午後5時50分の考察
「う…うおおおおおおッ!!!」
銃声とともに、ミユキは大きく仰け反った。顔は上を向いており、煙が上がっている。
「へ…へへ……へへへ!……舐めやがって!!…なんだよ!…か……簡単に仕留められたじゃねぇか!!」
銃を持つ男はその場で涙、汗を流しながら歓喜した。
「……や…やったのか…!?」
他の白フードの男達は仰け反ったミユキを見ながら呟いた。
「…あの至近距離で撃ったんだ!……死んでない筈が…」
「じゃあさ……アイツ…何故倒れないんだ…?」
ミユキは仰け反ったまま、その場に立っている。
「………ッ!?」
その時、銃を持つ白フードの男は驚きのあまり銃を落とした。
「…バ……バケモノ…」
ミユキが仰け反った状態から体を起こすと、弾丸はミユキの舌の上へあった。
そして、ミユキは口の中にある弾丸を、白フードの男の目の前へ吹き出した。
「……うおッ!!」
ミユキの吹き出した弾丸は床にめり込んでいた、白フードの男はその場にへたり込んだ。
「…再現度は高いね……だけど…この世界に銃は合わないよ…!」
「………ッ…」
白フードの男達はもはや言葉も発せず、ただただ怯えながらミユキを見ていた。
ミユキは男達が戦意喪失しているのを見てゆっくりと近付き、腰が抜けた男の目の前で屈み、優しく尋ねた。
「君達は…何故僕を襲ったのかな…?……君達の口から聞こうか」
「………お…俺達は…個人的な怨みで…お前を襲っ…」
「ウソつき」
「…は……」
するとミユキは男の頭を掴み、改めて尋ねた。
「……君達は何故…僕を襲ったの?」
「魔王様の命令です」
『…なんだ…口が勝手に…ッ!?』
男は何故襲ったのかという、ミユキの質問に対して正直に、嘘偽りなく答えた。ミユキは手を離すと、少し考えた。
『魔王は僕が実験を脅しに説得したから、僕達が生きてる間は戦争という選択が出来ない。だから実験の事を知ってる僕達、王を暗殺して戦争を仕掛ける。王を殺せば実験の事は魔族の民には知られずに済むから堂々と戦争をする事ができるからね』
そして、考えた後に再び男の頭に手を乗せて尋ねた。
『答え合わせといこう』
「………魔王は何をしようとしてるの…?」
「人間の王達を殺して実験の事を闇に葬り去り、その後に人魔戦争を起こして手中に収められなかったレイド大陸を、手中に収めようとしています」
「……なるほど…まぁだろうね」
ミユキは手を離して、男にデコピンをした。すると男は大きく仰け反って気絶した。
「…だとしても…おかしいな…」
『エミリアから悪神殺しをしていても魔王軍がまた戦争仕掛けてきそうで邪魔だったから…魔族との三度目の戦争である人魔戦争で圧倒的実力差を見せて二度と攻めてこないよう…精神をズタズタにしたと聞いたのに…………そういえば……最近はゴタゴタしてて王達と会議してないなぁ…』
その時、ミユキは[王達と会議]という単語を思い浮かべて、魔王と悪神の会話を思い出した。
……
[…悪神とやら……我に何用か…]
[お前にあるものを渡しに来た]
悪神はポケットから蠢く闇のような炎を取り出した、炎は不気味に揺れている。
[これは…]
[俺の力の一部……お前は人間を恨んでいるようだな………俺の言いたい事は分かるか?]
[…その力をやるから人間を根絶やしにしてこいと…?]
[分かってるのなら話は早いな]
魔王は差し出された炎を受け取った。その瞬間に魔王の雰囲気が変わった。人に近かった姿も、もはや完全な化け物になった。
[…うおお…身体に力が流れ込んでくる…]
[だろ?……これなら人間に勝てるよな?…まだ沢山あるし]
[……ふふ…何故そのようなものを我等に渡すのかは知らぬが…感謝するぞ…]
……
『…何故魔王の…人間に対する闘争心が突然膨れ上がったか……それはもしかしたら…アビスの効力かもしれない…』
「……アビスを手に入れて調べる必要があるな…」
考えているミユキに、白フードの男達が襲いかかってきた。ミユキは考えながら、眉一つ動かさずに男達を当身で気絶させた。
『………さて…この事はエミリアを通して王達へ報告して……十郎君の所へ戻ろうか…!』
ミユキが上の階へ続く階段に近付いた瞬間、ミユキは背後に気配を感じて振り返らずに言った。
「会うのは二度目か…いや…君の場合は初めましてかな…?」
「…だな」
そこには悪神が立っていた、ミユキは悪神の方を振り向くと笑顔で尋ねた。
「…何か用?……殺されにでも来たの?」
「いや…殺されに来たわけでも……殺しに来たわけでもない」
悪神は掌にアビスを生み出してミユキへ言った。
「単刀直入に言おう…………俺達の仲間にならないか?」
「………そう来たかぁ…」




