


その瞬間、アダンの持っていたイリスの剣が弾け飛んだ。


「え…ッ!?」

「……………」


剣はイリスの目の前へ、突き刺さった。聖騎士やアダンがムサシを見ると、左手に槍を持っていた。


「………太刀しか使わないと思っていたよ…!」

「……ムサシ様…槍も使うのか…!」

「だけど……右手に太刀…左手に槍なんて…随分と変わってるね…」


ムサシは不思議そうに見る聖騎士を背に、槍と太刀を構えた。


「……人魔戦争で戦った時は…そんなの使ってなかったよね……いつの間に槍なんて使うようになったの?」

「………………あの時は四人だった…だから使う必要はなかった……それだけだ…」


すると、それを見たアダンはクスリと笑った。


「…けど…今使うって事は…?」

「…………………お前が…以前よりも手強くなっていたからな…太刀だけでは手に余る…」


ムサシは槍を振ると、地面を蹴ってアダンの真上へ飛び上がった。そして、思い切り頭上へ槍を突き出した。


「うおっと!」


アダンは槍を素早く避けた。ムサシの槍は地面に突き刺さったが、ムサシはすぐに抜いた。


「………………………以前よりも速いな…」


すると聖騎士達は、槍を抜いてアダンとの間合いを詰めようとしてムサシへ尋ねた。


「ムサシ様……人魔戦争の時…アダンを倒したのですよね?……その時と同じように戦えば倒せるのでは?」

「…………ふむ…」


ムサシは、少しの沈黙の後に聖騎士達を見て言った。


「………………以前は…モンスターを封じる小瓶を使って…封印した…」

「……封魔瓶ですか?」

「…………………ああ…だが……今は持っていない…」

「…核を破壊するしかないねぇ!」


聖騎士達は武器を構えて、ムサシの目の前に立った。


「……私達が引きつけます…」

「ムサシ様は…その間に核を探すでござる!」

「……………ああ…分かった」

「よし!…それじゃあ行くよ!」


そして、聖騎士達はアダンへ向かって走っていった。


「…アダン…今回は封印じゃないでござるよ!」

「……この場で倒す!」

「へぇ…」


アダンは魔法で、聖騎士達の攻撃を回避、防御した。ムサシは少し遠くでそんなアダンをジッと見ていた。


「……………ふむ…」

『スライムは種族によって核の種類、数、大きさなどが違う。アダンの核が分かっていればすぐに破壊出来るのだが、アダンはまだ完全に解析できていない、故に核がどんなものかが分からない。だが、アダンは確かマジックスライムの希少種だ、だから核もマジックスライムに似ている筈。そうなると、核の大きさはテニスボール程、数は5〜10個だが、人間に擬態したスライムは必ず核が1つになるから今は1つだろう。それで、魔法による攻撃では破壊出来ず、物理攻撃で破壊出来たな。断定する事は出来ないが、その可能性は高い。しかし、()()アダンの事だ、簡単には核を破壊されないようにしているだろう。何より、マジックスライムとは全く違うような核かもしれない。だが、取り敢えず攻撃してみるとしよう。しない事には変わらない』


ムサシは、1秒にも満たないスピードで考え、聖騎士達の隙間から槍で、アダンの頭を思い切り突いた。


「……ムサシ…相変わらず避けづらい攻撃するねぇ…!」

「……………………」

「なんて再生速度だ…これじゃあ斬っても斬ってもキリがないな……」


しかし、ムサシの槍で空いた穴があるアダンの頭部は、瞬時に再生した。


『胸でも無く、頭でも無い。これだと、核があるのは人間の急所の位置では無さそうだな。さて、どうしたものか。核の位置が分からなければ、倒す事は出来ない』


その時、脳裏にある事がよぎり、ムサシはハッとした。


『憶測だが、試してみるか』


ムサシは太刀をしまい、槍を握ると聖騎士達へ言った。


「……………道を開けろ!」

「…なんだ!?」


聖騎士達が言われるがまま、道を開けるとムサシは槍を両手で持ち、アダンの口に向かって突き刺した。


「……アガッ…!?」

「……………核は口にあるな…?」


ムサシは槍を突き刺したまま、アダンへ魔法を放った。


「…………………【氷固(アイスロック)】…!」

「最高位の氷魔法でござるじゃないか!」

「…そのまま…我を粉々にする?……無駄だよ…忘れたの?…我は超高温も出せる…この程度…すぐに溶かせる…!」

「………………溶かすのには10秒いるだろう?…その10秒があれば十分だ」


アダンの首から下は凍った。そして、ムサシは槍を抜いた後にアダンの口を無理矢理開いた。


「……………これが核だな…」

「…ぐッ……」

「…………………人間に擬態したスライムは…核を移動させる事が出来ない」


ムサシが見ると、アダンの喉にはビー玉程の核が光っていた。


「核は…喉にあったんだね…」


すると、アダンを凍らせていた氷が溶け、アダンが攻撃してきたが、ムサシは素早くナイフを取り出して口の中へナイフを突き刺した。


「ぐ…がふ…ッ……」


アダンは、黒い液体を大量に吐き散らしながら、ムサシへ尋ねた。


「な…何故……喉だと…ッ…」

「人間に擬態したスライムは必ず核が結合して1つになる。そして、人間に擬態すると核がある位置によって使えるスライムの能力が変化する。例えると、核が腕の位置にあれば腕をスライム状に変化させ、瞬時に再生する事が出来るが、足や頭はあまり変化させる事が出来ず、再生も遅いというわけだ。そこで肝心の、何故核の位置が分かったか、それはお前が胸と頭に受けた、ダメージの再生速度の違いに気付いたからだ。胸は再生が遅かったが、頭は瞬時に再生した。という事は頭の近くにあるという事、頭の何処かで核が露出しない場所、そして俺は口にあると考えたからだ」

「え?」

「ムサシ様…無口に見えて饒舌だったのですか?」


聖騎士達は突然饒舌になったムサシを、困惑しながら見た。


「……相変わらず…どうやって勝ったかを解説する時は饒舌なんだね…」

「すいませんムサシ様…核の位置が何故分かったのか…もう少し分かりやすく…」

「………………要するに…擬態したスライムは核がある部位の再生速度が速い…だから一番再生速度の速い頭…そしてその頭の中で核が露出しない場所にあると考え…口だと分かった…」

「……最初からそう言ってよ…」


アダンは核を破壊されたからか、無気力にその場に跪いた。


「……………ぐッ…」

「……ッ…!!」


するとその時、跪くアダンの横にアリアが吹き飛んできて、そのまま倒れた。


「…ア……アリア…」

「おお!…コレ食らって意識あるなんて…やっぱ強くなってるね!…ほんのちょっとだけだけど…!」

「くッ……エミリア…!」


傷だらけのアリアは、エミリアを睨んでいた。


「……ムサシさん…そっちも終わったようだね!」

「…………………いや…核を破壊した筈だが…何故魔素にならないんだ…?」

「…分からないけど…アダンは……特別な希少種だから…核が破壊されても動けるんじゃない?」


そしてエミリア達とムサシ達は、アリアとアダンをジッと見た。














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