青年と少年
「……旅もここで終わりだな」
「あ!…あの人は黒騎士の一人のガランだ!…帝国の騎士の一部しかなれないとされてる!」
「あっそ……」
帝国へ向かう青年と少年の目の前に黒い鎧を着た男が立ちはだかった。少年は怯え、青年の後ろへ隠れるが、青年は欠伸をしながら腕を伸ばした。
「黒騎士の私を見て怯え…命乞いをするどころか欠伸をするとは…随分と舐められたものだ…」
「だってお前…話長いし…」
ガランが斬りかかった瞬間に青年は剣を欠伸しながら掴んだ。そして思い切り捻ってへし折った。
「…ふわぁ……」
「なッ!?」
「通るよ」
そして軽くガランを殴った。ガランは吹っ飛んで岩にぶつかり、気絶した。
「つよ……」
「ふわぁ……」
「あ!…待って下さいよぉ!」
青年は帝国の黒騎士を一発で倒し、再び歩きだした。気絶しているガランを見ていた少年も急いで追いかけた。
……
「……ガランが…倒されました……」
気絶しているガランを立体映像で見ている者がいた。帝王は王座でそれを見て囁くように言った。
「………私を失望させたいのならお前は既に達成している」
「い……いえ!…そんなつもりは……」
「…帝国の誇る黒騎士が…10歳にも満たない子供に負けた……いい笑いものだ」
兵士はガタガタと震え、汗が滝のように流れている。そんな兵士を睨み、帝王は呟いた。
「これ以上失望させるな」
「は…はい!!」
……
「…おい!……あれって!」
「ああ!…勇者様だ!!」
ある村に着いた時、村人達が青年と少年を見ると走ってきた。
「…帝国の兵士を倒しまくってるらしいな!」
「帝国をぶっ潰してくれ!!」
「勇者様がいると思うと渦なんて怖くないぜ!」
「あ……あの……皆さんの言ってる人って…」
村人達は少年を囲って讃えている。少年は申し訳なさそうに青年の方を向いた。
「……アンタも勇者様の仲間なのか?」
「…………まぁ…」
「勇者様と一緒に戦えるって…羨ましいねぇ…」
村に住む狩人が青年に言った。
「いや、その人が…」
「応援してるよ!!」
青年と少年は村人達に見送られながら、村を後にした。すると歩く青年に少年が言った。
「…あの…すいません……」
「……何が?」
「………褒められ、讃えられるのは勇者様の方なのに…これだと僕が勇者様の手柄を奪ったみたいで……」
少年が涙目で言うと青年はため息を吐いて少年の頭を撫でながら言った。
「……俺がそんなつまらん事で怒るとでも思っていたのか?」
「…え?」
困惑する少年に青年は言った。
「別になんとも思ってねぇよ…勇者とかどうでもいいし」
「…………」
「行くか」
『…勇者様……あなたは……』
青年は再び歩き始めた、少しその場で立ち止まっていた少年は青年に向かって走っていった。
「帝国まで残り5km程か…」
「もう少しですね!」
「いきなりハイテンションになって…気味の悪い奴だな…」
青年が歩いていると目の前に突然、何かが落下した。砂煙の中からロボットが出てきた。そして青年と少年の方を見た。
「……貴様らが帝国に刃向かう勇者御一行か!」
「…なんだよ…お前…」
「俺は黒騎士のライド!…ガランとは比べない方がいいぜ?」
「…ライド……帝国の黒騎士の一人で黒騎士の中でも有数の実力者です!」
ライドが青年と少年に大砲のような右腕を構えた、すると青年が大砲の前へ立って言った。
「はぁ…ったく……しょうがないな…」
「…あ?」
その瞬間に青年がライドの懐へ飛び込んだ。ライドは一瞬驚いたが、すぐに剣のような形状の左腕を青年に叩きつけた。
「脆いな…」
「……な…に……!?」
左腕は肘から先が無くなっていた。そしていつのまにか目の前に青年の姿は無かった。ライドが混乱すると上の方から声が聞こえた。
「…お前…強いんだろ?……そのくせにそんなもんに頼るのか?」
そしてロボットの頭を殴り続けた。頭に拳がめり込み、貫通した。
「…ッ!!…バケモノめ!!」
ロボットの背中からライドが飛び出した。青年がすぐさま振り向くと手にはスイッチを持っている。
「…あばよ!ビースト!!」
その瞬間にロボットは爆破し、破片が辺りに飛び散った。
「勇者様!!」
少年が叫ぶが、目の前は炎に包まれている。その中からライドが出てきた。
「…くく……残りはお前だけだ!…勇者!!」
「……うう…」
『僕が…僕がやらないと!』
少年は懐から短剣を取り出してライドに向かって走っていった。だが、蹴りを食らって吹っ飛んだ。
「…はぁ…?……勇者ってのはこんなに弱いのか?」
「く……うぐ……」
「…まぁいい…トドメだ」
ライドが少年の頭に向かって足を振り上げ、かかとを落とした。




