午後5時20分の十郎
十郎は椅子に座るアリスに尋ねた。
「…もしかして…あなたが鍛冶師…ですか?」
「……そうだよ?」
「…そうだったのですね……」
『まさか…アリスさんが鍛冶も出来るとは…』
少し驚きながら、十郎は鍛冶屋の中に入った。
「………鍛冶の技術も持っていたのですね…」
「…元々は鍛冶屋だったからね」
「……ほう…」
十郎はアリスに刀を渡した、アリスは刀を作業台の上へ乗せて、刀を触ったりしながら話し始めた。
「………アリアン・スミス…僕の本名……みんなは略してアリスって呼んでくれてる」
「…アリスはニックネームだったのですね……それで…スミスという名を持つという事は…」
「……うん…一応僕も三大鍛冶屋の一人だよ………それじゃあ素材ちょうだい」
鉱石をアリスに渡すと、アリスは鉱石を食い入るように見た。
「き……君!…この鉱石は…!」
「その鉱石がどうかしました?」
スマコで鉱石を読み取っていなかった十郎は、首を傾げた。
『…貴重な鉱石とかだったのでしょうか…』
「……この鉱石は三ヶ月前…このギルドを襲った超巨大災害…[6月の陽]のコアじゃないか!…君があの災害を破壊したのか!?」
「…6月の…陽…」
十郎は[6月の陽]をスマコで調べて、驚いた。
[6月の陽]
レッドゾーンに突如発生した自然現象。雷、水、炎、氷、光などを生み出す貴重な鉱石が、長い年月をかけて融合し竜巻、落雷、地震などを引き起こす大災害と化した事件。
6月の陽は、発生から2時間後に何者かによってレッドゾーンのギルドへぶつかる寸前に止められ、消滅した。
「…いえ……これはミユキさんに譲ってもらったもので…」
「………ミユキ…か………まぁ…そうだろうね…あんなものを破壊できるのなんて…ミユキしかいないからね…」
そして十郎は、鉱石と刀を加工しているアリスに尋ねた。
「…あの……」
「……んー…」
「アリスさん…あなた……女性…ですよね…?」
アリスは少し黙った後に、クスッと笑った後に答えた。
「そうだよ」
「…やっぱりそうでしたか………何故…自身の事を僕と言い…男装しているのですか?」
「………」
十郎に聞かれ数分の沈黙の後、アリスは話し始めた。
「………スミス…王達に認められた鍛冶師のみが授けられる名前…」
「……」
「僕は…スミスという名前を貰う前は…アリアン・マラという名前だった…」
鍛冶屋では、アリスが作業する音だけが聞こえていた。
「マラ…確か貴族でしたっけ…」
「……ああ…マラという成り上がりの貴族だ……僕はそのマラの娘として生まれ…二年後にアランという弟が生まれた…」
「…弟……」
アリスは少し眉を寄せて、続けて話した。
「……アランは…男であるが故に…マラ一族の跡取りだった…しかし………心は…女だった…」
「…え?」
「肉体は男だ…だが……心が女だった………当然…父さんや母さんは嘆いたね…」
その時、アリスは作業台を叩いた。その目には殺意を帯びていた。
「……すると…僕は父さんに地下へ呼び出された……地下へ行くと沢山の男がいた…」
「…………」
そしてアリスは作業を一旦やめると、上着とズボンを脱いだ。
「……ッ…!」
「…男達に取り押さえられ……僕は…女を喪った……」
十郎が息を飲むとアリスは上着を着て、ズボンを履いて作業に戻った。
「……非道い…」
「…胸は……魔法で痛みを消されてナイフで切り取られた………子供も…二度と作れない……」
十郎は何も言えなかった、するとアリスは十郎に言った。
「その後は…男として育てられた……父さんは…跡取りがどうしても必要だったんだ…」
「……………」
「…逆らえばどうなるか……その恐怖から僕は…男として生きてきた…けれど……何故だろうな………」
そしてアリスは少しの沈黙の後に答えた。
……
ある時、全てが嫌になって家を出た。金も、武器も、何もかも持たず。そして、出た後は近くの街で物乞いをしていた。
そんな時、奇妙な格好をした男カワバタと出会った。カワバタは僕に1000Gくれた、そして、目印のしてある街の地図をくれた。
「……この鍛冶屋を頼れ…じゃあな…」
目印のされている鍛冶屋へ行くと、初老の鍛冶師と無口な鍛冶師がいた。初老の鍛冶師の名前はソラ、無口な鍛冶師の名前が、ディアン。
二人に訳を話すと、快く僕を受け入れてくれた。
……
「ソラさんに鍛冶を教えてもらって……いつしかディアンとライバルになっていた…」
「……あのディアンさんのライバルとは…しかし鍛冶屋なのですよね?…何故…モンスターと戦うギルド戦士に…?」
「…実際に戦って作った武器を試した方が良いと思ってね……そうしていくうちに…いつのまにかギルド戦士…それもトップランカーになっていた…というわけさ…」
アリスは苦笑いをして言った、そして、十郎に手招きした。
「……完成たよ…!」
「…できましたか!」
作業台の上には加工する前と変わらない13thが置かれていた。
「………これは…どこを加工したのですか?」
「…その刀は…先端が鎌のように変形するギミックがあったよね?」
「はい…」
「それを…強化した……さぁ…鎌に変形させてみて!」
十郎は刀を持って、変形させた。すると、変形するのは先端だけではなく、刀全体だった。
「…おぉ……」
刀は黒い雷や炎に包まれて大鎌になった。
「……前の鎌より…威力を強化して射程距離を伸ばした……その代わり…前の鎌より振りが遅くなるけどね…」
「…凄い…」
「………鎌以外にも出来るのだけど…君には全てを刈り取る鎌が似合ってると思って…嫌なら変えようか?」
「……いえ…鎌で全然良いです…!」
……
「…良かったよ…喜んでもらえて……」
「……すいません…一つ聞きたいのですが…」
十郎は鍛冶屋を立ち去る前に、アリスへ尋ねた。
「…ん?」
「何故僕に……過去を話してくれたのですか…?」
するとアリスは、少し黙った後に言った。
「…君のその目がね…昔の僕に似てたんだ……」
「………」
「まぁ…要するに気まぐれだ!」
「……気まぐれですか…」
十郎は納得して、鍛冶屋に背を向けた。
「…強化…ありがとうございました…」
「うん…」
鎌を背中に背負い、十郎はミユキの元へ歩いていった。
「……君のその目に…いつか光が戻る事を願ってるよ…」




