午後6時の絶望
「………トップランカー達が外へ出てから…もう何分だ…」
ギルドの中には、待機命令の出たギルド戦士達がいた。すると、突然アナウンスが流れた。
[……このモンスターを…危険度SSS以上と判断する!……よって…人的被害を避けるため…トップランカー以外の戦士は至急避難せよ!]
「…危険度SSS以上だと…!?」
「は…早く逃げよう!!」
ギルド戦士達は、慌てた様子でギルドの地下へある緊急脱出用トンネルへ向かって走っていった。
「……小鳥遊…」
「アリス!…アンタはどうするんだ…!?」
「…行くよ……トップランカーとして…小鳥遊の友として…危険度SSS以上モンスター討伐の助太刀にね…!」
アリスは武器を持って、ギルドの出口へ向かって走っていった。
……
「……俺の危険度がSSS以上?…俺は危険度では表せねぇ…神だ…」
「神とは…大きく出たな」
小鳥遊以外のトラベラーが、ミノルへゆっくりと近付いた。
「…その傲慢な口を……チャックしてやるよ…」
「……そんな漫画の主人公みたいなセリフを吐くなよ……」
ミノルは自身の周りにいるトラベラー達を見ながら言った。
「弱い奴が…強い奴のセリフを言うもんじゃない……強い奴のセリフを吐いていいのは…強い奴だけだ」
その瞬間、ミノルは姿を消した。そしていつのまにか阿笠の背後に立っていた。
「……なッ…!?」
『見えなかった…ッ』
「強くなってから…そのセリフを吐くんだな」
ミノルは阿笠に殴りかかった、しかし、ミノルは地面を殴っていた。
「危なかったな」
「……今日は助けられてばかりだ」
真風が阿笠にタックルをして、守っていたのだ。ミノルは拳を地面から抜いて二人の方を見た。
「フン…弱い奴同士の助け合いか……」
「…なんとでも言え」
その時ミノルの背後へ佐々木の放った複数の弓矢と同時に、小鳥遊が斬りかかった。
「……おせぇな…」
「ああ…遅くて結構」
小鳥遊がミノルの背後を見ると、ミノルはハッとして振り返った。すると、空中に球体型の雷が渦巻いていた。
「……僕と佐々木に注意がそれた…その一瞬が欲しかったからね…!」
「クソが」
トラベラー達は、神の雷球がミノルへ触れる直前にすぐさま離れた。
「小鳥遊!」
「…アリス!」
雷がミノルの立っていた場所へ渦巻いていた時に、ギルドの中からアリスが出てきた。
「……モンスターは…」
「…見ての通り……討伐し…」
小鳥遊がアリスへ討伐した事を言おうとした刹那、雷を纏ったミノルが雷球の中から歩いてきた。
「………嘘…」
「……マ…ッ……マジかよ…」
ミノルは身体に帯電した雷を払うと、トップランカー達に言った。
「…ここで俺が死ねばハッピーエンドだったな…トラベラー共」
「……くッ…」
「…だが……ダメージは大きい筈だ…」
真風のその言葉を聞いて、ミノルは嘲笑うかのように言った。
「……ダメージは大きい…?」
その瞬間、真風は引っ張られるようにギルドの方向へ吹き飛んでいった。
「ま…真風!!」
「…一つだけ言おう………お前らの攻撃は全て……0ダメージだ」
「な…に…?」
ミノルは絶句する小鳥遊の目の前へ歩いていって言った。
「……驚いたぜ…まさかギルドの最終兵器で…!」
「うぐッ!?」
「小鳥遊!!」
小鳥遊の髪の毛を掴んで、ミノルは腹に思い切り膝蹴りをした。
「スキル持ちで…!!」
「ぐが…ぁ……ッ…」
「…やめろぉ!!」
「この悪趣味野郎がァ!!」
ミノルは剣で斬りかかってきたトップランカー達を、左腕で薙ぎ払った。するとトップランカー達は、竜巻にでも巻き込まれたように吹き飛んでいった。
「うぉぉ!?」
「な…なんて力…ッ…」
トップランカー達が吹き飛んだのを確認して、ミノルは小鳥遊を思い切り殴り飛ばした。
「……ぐぉああ…ッ!!」
「魔法にも恵まれた天才が…!……まさかこの程度だったなんてな…」
ミノルが吹き飛んだ小鳥遊に近付こうとすると、ボロボロのトップランカー達がミノルを掴んだ。
「…や……やめ…ろ…」
「た…小鳥遊!……逃げろ!!」
「うお!!」
弱い力で掴んでいるトップランカー達を振り払うと、その場で倒れている全員にミノルは言った。
「……そんなクセェ事はしなくていいんだよ」
「…ッ……」
「10秒以内に立て……立って俺と戦え…!」
「な…んだと…?」
ミノルは溜息をつくと、トップランカー達へ続けて言った。
「……立てないのなら…この女を殺す」
「や…やめろ!!」
倒れているアリスの肩に手を乗せてミノルは言った。すると、小鳥遊は身体中から血を吹き出しながらフラフラと立ち上がった。
「た…小鳥遊…」
すると他のトップランカー達も、立ち始めた。
「……さ…さっきは…どうも…」
「………う…梅岡君…!?」
ボロボロのトップランカーの間から、フラフラと梅岡が歩いてきた。




