カタストロフィ
「………魔王を失脚させる…!」
「…失脚させるだと?」
「うん…!」
自信満々にそう言ったミユキは、スクリーンへ魔王が自身と同じ種族である魔族を実験に使っている証拠を映し出した。
「…これは魔王と四騎士…そして一部の幹部と研究者しか知らない……そんな実験を…魔族の民へバラすとどうなるだろう…?」
「……なるほどな…」
「魔族の為に戦う魔王が…その実……魔族を実験台にしていた…という事が知れ渡れば魔王は失脚する…」
最後にミユキは、まとめを言った。
「…王達が魔族の進行を防いでいる間……僕達が魔王を失脚させる……そうすれば…戦争を終わらせる事が出来る…というわけ!」
「……だが…それだと第二…第三の魔王が誕生するのでは?…そうなればこの戦争は終わっても…人と魔族との諍いは永遠に無くならないぞ…」
「…確かに…」
「大丈夫……ちゃんと先の事は考えているからさ…!」
そう答えて、ミユキは笑みを浮かべて続けて言った。
「…考えてる…か…」
……
かつて、人魔戦争という戦争があった。魔族達は人間は魔族と違って一度殺せば二度と復活出来ないと考え[人間を殺す]という事だけに特化した兵器を作っていた。魔族は兵器の作成技術が非常に高く、数々の兵器を作り出してきた。
「この兵器で、少なくとも120人以上の人間が死傷する」
大量の対人間用兵器を使い、戦争を引き起こした。それに加え数多くの兵士、もはや魔族達の勝利は必然だった。
しかし、勝利はおろか、死者を出す事すら出来なかった。
“…絡繰如きに…余を殺せるものか…!”
“………………一太刀で事足りたか…”
“……フン…大した事ないな…見掛け倒しか……”
“はいはーい!…傷は僕が治してあげるよ!”
突如現れた四人の騎士により、魔王の軍隊は大ダメージを与えられ、撤退する事となった。
「……エミリアの暗殺は失敗したか…」
「…すまん」
魔王城で、シャルルは魔王へ暗殺失敗の報告をしていた。
「………まぁ…よかろう」
「…え?」
シャルルは、魔王が自身満々に言ったその言葉を不思議そうに聞いていた。
「………エミリアはアンタの弱みを握ってるのに…大丈夫なのか?」
「ああ…兵や民の耳に入らなければ問題無いからな……兵と民の耳に入る前に…四騎士に始末させる…」
「……兵や民に知られてはならない弱み…そろそろ教えてくれてもいいだろ…」
魔王はシャルルの方へ振り返ると言った。
「…この戦争が終われば教えよう……」
「………………分かった…」
シャルルは少しの沈黙の後にそう呟き、部屋を出ていった。するとシャルルと入れ違いで、白衣の魔族が部屋に入った。
「……魔王様…」
「…良い報告だろうな…?」
「………はい」
白衣の魔族は、笑みを浮かべてそう答えた後に扉の方へ向くと言った。
「入りなさい」
「……ほぅ…」
扉を開け、部屋に入ってきたのは一人の青年だった。
「…こちらが蛇の血で作成し…完成したクローン……名前は……」
「リヴァイアサン」
突然そう言われ、白衣の魔族は目を丸くした。
「……名前は…我が名付けろと……言うつもりだっただろう…?」
「…………少し前に開発し…投与したアビス改良型の効果…[予知]……しっかりと使えているようですね…」
「…フン……」
魔王は窓の方へ向き、白衣の魔族へと尋ねた。
「……リヴァイアサンの事も聞きたいところだが…先に……もう一つの兵器の事を聞こうか」
「…はい」
白衣の魔族は書類を見ながら答えた。
「………あの子は…ただ今メンテナンス中です……精神状態が不安定で…なかなか命令通り動かない…」
「……………」
「…しかし……メンテナンス中にいくつか新たなスキルを発現させました…」
すると白衣の魔族は、魔王に奇妙に変形した頭蓋骨を手渡した。
「……これは…」
「…あの子の新しいスキルの一つ……『雷を生み出す』というスキル…その雷は……モンスターの皮膚を燃やし尽くし…骨を変形させる程でした…」
「…………」
魔王は頭蓋骨を机の上に置くと、白衣の魔族に尋ねた。
「……操作は難しいが…性能は高いな……」
「はい……それと…」
「…うん?」
「………この兵器の名前も…まだ決めていないなと思いまして……」
すると魔王は、少し考えた後に白衣の魔族へ言った。
「それなら…カタストロフィというのはどうだ…?」
「…カタストロフィ……良いですね…!」
「……人間共…カタストロフィによって絶望するがいい…」
窓の外からレイド大陸方面を見て、魔王は呟いた。
「………カタストロフィはメンテナンスを続けろ……リヴァイアサンは実践投入だ…」
「……分かりました…!」
『…エミリア…ミユキ……王の中で一番厄介なお前達は必ず殺してやるぞ…』




