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伝説の始まり




「なぁ……どこに向かってんの?」


辺りは山々が連なっている。俺たちは凸凹の道を歩いていた。


「…この道ってさ……ギルドから遠回りじゃねぇか?」

「ギルドより先に行きたい場所があるので」

「どこそれ?」


俺が前を歩く十郎に尋ねると十郎は目の前を指差した。


「あの村です」

「え?…あの村…?」

「はい」


目の前には光が溢れていた…村か?……村に見えないが…


「…なんで?」

「実はですね、ホワイトさんにレクスさんから聞いた悪神の手がかりを話す代わりに良い事を教えてくれたのです」

「……それは…」

「とある昔話なんですけど……」



……



花が咲き乱れる春頃にある青年が……今僕たちのいるこの異世界と同じような異世界に来ていた。その異世界はカイノ大陸という一つだけ大陸がある世界だった。


そしてその世界には闇が渦巻いており、ホワイトさんはそれを懸念してその青年を異世界に送ったのだった。


「……闇の渦を取り除けばいいのか……それで取り除くには何をすればいいんだ?」

「この世界を支配しようと企む帝国のオルンが闇を発生させたから……」

「オルンとやらをぶっ潰せばいいんだな?」

「そういうこと!」


青年はオルンのある方角へ向かって歩いていった。道中にある町や村の人々は皆、絶望していた。


「もう世界は終わりだ」

「闇が世界を覆い尽くせば……」


帝国へ向かい、世界を救おうとする戦士も皆、心が折れていた。それはもはや自分たちでどうにかなる話では無かったからだ。


「誰も止められない……」

「……もう駄目だ」


最初は人々も帝国に反抗した。しかし帝国の圧倒的な軍事力の前では一流の戦士でさえ歯が立たなかったからだ。


「…まだ帝国に逆らう人間がいたとはな」

「なんだ?…奇妙な格好しやがって」

「お前ら邪魔」


青年は道中で現れる最新鋭の装備をし、一流の戦士よりも訓練された帝国兵を素手で軽々と倒した。だが、そんな事が帝国に知られないわけが無い。


「……カイノ大陸方面で兵士が次々と倒されているようです…」

「フンッ……何者かは知らんが…まだ愚かな者がいたようだな…計画はもうすぐ大詰めだ、それまでに始末しろ」


[帝国に立ち向かっている戦士がいる]その噂はカイノ大陸中に知れ渡った。


「…勇者様だ……」

「勇者が来てくれたんだ…!」


次第に人々の抱える絶望は希望へ変わってゆき、少しずつではあるが世界は昔のように活気付きだした。


「…あ…あの!」

「あ?」

「僕をお供にさせてください!」

「勝手にどうぞ」


青年の闇殺しの旅に同行を祈願する少年が現れた。少年は泣き虫の臆病者だった、だからこそ、たった一人で勇敢に巨悪に立ち向かう青年に憧れたのだ。そうして青年と少年は帝国へ目指して歩いていった。



……



「…続きは?」

「歩きながら話して疲れたので村で休みます」

「……結局その話と村に行く事がどう関係するのか分からずじまいかよ」


空はいつのまにか暗くなってきている。


「…続きは村でホワイトさんが話してくれますよ、ホワイトさんも村にいるらしいので」


ホワイトも村にいるらしい。一体、青年とあの村がどう関係があるんだ?……俺は考えながら村へ歩いていった。



……



目指していた村、ソフィア村へ入ると、結構発展している、村ってよりは街だな。空が暗いせいか明かりがとても綺麗だ。そして俺たちが宿を探していると目の前でフードを着た大柄な男が叫んだ。


「来たようだね!…コンビ!」

「コンビって……言い方…」

「ホワイトさん!」


ホワイトが俺たちの目の前へ歩いてきた。


「…宿ってどこ?」

「宿はねぇ…あそこだよ!」


ホワイトが指差した方には大きなホテルがあった。何が村だよ!…思いっきり街じゃねぇか!


「…ソフィア村じゃなくてソフィア()だな……なんで村なんだよ」

「…まぁまぁ……十郎君はどこまで話したの?」

「青年と少年が会った所までです」

「分かった!…宿でその続きを話すよ!……この話を聞いたら梅岡君もこの村に来て良かったと思うよ!」

「……マジかよ…」


俺たちは宿(ホテル)へ向かって歩いていった。



……



「…おお」


中はシャンデリアがぶら下がっており、壁には豪華な装飾がされている。


「…すげぇ……」

「梅岡さん、チェックインしましたよ!」


俺たちは早速部屋へ向かった。そして扉を開けるとフカフカのベッドが二つあった。


「…うおお……久々のベッドだ!!」

「最近は野宿続きでしたからね」

「けど…ベッド二つしかないぞ?」

「大丈夫!…僕は寝なくても平気だから!……それじゃあ…続き話そうか?」


俺と十郎はベッドに座った。そしてホワイトが、夜の空を背にして語り始めた。さっきまで綺麗に輝いていた村の明かりは、今は妖しく煌めいていた。













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