ミユキの作戦
「…お帰りなさいませ…エミリア様…」
「……ただいま!」
黒い服を着た執事が、エミリアさんにお辞儀をしながら言った。
「……その方々は…お客人…ですかな?」
「…うん!…だから早速だけどプレゼンとかする部屋に人数分の椅子と飲み物を用意してくれない?」
「かしこまりました」
執事は素早く王の間から出て行った。突然、この人数の人が現れたのに動じてないのが凄いな……
「…いきなり沢山の人と他の国の王が王座へ現れるというカオスな状況なのに…一切動じてないな……」
「……今まで散々…そんな状況になっていたからな…」
「え?」
感心する俺に、レクスさんが言った。
「エミリアは【王路】で城へと瞬間移動する時……よくペットにしたいとかなんとかで大量のモンスターを連れて城へ戻ってくるらしいからな…」
「……モンスターと!?」
「中には危険度SSもいたそうだ……だから…人が沢山連れて来ても驚かないらしい…」
「最近はしてないよ…」
エミリアさんがレクスさんにそう言った時、執事が入ってきてエミリアさんに言った。
「準備が整いました」
「…それじゃあ…そこでミユキから話を聞こうか!」
「……だな」
俺が一緒に部屋へ向かおうとすると、伍城さんに止められた。
「待て…」
「な…なんだ?」
「……まだ…【一爪】を会得してないだろう?」
「……………ア…」
そういえば……極限まで集中出来るようになったから満足して忘れてた……
「………外へ行くぞ…俺達の分まで準備してくれた執事には後で謝っておこう…」
「……ぁぁ…」
すると、ミユキさんが俺達に言った。
「…話した事は…後で言いに行くよ!」
「………嗚呼…」
……
梅岡は伍城と共に外へ向かい、その他の者達は執事にプレゼンルームへと案内された。
「……スゲ…」
「…この異世界も……俺達の世界へ近付きつつあるな……」
「マルクさん!…そこの小鳥遊達を見張っといて」
「……かしこまりました」
執事マルクは、部屋の隅で何かを呟く小鳥遊達の隣へ立った。
「…それじゃあ…ミユキのお話で〜す!」
「あーッ…あ〜〜ッ…」
マイクを渡されたミユキは、軽くマイクチェックをして話し始めた。
「……僕が話すのは…これから始まる戦争…その作戦だ!」
ミユキのその言葉を聞いて、執事は少し眉を寄せた。
「…魔王君は恐らく……弱みを持ち…恥ずかしながら王の中で最強と言われる僕を真っ先に殺したいと思っているだろう……だからシャルルに僕とエミリアの暗殺を支持した…」
「……なるほどな…」
「魔王は…エミリアとミユキさえいなければ人間に勝てると思っているのか?」
レクスが怒りの混じった声でミユキへ尋ねた。
「そうなんじゃない?」
「……フッ…………舐められたものだな…」
「…私達には戦争で勝てると思っているようだな……」
エミリア以外の王達は、とてもご立腹のようだった。
「……ま…まぁ…話を続けるね…」
「…ああ」
「………だけど失敗に終わった…だから魔王君は今……とても焦ってると思う…僕にあの弱みを握られてるからね……だから…僕とエミリアを何としてでも殺そうとしてくる筈だ」
ミユキは、スクリーンに世界地図を映し出した。そして世界地図のレイド大陸とライド大陸を繋ぐ大橋に目印を付けた。
「…ムサシさん…レクス君……君達はこのレイド大陸とライド大陸を繋ぐこの大橋で魔族を迎え撃ってほしい…」
「……ふむ…」
「…スカーレットさん…エミリア…君達はムサシさんとレクス君の目を潜り抜けた魔族を倒してほしい…」
そして、付け加えるように言った。
「ただし…倒した魔素は傷一つ付けずに回収してね…」
「魔素を?」
「うん!」
王達は疑問に思い、ミユキへと尋ねた。
「…何故…魔素を回収するんだ?」
「……調べたい事があるからさ…」
「…?……分かった…」
そして、今度は魔族の国に目印を付けて話し始めた。
「……そして…梅岡君と十郎君は僕と一緒に魔族の国へ行く…!」
「…魔族の…国…?」
「………魔王を始末しに行くのか?」
「…いや?」
ミユキは不敵な笑みを浮かべて、その場の人達へ言った。
「………内戦を作るのさ…!」
「…内戦だと?」
「うん…!」
自信満々にそう言ったミユキは、スクリーンへ魔王が自身と同じ種族である魔族を実験に使っている証拠を映し出した。
「…これは魔王と四騎士…そして一部の幹部と研究者しか知らない……そんな実験を…魔族の民へバラすとどうなるだろう…?」
「……なるほどな…」
「こんな実験をしていたなんてな…」
「魔族の為に戦う魔王が…その実……魔族を実験台にしていた…という事が知れ渡れば魔王は失脚する…」
最後にミユキは、まとめを言った。
「…王達が魔族の進行を防いでいる間……僕達が魔王を失脚させる……そうすれば…戦争を終わらせる事が出来る…というわけ!」
「……だが…それだと第二…第三の魔王が誕生するのでは?…そうなればこの戦争は終わっても…人と魔族との諍いは永遠に無くならないぞ…」
「…確かに…」
「多分……魔族はバラバラになると思うから…新しい魔王は誕生しないんじゃない?」
そう答えて、ミユキは笑みを浮かべて続けて言った。
「……まぁけど…その時はその時だよ!」
「…そこだけ適当だな……」




