午後4時50分の梅岡
「……やったか…」
グローグリズは魔素になった、俺はその魔素を拾い上げた。熊は魔素を見た後、来た道を戻って暗闇に消えていった。
「………熊の恩返し…ってか?……フッ…ありがとな…」
……
「……光だ…」
グローグリズを倒して少し進むと、かなり開けた場所にあるゴーストタウンが見えた。街はそこそこの大きさで、天井には光のように輝く鉱石が無数にあり、明るかった。
『…地下にある街か……ロマンがあるな…』
ミノルさんの地図に書かれていたが、どうやらこの旧タリカ市街は元々炭鉱だったらしく、掘っていくうちに広くなったので街にしたとか。
『……広くなったから街にした…ブッ飛んだ発想だな…』
天井にある光っている鉱石はライトストーンという鉱石らしく、暗い場所を照らすライトペンダントの材料になるらしい。天井のは光源として設置しているらしいがな。
『ライトペンダント…喉から手が出るほど欲しいぜ……』
そうして、俺は松明を持って進んでいった。街に人の気配は無く、とても静かだ。
『……こんな街が何故…ゴーストタウンなんかになったのだろうか…』
そんな事を思いながら、俺は歩いた。すると、少し遠くから物音が聞こえた。
『…まぁ……モンスターだろうな…』
俺は音のした方へ近付いた、その瞬間、音のした場所から飛び出してきた人物を見て俺は驚愕した。
「……あッ…!?」
「…梅岡さん!」
飛び出してきたのはなんと、十郎だった。何故こんな場所に!?
「お前…ミユキさんとの修行をしてる筈じゃ…」
「……実は…この街に潜む凶悪なモンスターを討伐すれば…最後の技を教えてくださるそうで…」
「…なるほどな……」
どうやら十郎は、ミユキさんにこの街に潜む凶悪なモンスターを仕留める事ができれば、最後の技を教えてやると言われたらしい。
「それじゃあ探そうぜ!……けど…俺が協力してもいいのかな?…こういうのは一人でやった方が…」
「梅岡さんは一緒に探してくださるだけで結構です…討伐は僕一人でするので!」
「まぁ…そうすればいいか!」
そうして、俺たちはこの街に潜む凶悪なモンスターを探す事にした。
……
しかし、いくら探しても凶悪なモンスターどころか、普通のモンスターすらいない。それどころか俺たち以外の気配も感じ取れなかった。
「……何処かに隠れてんのか?…気配そのものが無いのだが…」
「うーん……もういないのもしれませんね…」
そんな時、俺の脳裏にある記憶がよぎった。俺は「そんな事ない筈」と自分に言い聞かせながらも、スマコでメールを送ると、十郎に尋ねた。
「……………なぁ…十郎…」
「…はい」
「………お前さ…本当に十郎なのか…?」
「…………はい…?」
すると十郎は、俺の問いに対して首を傾げながら答えた。
「……変な質問しますね…僕は十郎ですよ…?」
「………俺さ…[今何してる?]って…十郎にメールを送ったんだ…」
「………………」
「するとこんなメールが届いた……」
俺は十郎から届いたメールを、俺の目の前にいる十郎に見せた。
[ミユキさんにノートの技を教えてもらっていますよ!]
「……これは一体どういう事だ…!?」
すると十郎は、静かに笑みを浮かべて、奥にある墓廟を指差した。俺はその神殿の方を向いた。
「…あの墓廟がどうして建てられたか知ってます?」
「………あ…?」
「……この街…いや…地下には元々…人の負の感情を喰らうモンスターがいました……そのモンスターをこの地下から追い出した騎士共が死んだ時に建てられたものです…」
俺はその時、背後から禍々しい気配を感じ取ったが、振り返る事ができなかった。
「…しかしそのモンスターは…数年後に再びこの街に戻ってきた…騎士に復讐する為に…だが…街には騎士も…民さえもいなかった…」
「……ッ…」
「………本当に…虫唾が走るぞ……田中とかいうギルドの戦士に二度も敗れ…復讐相手もいなくなった……」
その時、俺は背後を振り返った。そこには歪な、禍々しい姿をした十郎がいた。
「…お前は……!?」
「くく…吼…」
そして、だんだんと身体が変化していき、少女の姿となった。
[黒霧]
危険度S
ハイゴーストの希少種。一つの種に一匹しか存在しないと言われる希少種の一つ。人と話せる程の知能を持つ。
普段は黒い霧のような姿をしているが、人の記憶を読み取り、姿を変える事ができる。食料を食べなくとも、人の負の感情を一度吸い取れば、一年程は活動できる。
「黒霧!?」
「だが……お前が現れてくれたおかげで…目的が果たせそうだ…」
「…なんだと…?」
すると、黒霧は手を広げた。その瞬間、街全体や墓廟から黒い粒子が飛び出してきて、黒霧を包み込んだ。




