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王の慟哭

レインは咳をした後に俺達に言った。

「……僕は桜郎を迎えに来た…計画の為にね…」

「…………私達が『はいそうですか』と言って渡すと思っているのか？」

「…………………渡す筈がないだろう…」

「……小鳥遊くぅ〜ん！」

その瞬間、修羅になったとされる小鳥遊達がギルドの中から出てきた。

「…小鳥遊君？」

「……お…ぉぉ…悪神…！」

「………小鳥遊君！…そこにいる桜郎を持ってきて！」

「ああ…！」

ミユキさん以外の王達は一斉に小鳥遊へ向かっていった、そして小鳥遊を取り押さえた。

「…うぐッ！！」

「……一度眠らせるか…」

「小鳥遊君…時間稼ぎありがとう！」

俺達がレインの方を向くと、桜郎はレインの手の内にあった。

「桜郎！」

「……クソ…！」

「………………不覚…」

そしてその時、桜郎は魂でも抜けたかのように倒れた。

「………桜郎…！？」

「……よし…桜郎君の魂は貰ったよ…！」

「………………貴様……」

俺は桜郎が倒れたというのに、その場を動けなかった、その時に、王達はレインを囲むように立った。

「…魂は受け取ったから帰るよ」

「……帰れると思ってるのか？」

その時に、レインは桜郎の魂を手のひらに出した。

「…………桜郎の魂……まぁ…元は僕たちの力なんだけど……」

「………………」

「それを取り込んで…完全な力を取り戻し…僕達を殺そうとする王達を逆に殺す！」

「完全な力を取り戻そうが…必ず殺すよ！……切り札があるからね！」

そして、レインは魂を握ると王達へ言った。

「……しかし…ミノル君にも言ったけど……魂を取り込んで力を取り戻すのはやめた」

「…なに？」

「………だって…災神さんのおかげで前よりも強力な力を手に入れたから…その必要は無くなったし……計画に使わなければならないからね！」

困惑する王達に、レインは笑顔で話し始めた。

「…計画の事を少し話すと…僕達の失われた力が必要だ」

「……【オリジン】か…」

「そう！…それ！」

オリジン、確かユウトさんが神を倒した際に神から剥がれ落ちた神の力だったような。その神ってのは悪神レインだったんだな。

「…【オリジン】というのは一度触れた事のある生物を生み出す能力があった……だけどそれはあの男にやられて失われた…」

「……今はソフィア村だったか？…その近くの山へあるらしいな…」

「そう………【オリジン】はその村の近くの山へ落ちてしまった……取りに行ったけど…色々あって取り込む事が出来なかった……このままでは計画が実行できない…」

レインは落ち込みながら話した、そして突然笑顔になると言った。

「だけど！…桜郎君の魂が【オリジン】になりつつある事が分かったんだ！！…だから桜郎君を捕まえれば計画を実行出来る！」

「……残念だが…実行は無理だ」

王達は武器を構えて、レインに言った。

「…お前はここで死ぬからな」

「殺しちゃ駄目でしょ！…ホワイトの元へ生きたまま連れて行かないと！」

しかしレインは余裕の表情を浮かべていた。

「……元の世界へ帰りたいんでしょ？…なら僕を殺さないと帰れないよ！」

「………………では斬ろう…」

するとムサシさんが刀を振り上げた、エミリアさんが止めようとするもムサシさんは刀を振り上げたままだ。

「あ！…駄目だって！」

「…あ〜……厄介な能力を手に入れたね…レイン君…」

「……え？」

ムサシさんはレインの頭の上から刀を振り下ろした。しかし、刀はすり抜けて地面を斬った。

「……………なッ…」

「…どういう事だ……」

［……レインと同じ力を持たない者の攻撃は…無効化される…］

「アンタは！？」

レインの横には、半透明な男にも女にも見える中性的な容姿の人が立っていた。

「オリジンか…」

［久しぶりだね…父さん］

「え！？…どゆこと！？」

［詳しい事は後で話すよ…人の子よ］

そのオリジンとやらは、レインの方を向いた。

「…君が僕達を受け入れていれば…桜郎君の魂を奪わなくても良かったのに…」

［……私が君の仲間になってたら…八咫烏以外…君を止められなくなっちゃうからだよ］

「…………まぁ…そうだね…」

するとレインは自分の背後へワームホールのようなものを創り出した。

「…そろそろ時間だ……僕は御暇(おいとま)するよ！」

「……くッ…」

俺達はレインに攻撃する事が出来なかったので、ただただ見送る事しか出来なかった。

「………じゃあね！」

「首洗って待っていろ…必ず殺してやる…」

「あ！…言い忘れた！」

レインはワームホールに入る前に王達の方を見て言った。

「…僕達の計画を止めようとしたり……殺そうとするのはいいけど………魔族に気を付けた方がいいよ！」

「……魔族？」

「うん！…魔族達は今……とてもハイになってるからさ！」

そう言い残し、レインは姿を消した。スカーレットさんは地面に思い切り剣を突き刺すと、悔しそうに言った。

「クソ…何という失態だ……私達は…もうヤツを殺す事が出来ないのか…ッ…」

［まぁ…一旦ギルドへ戻ろう……私が君達に悪神レイン達の倒し方を教えるからさ］

「倒し方だと…！？」