防衛準備
白衣の魔族は、魔王に奇妙な頭蓋骨を手渡した。
「……これは…」
「…あの子の新しいスキルの一つ……『物質と物質を合成する』というスキル…そしてそのスキルで…金属とモンスターの頭蓋骨を合成したものです…」
「…………」
魔王は頭蓋骨を机の上に置くと、白衣の魔族に尋ねた。
「……操作は難しいが…性能は高いな……」
「はい……それと…」
「…うん?」
「………この兵器の名前も…まだ決めていないなと思いまして……」
すると魔王は、少し考えた後に白衣の魔族へ言った。
「それなら…カタストロフィというのはどうだ…?」
「…カタストロフィ……良いですね…!」
「……人間共…カタストロフィによって絶望するがいい…」
窓の外からレイド大陸方面を見て、魔王は呟いた。
「………カタストロフィはメンテナンスを続けろ……リヴァイアサンは実践投入だ…」
「……分かりました…!」
『…エミリア…ミユキ……王の中で一番厄介なお前達は必ず殺してやるぞ…』
……
「……戦争…」
「…マジかよ……」
「戦争というよりかは……防衛…だね」
エリアル国の兵士達は戦争が起こるという事を聞いて、ざわめいた。
「………という事で…君達には魔族の進行を防いでほしい!……6日後までに準備しておいてくれ!」
「……マジか…」
「…防衛……ロクに戦った事のない俺たちに出来るのか…」
「………死ぬかも…」
すると、兵士達のいる会場の中へ大剣を背負った男が飛び込んできた。
「…エミリア様!」
「……あれは…」
「アーサー様だ!」
飛び込んできたのはアーサーだった、アーサーは兵士を掻き分けてエミリアへ叫んだ。
「…魔族が攻めてくると聞いたので…急いで駆けつけてきました…でござる!」
「……アーサー…確か塔の近くの道場へ弟子入りしたんだよね?…防衛に出ても大丈夫なの?」
「……師匠に話は通してありますでござる!」
「…そう…ありがとう!……君がいれば百人…いや…千人力だ!」
すると、兵士達の士気がだんだんと上がっていった。
「あのアーサー様がいれば…!」
「……俺達でも…防衛できるかも!」
エミリアは歓声を上げる兵士達を見ながら、もう一人の聖騎士へ尋ねた。
「…ザイン……アーサーのあの語尾はなんなの?」
「……分かりません」
……
アルトリアの兵舎で、聖騎士トライと兵士達は話していた。
「………まさか…また魔族と戦争する事になるとは…」
「……トライさん…あなたは魔族との戦いの経験があるけど…俺達は無い……」
「……………」
「俺達に出来るのかな……」
すると、トライは兵士の肩をポンと叩いて言った。
「……不安や迷いは…腕を鈍らせる…」
「……………」
「…魔族の国へ突撃しろ…とは言われていない……魔族の進行を防ぐだけだ…そう弱気になるな…」
「………そう…ですね…」
そしてトライは、続けてどんよりとする兵士達へ言った。
「…お前ら…一つ忘れてないか?」
「……忘れ…?」
「…なんだ…?」
「………このアルトリアには…誰がいる…?」
トライのその言葉を聞いて、兵士達はハッとした。
「そうだ……!」
「戦争という言葉を聞いて忘れてたけど…」
「…このアルトリアには……!」
その時、兵士達のいる部屋に子供が入ってきた。
「あれぇ?……みんな立ち上がってどうしたの?」
「「「リオたんがいる!!」」」
兵士達は入ってきた子供を囲んだ。
「うわ!…いきなりどうしたの!?」
『……相変わらず凄いな…アレキリオンさんの人気っぷりは……』
トライは兵士に囲まれるアレキリオンを見て、笑みを浮かべた。
「…[レイド大陸のアイドル]兼[聖騎士最強]だもんなぁ……だからか…人望が厚いな…」
……
「…防衛…か……」
「……………」
花魁のような白い着物を着た聖騎士と、左手にパペット人形を装着している黒い鎧を着た聖騎士は、陰陽連邦の城の庭にある紅葉にもたれかかっていた。
「……また…魔の者と刃を交えなければならないなんてねぇ……ジェイク…腕は落ちてないんだろうねぇ…?」
「…当たり前だ」
左手に装着しているパペット人形の口を動かして、ジェイクは言った。
「………そういうお前は…遊んでばかりだが……腕は落ちていないのか…?……カオル…」
「…試してみるかい?」
「…………試してみようか」
……
「……………そういう事で…魔族との戦争が始まる…」
「戦争とは…嘆かわしいですね…!」
「……そう言いながら…楽しみなんだろ…」
満遍の笑みを浮かべた聖騎士と鳥の被り物をしている聖騎士は、ムサシの前で正座していた。
「ムサシ様…防衛はお任せください」
「……私達が魔族を一人も通しませんよ!」
「……………頼もしいな…バラド…イリス…」
ムサシにそう言われてイリスは笑顔のまま頭を掻き、バラドは鳥の被り物を深く被った。




