午後の悪神
トップランカー達がボロボロの身体で起き上がろうとしたので俺は急いで止めた。
「……そういうお前も…大怪我してるだろ…」
「………俺は大丈夫だ…アンタらよりかは傷の具合がマシだからな…!」
『強がってはいるけど……ダメージはトップランカー君達と同じくらいだね…アレだと絶対に倒れちゃうだろうなぁ…』
すると、ミユキさんがトップランカー達に近付いていった。
「……【グランドヒール】…」
「うお…お…ッ!?」
「その回復魔法は…ッ!?」
ミユキさんがトップランカー達に触れるとあっという間に傷が塞がっていった。回復魔法か!?
「………こんな高度な回復魔法まで使えるのか…ッ…」
「……ごめん!…君達を回復させるの忘れてた…!」
そして回復させると、トップランカー達に毛布をかけた。するとトップランカー達が声を漏らしていた。
「…聞いては…いたが……ここまで…気持ちいいとは…な…」
「……【グランドヒール】で回復すると…少しの間…快楽のせいでしばらく動けなくなる……」
「………しばらく動けなくなる…か…」
するとミユキさんは、今度は俺の身体に触れてきた。
「…【グランドヒール】は…あの子達みたいに骨折と出血してる人向けなんだ……だけど君は骨折だけで出血はしてないから……【骨の傀儡】でいいか…」
その瞬間、身体中の骨が動く感触がした。そして数秒後に俺の骨折は完全に治っていた。
「……うぉお…動く!!」
「本来は死者の骨を操って傀儡にする魔法だけど…骨折を治すのにも使える」
「…へぇ……」
ミユキさんは包丁を抜くと、入り口へと歩いていった。
「それじゃあ音を…調べに行こうか…!」
「…ああ!」
俺は十郎、ミユキさん、伍城さん、桜郎の五人で、音のした方向へと歩いていった。そして外へ出て、少し歩くと人影が見えた。
「………お主…!!」
「……知ってるのか…!?」
人影の正体は、昔の学生服を着た子供だった。その子供を桜郎は睨んでいる。
「………此奴が…悪神だ…」
「…このガキが!?」
「……ああ…」
俺達の前に立つ子供が、どうやら悪神らしい。すると悪神は笑みを浮かべて答えた。
「…桜郎の言う通り…僕は悪神…名はレイン…」
「…………確か…コイツを再起不能にするんだよな…?」
「…はい」
確認した後に、俺はレインの元へ歩いていった。
「………悪いが…少し寝ててもらうぜ…!」
「まぁ…落ち着きなよアンちゃん…!」
その時、俺は得体の知れない何かを感じ取り、反射的にレイン差し出した腕から離れていた。
「……チッ…おしいなぁ…」
「なんだ…」
「…それで?……何の用かな?」
ミユキさんがレインに尋ねた、すると、レインはミユキさんを見て答えた。
「……迎えに来たんだよ…桜郎を…」
「…そうか……だが…それは無理だ」
背後から声が聞こえた、俺達が振り返るとそこにはレクスが立っていた。
「レ…レクスさん!?」
「……会うのはこれで何度目かだな…」
「僕もいるよ!」
レインと一緒に、エミリアさんも歩いてきていた。
「エミリアさん!?」
「…やぁエミリア!……ちゃんと王として振る舞ってる?」
「うん!…君の言う通り……王として生活してるよ!」
そして、レインの後ろからスカーレットさんが歩いてきた。
「…………………斬る…」
「ムサシさんも…!?……え!?…何で……てかどうやって…」
「質問が多いな…」
すると、スカーレットさんが困惑する俺に答えた。
「そこのミユキからメールが届いたんだ…[悪神が僕の前に現れた]とな…」
「……メールを受け取ったのか…じゃあどうやってここに……瞬間移動?」
「…王は王の元へ瞬間移動出来る魔法を持っている……それでここに来たんだ……まぁ…似たようなものだな…」
スカーレットさんが説明した後にレインが俺達に尋ねた。
「…喋ってもいいかな?」
「ああ」
レインは咳をした後に俺達に言った。
「……僕は桜郎を迎えに来た…計画の為にね…」
「………私達が『はいそうですか』と言って渡すと思っているのか?」
「…………………渡す筈がないだろう…」
「……小鳥遊くぅ〜ん!」
その瞬間、修羅になったとされる小鳥遊達がギルドの中から出てきた。
「…小鳥遊君?」
「……お…ぉぉ…悪神…!」
「………小鳥遊君!…そこにいる桜郎を持ってきて!」
「ああ…!」
ミユキさん以外の王達は一斉に小鳥遊へ向かっていった、そして小鳥遊を取り押さえた。
「…うぐッ!!」
「……一度眠らせるか…」
「小鳥遊君…時間稼ぎありがとう!」
俺達がレインの方を向くと、桜郎はレインの手の内にあった。
「桜郎!」
「……クソ…!」
「………………不覚…」




