午後5時50分の小鳥遊
トラベラー達の脳内がほんの少し絶望に包まれた時、その絶望を消し去るように小鳥遊が叫んだ。
「みんな！！…俺達はこのモンスター討伐を専門…生業とするギルドの精鋭だ！……何を怖じける！！」
「……小鳥遊…」
「モンスターなんて…数えるのも嫌になる程仕留めてきただろう……少し強いだけで今回も一緒だ！！」
「あ…ああ……そうだよな…！」
「そうだ…いつものことだ…！」
ギルドのトップランカー達の目に、光が見え始めていた。
「よし！！…やるぞ！！」
「「「おお！！」」」
「フン…」
ミノルはそんなトラベラー達を見て、腕を組みながら嘲笑うかのように失笑した。
「……何が可笑しい…？」
「…小鳥遊という絶対的強者に縋ることしか出来ないお前らを見ていると……とても滑稽でな…」
「………テメェ…」
そして組んでいた腕をほどき、トラベラー達へ恐怖を植え付けるように言った。
「…まぁ……小鳥遊も…俺にとっては弱者だがな…！」
「……不思議なもんだな…」
その時、阿笠がトラベラー達やミノルに聞こえるように呟いた。
「小鳥遊の言葉を聞いたからかな…お前に対して恐怖を感じない……感じるのは……憐れみだけだ…」
「……阿笠…」
すると小鳥遊が阿笠に続いて、ミノルへ言った。
「…僕から見れば……世界の破壊に執着するお前の方が……見ていて滑稽だよ…」
「………ギルドのリーダーは…大きいんだな……態度が」
「大きいのは…器だけさ…！」
「…自分で言うなよ……」
そして、ミノルは構えてトラベラー達へ言い放った。
「お喋りは終わりだ……そろそろお前らを破壊しよう…」
「……やれるものならな…」
その時、先陣切ったのは阿笠だった。阿笠は【神雷】を剣に付与して斬りかかった。
「………フンッ！」
「……チッ…神の雷か……」
ミノルはその雷の斬撃を避けてカウンターを仕掛けたが、小鳥遊の突きを食らって怯んだ。
「……助かる…」
「佐々木のおかげさ…」
「…えへへ……」
小鳥遊は佐々木を見ながら阿笠へ言った、佐々木は少し照れている。
「………佐々木…お前のスキルは【神眼】だったな……確か…未来予知…」
「………そうだけど…？」
「…それで俺の攻撃を読むか……」
ミノルは、小鳥遊に突かれた顔を手で押さえながら呟いた。そして、顔から手を離すと言った。
「………今…未来予知してみろ……」
「…………ッ…！？」
「……それがお前らの未来だ…」
佐々木は顔が青ざめて、震えだした。トラベラー達は佐々木を揺さぶって問いただした。
「おい！…何が見えたんだ！？」
「…………血だ…沢山の……」
「……ッ…」
トラベラー達の顔にも不安が出てきた、すると小鳥遊はトラベラー達へ言った。
「俺達の血だとは限らないよ…もしかしたら……あのモンスターのかもしれないじゃないか！」
「……た…確かに…」
「小鳥遊……お前がそうやって主人公ぶって味方を励ましているから…コイツらは俺にやられたんだ」
ミノルは倒れている佐川や三宅を足で踏みつけて言った。
「……お前…！」
「小鳥遊…お前が綺麗事を並べてコイツらを嗾すから……コイツらはありもしない希望を抱いて死んでいくんだ…コイツらを殺したのはお前だ」
「………小鳥遊…耳を傾けるな」
一筋の汗を流す小鳥遊に、トラベラー達は言った。
「アイツらがやられたのは…お前のせいではない」
「…………」
「…そんな顔するなよ！…お前は俺達のリーダーなんだからさ！」
真風が笑顔で、小鳥遊の頭を叩いて言った。
「………すまない…そして……ありがとう…」
「…おし！…それじゃあ行くぞ！」
小鳥遊を勇気付けて、トラベラー達は一斉にミノルを見て構えた。そして、小鳥遊は無線を持って言った。
「……このモンスターを…危険度SSS以上と判断する！……よって…人的被害を避けるため…トップランカー以外の戦士は至急避難せよ！」
……
「………トップランカー達が外へ出てから…もう何分だ…」
ギルドの中には、待機命令の出たギルド戦士達がいた。すると、突然アナウンスが流れた。
［……このモンスターを…危険度SSS以上と判断する！……よって…人的被害を避けるため…トップランカー以外の戦士は至急避難せよ！］
「…危険度SSS以上だと…！？」
「は…早く逃げよう！！」
ギルド戦士達は、慌てた様子でギルドの地下へある緊急脱出用トンネルへ向かって走っていった。
「……小鳥遊…」
「アリス！…アンタはどうするんだ…！？」
「…行くよ……トップランカーとして…小鳥遊の友として…危険度SSS以上モンスター討伐の助太刀にね…！」
アリスは武器を持って、ギルドの出口へ向かって走っていった。
