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午後5時5分の十郎




「……それじゃあ…ついに最終ページか…!」


十郎とミユキはギルドの外で、ノートの最後のページを開いた。


「…………最後の技…これがこのノートの中で一番理解不能でした…」


ノートの最後のページには、大きく“死”と書かれていた。今までのページには技の名前、やり方などが書かれていたが、最後のページに書かれているのはその一文字だけだった。


「……それかァ…」

「…他のページと違い…この死という文字以外…一切書かれていないので……どのような技や技術なのか…そして名前も分からないのです…」


するとノートを食い入るように見る十郎に、ミユキが答えた。


「………【死を持って死ね(メメント=モリ)】……僕が創った業の中で一番…使ってて愉しい業…だよ…!」

「…メメント…モリ…」


そしてミユキは、【死を持って死ね(メメント=モリ)】の事を説明し始めた。


「…メメントモリはね……刃物を持っていないと使えない業さ……」

「刃物を持っていないと…」

「……うん…そして…この業がどんな業か……」


ミユキは十郎の目を、真っ直ぐに見つめて言った。


「…殺意を…極限まで高める……極限まで高められた殺意は(カタチ)へと変貌し…刃に宿る……こんな風に…!」


すると、ミユキの持っていたナイフは真っ黒になり、赤と黒の瘴気を纏っていた。


「……殺意の刃…すなわち死神の刃は…どんなモノだろうと…平等に刈る……メメントモリは…死神の刃を武器に宿す業さ…!」

「………殺意の刃…」

「まぁ…要するに…どんな生物だろうと…メメントモリを纏った刃で斬れば…普通に斬られたダメージを与える事ができるということサ!」

「…なるほど……最後の業に相応しい技ですね…」


ミユキはナイフをブンブン振って言った。ナイフは黒が取れ、通常の状態へ戻った。


「その代わり…魔法とか…他の武器とかは使えなくなる…解除しない限りね……それに殺意を極限まで高めた状態だから魔法を想像する力も失われるから魔法を使えない…」

「そのようなデメリットもあるのですね…」


十郎はミユキの説明を一通り聞いた。


「……よし…最後の業を会得しようか…!」

「…はい!」

「………それじゃあまず…その刀を構えて…!」


十郎はミユキに言われた通り、背中にある刀を手にとって構えた。


「…そして殺意を極限まで高める!…それだけ!……簡単でしょ?」

「………ッ…」


刀を構えて、体内から殺意を湧き立たせるが、刀は黒くならない。


「……あー…ダメだねぇ……」

「…くッ……」


するとミユキは殺意を極限まで高めようとする十郎の耳元で囁いた。


「……目を閉じて…」

「…?……は…はい…」


十郎は言われるがまま、目を閉じた。そして、目の前が暗闇に包まれた。


「……暗い…暗い…暗闇の中……君の目の前には梅岡君が倒れている…」

「…ッ!?…梅岡…さん…!?」


暗闇の中、目の前には梅岡が倒れていた。しかし十郎は動けなかった。


「………そして…倒れている梅岡君の所へ…悪い人達が来た……」

「……ッ!!」

「…悪い人達は…倒れている梅岡君の腹を……斬った…!」

「梅岡さん!!」


梅岡の腹を、悪い人が斬った。十郎は必死に動こうとするが、動けない。


「……あぁ…可哀想に……梅岡君は切り裂かれ…バラバラになっていってる…」

「おッ……お前…ら…」

「しかも…梅岡君の死体を弄んでいる!」


十郎は心の底から怒り、殺意を抱いた。それでも身体は動かなかった。


「…僕の……僕の梅岡さんに…それ以上触れるな!!……殺す!…コロしてやるッ!!…お前等の内臓を引きずり出して犬の餌にしてやる…ッ!!」


その時、暗闇が光によって照らされた。十郎がハッとして前を見ると、そこはさっきまでいたギルドの外だった。


「……こ…これは…」

「…その感覚……忘れないように…ね…!」


十郎の構えていた刀は、殺意の刃、即ち死神の刃を纏っていた。


「…出し入れできる?」

「……はい…」


黒く染まった刀は元に戻った、そして再び纏う事も十郎は出来るようになっていた。するとミユキが十郎へ言った。


「でも会得したばかりのメメントモリは人間にしか使えない……だけどメメントモリを完璧に扱えるようになる頃には……神を人間同様に殺せるようになる……それこそ…神斬りを持っていなくても…クロウじゃなくても…ね…」

「慣れないといけないのですね」

「そうだね!」


そしてミユキは、ノートを閉じて言った。


「………まぁ…とりあえずはこれで…コンプリート…かな!」

「……はい」

「…それじゃあ……ご褒美にコレをあげよう!」


十郎はミユキが投げた鉱石を受け取った。その鉱石は黒い氷のようで、氷の奥に薄っすらと光が見えていた。


「それを…このギルドにいる鍛冶屋に渡してきチャイナ!……君の武器を強化してくれるからサ!」

「…ありがとうございます……」

「それじゃあ…強化してきたらここに戻ってきてくだちゃい!」

「……はい…!」


……



「……鍛冶師はいますか?」


ギルドにある鍛冶屋に十郎が入ると、誰もいなかった。後ろからアリスが歩いてきた。


「…アリスさん」

「……十郎君か…鍛冶屋に何か用かな?」

「…この刀を…強化してもらおうと…」


アリスは刀をジッと見た後、鎧を脱いで鍛冶屋の中の椅子に座った。


「……強化かぁ…それなら魔素か…鉱石がいる…」

「………すいません」


十郎は椅子に座るアリスに尋ねた。


「…もしかして…あなたが鍛冶師…ですか?」

「……そうだよ?」

「…そうだったのですね……」

『まさか…アリスさんが鍛冶も出来るとは…』


少し驚きながら、十郎は鍛冶屋の中に入った。

















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