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武器無し



トラベラー


どこからともなく現れた異能の力を持つ者を人々はそう呼んだ。だが、一ヶ月に一人程度の頻度でこの世界に降り立っていたトラベラーはある日を境に降りてくる事は無くなった。


世界に迷い込んだトラベラーはギルドを創設し、世界で名を馳せた。最初はトラベラーだけで構成されていた数十人のギルドもいつしか腕自慢の戦士たちが加わり、もはや巨大な組織と化したギルドに所属している者を人々はギルド戦士と呼んだ。



……



「…うおおお!!」

「やべぇ!…早く逃げるぞ!!」


二人のギルド戦士が山岳ライオン型モンスターから逃げていた。すると突然、ライオン型モンスターはは苦しみだし、倒れると霧のようになり消えた。


「…た…助かった……誰かは知らんが助か…あ!」

「あ……アンタは!!」

「お前たちも私と同じ依頼を受けていたようだな」


ギルド戦士の目の前には黒いフードを被った男が立っていた。その男はギルド戦士に魔素を投げ渡して言った。


「……やるよ」

「…ありがとう…ございます…」

「あの…アグンさん…ですよね?…上位の……」

「らしいな」


ギルドでは依頼を達成すると難易度に応じてPTが貰える。そのPTが高い程、報酬の良い依頼を引き受けられる。危険度Cからは100PT以上を持つ上位クラスしか引き受けられない。ギルド戦士は0〜499PTで一般。500〜1000PTで上位とされている。


「…な…なんだ!?」

「この揺れは…」


ギルド戦士たちの立つ地面が突如揺れ始めた。ギルド戦士の二人がその場で足を崩すと、アグンは剣を構えた。


「!!」


その瞬間に地面からサメ型のモンスターが飛び出した。それを見たアグンは顔は青ざめた。


「…グランドシャーク……危険度Sのモンスターだ…!……お前ら離れろ!!」

「ひ…ひぃぃ!!」

「…住処は近くの山の頂上だが…降りてきたのか?」


アグンは無線機で救難信号を送った。そして地面を泳ぎながら向かってくるグランドシャークに斬りかかった。


「うおお!!」


アグンがグランドシャークの頭を斬ったが、傷一つ付いていなかった、そして剣は刃こぼれしていた。


「…うお!?」


グランドシャークは尻尾でアグンを攻撃した。アグンは剣でガードして攻撃を防いだが、剣は耐えきれずに折れた。グランドシャークは地面に潜ってアグンの周りを回っている。


「…くッ……」


アグンはこうなる(殺される)事を覚悟していた。ギルドは無駄に犠牲者を出さない為、実績を持つ者にしか危険度の高いモンスターの討伐依頼は引き受けさせない。


そして危険度Sのモンスターは上位の更に上、最上位に位置する者達しか討伐する事を許されていないが、最上位戦士でさえも危険度Sのモンスターの討伐には最低でも三人で向かう。


『危険度S……俺には荷が重い…剣も使い物にならないし……ここまでか…』


アグンにグランドシャークが飛びかかった瞬間、グランドシャークは真っ二つになった。そこには一人の青年が立っていた。


「……大丈夫か?」

「…………助かった…感謝する…」


剣をしまったあとに青年が膝をつくアグンに手を差し伸べた。


『…テンマ……3780PTを持つトップランカーの一人…』

「どうした?」

「いや…」


アグンは手を借りて立った。トップランカー、単騎で危険度S以上のモンスターの討伐が可能なギルドの実力者。2000PT以上のギルド戦士がそう呼ばれる。しかしそれは殆どがトラベラーである。


「…すごいな……もう武器無しでも勝てるんじゃないか?」

「さすがに危険度S以上のモンスターを素手では倒せないよ」


その時に後ろから地面を這う音が聞こえた。二人が後ろを振り向くと新たなグランドシャークが向かってきていた。


「グランドシャークが…もう1匹いたのか……」

「そこにいて…」


テンマは剣を構えたその時に目の前を横切る男がいた。テンマは叫んだ。


「危ない!!」

「…!」


男はグランドシャークの方を向くと構えた。


「素手で挑む気か!?…危険だ!!」

「……ふむ……危険度Sか」


男はそう呟くと、グランドシャークの噛み付きと同時に飛び上がり、思い切り飛び蹴りをした。


「奮ッ!!」


グランドシャークは思い切り仰け反った。そして男はそのまま着地し、大きな口めがけて上段蹴りをした。無数の牙が折れ、グランドシャークはよろめきながら倒れて消えた。


「…ええ……アンタ何者…」

「相変わらず凄いね…伍城さん」


テンマたちの後ろから子供が歩いてきた。手には大量の魔素を持っている。


「全部…この付近に生息するモンスターの魔素か……まさかたった一人で……」

「……アンタらは一体…」

「…ギルドに最近加入した新人だよ!……だよね!」

「………」

『素手で危険Sのモンスターを倒すオッサンに……ナイフ一本でこの辺のモンスターを狩り尽くす子供か……』



……



「うおっと!」


俺は気配を感じて、地面から飛び出したサメを避けた。いきなりなんなんだ!?


「…グランドシャークらしいです……この先の山に生息する危険度Sモンスターです……僕が…」

「いや、今回は俺が!!」


俺は口を開いて落ちてくるグランドシャークの噛み付きを避けたあと、思い切り手刀を食らわせた。


「オラァ!!」


するとグランドシャークは地面でのたうち回った後に消えて、魔素を落とした。


「…梅岡さん強くなりましたね!」

「あったり前よ!…なんといっても格闘術の達人の元で修行したからな!」

「……へぇ…」


俺たちは魔素を拾って再び歩き出した。前を観ると山々が連なっていた。












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