午後5時30分の襲撃
「…あー……こりゃダメだ…」
悪神は溜息をついて、ミノルの前から消えた。
「……悪神…お前も後で破壊してやる……それよりも先に…ギルドだ…」
ミノルは、ギルドの方角へ向くと、ゆっくりと歩いていった。
……
『…限りなく近いんだがなぁ……』
俺は森を抜けて、ギルドへ戻りながら考えていた。
『狐との戦闘で…俺は99.999%集中できた…しかしそれは…極限ではない……だが…あともう少しで極限の集中を掴めそうな気がする…』
狐との戦闘で俺は限りなく極限に近い程、集中していた。あと少しで…極限を手にする事が出来そうだ……
『それにしても…なんだか寒気がするな……風邪引いたか…?』
俺が歩いているギルドへの道には、風が強く吹いており、空は曇りだ。
『……早く帰ろう…』
雨が降ってきては困るので、俺は急ぎ足でギルドへ向かった。その時、赤い平原にある黒いモンスターに目が溜まった。
『…なんだあれは…』
俺は立ち止まって見ていた、するとその黒いモンスターをギルド戦士達が囲んだ。その瞬間……
「ぐぉ!!」
「がぁぁあ!!」
「うおッ!?」
黒いモンスターによって、ギルド戦士達はまとめてやられた。クソ、どうやら強力なモンスターが攻めてきたようだ。俺も助太刀しないと!
「……うおお!!」
俺は黒いモンスターに向かって走っていき、飛び上がって殴りかかった。
「…俺の邪魔をするな…!」
「……ッ!…なにッ!?」
一瞬、躊躇して殴れなかった。そして俺は、腹を思い切り殴られて吹き飛んだ。
「ぐッぼッ!!」
吹き飛ばされて、木にぶつかった。だが、その痛みよりも殴られた痛みの方が強かった。
「………アンタ!!」
俺はギルドへ歩いていく黒いモンスターに向かって叫んだ。黒いモンスターは立ち止まらない。
「…アンタ……ミノル…さんか!?」
すると黒いモンスターはピタリと止まった、そして俺の方を向くと答えた。
「だとすればどうした…?」
「……何故…こんな事を……それに…その姿は…!?」
「…どうやら……俺の魔法…【オーバー】が暴走したらしい…だからこのような姿になったようだ…」
不気味で、禍々しくて、邪悪な声でミノルさんは言った。
「………ギルドを…どうするつもりだ…!?」
「消す…その後はこの世界を消す」
「…なに…」
すると突然、ミノルさんは首を傾げた。その数秒後にハッとして、慌てた様子で俺に近付いてくると肩を掴んできた。
「……梅岡…どうにかしてこの異世界から出ろ……じゃないと…俺に……ッ!!」
「…!?」
「う蛾ぁあ亜阿亞婀ぁあ!!」
ミノルさんは突然頭を抑えて苦しみだした。一体どうなってるんだ!?
「ミノルさん!」
「…鬨ルァァァあああ!!」
そして、ギルドの方角へ走っていった。ギルドを消す、という事はギルドを壊し、ギルド戦士達を皆殺しにするという事か!?
「……させねぇ…!!」
俺は力を振り絞って立ち上がり、ミノルさんの後を追っていこうとした。しかし……
「…ぐッ……」
だが、さっきの攻撃のせいか身体が動かせない。俺は少しずつ歩いていった。
……
「……なんだ…このモンスターは…」
「…悪魔……」
ギルドの入り口の前にはミノルが立っており、ギルド戦士達はそんなミノルの前へ立ちはだかった。
「………退け…!」
「…うごッ!?」
「コイツ…なんて…力だ…!?」
戦士達はミノルの攻撃で次々と沈んでいった。そして、戦士達を倒したミノルがギルドへ入ろうとした瞬間、ミノルは吹き飛ばされた。
「……ッ!」
ミノルはすぐさま、態勢を立て直した。前を見るとそこにはトップランカーのトラベラー達が立っていた。
「ほぅ…【神雷】を耐えるか……それに読み取れない…新種か…」
「…貴様は…アガサか…」
「……話せる…という事は魔族か?…だが何故…私の事を…」
アガサに向かって、ミノルは突っ込んでいこうとした、その時、背後から何者かに肩を掴まれた。
「…!」
「へへ…長谷川参上…ッてか?」
すると、ミノルは長谷川の掴んでいる肩に、熱さを感じた。
「俺のスキルは【神光】…スキルを発動してモンスターや魔族に触れると…そいつは…」
「……消滅する…だろ?」
「…なに?」
その刹那、長谷川はミノルの頭突きを食らい膝をついて倒れた。
「なッ…ガフ…ッ…」
「だがそれは…即効性がない……完全消滅させるには1分ほど触れておく必要がある…」
「……スキルの事を…知ってる!?」
その場にいたトップランカー達は少し動揺した。
「…しかも…途中で離せば消滅は停止する…」
「…………ッ…」
ミノルはトップランカー達の方を凝視して、トップランカーのトラベラー達に言った。
「……さっさとこいよ…でないと……ギルドと…この世界を……ぶっ壊すぞ?」
「…たかが新種のモンスター如きが……俺がやる…!」
そう言って、若林がミノルの前へ歩いていった。




