午後4時40分の梅岡
俺は鉱石を踏み砕いた、すると鉱石はガラスのような音を立てて壊れた。
『………それじゃあ…先へ進むか……』
再度鉱石を確認した後、俺はゴーグルを装着し足跡を辿って歩いた。
『……ん?』
そのまま少し歩くと足跡が消えた、大きな茂みの中に。
『…これは……』
俺が茂みを分けると穴があり、奥へと続いていた。どうやらこの穴が洞窟の入り口のようだな。
『よし……進んでみよう…』
ゴーグルを取って、俺は洞窟の中へと足を踏み入れた。洞窟の中はとても暗く、3m先は見えない。
『……さて…どうしたもんか…』
俺は暗い場所が苦手だ、苦手ではないとしても、暗いので進むのは危険だ。だから俺は後退りして洞窟の外へ出た。
『松明は切れてるしなぁ…』
するとその時、上からお札のようなものが落ちてきた。
『…なんだこれは』
それは桜郎の話で出てきた魔札とやらだった。そして俺が手に取ったものは炎を生み出す魔札だった。
『……誰かが落としたのか?…運が良いな…』
俺は近くの木の枝を手に取り、炎を生み出す魔札で火をつけて松明にした。
『…よし……真っ暗闇ではない…光があるなら大丈夫だ…!』
松明を持って、俺は今度こそ洞窟の中へと進んでいった。
『……モンスターとかに襲われたら面倒だな…』
モンスターがいない事を願って俺は進んでいった。そして長い通路が終わると、開けた場所へ出た。
『…開けた場所だな……しかし…なんだかここ…元から広かった…というよりも……壊されて広くなったような…』
俺は疑問に思いながらも、開けた場所を進んでいった。すると、目の前に大きな岩のようなものがあった。
『なんだこれは…』
気になって触ってみた、手触り的には、動物の毛のような感触だ。ん?…動物の毛…?
「グロロ……」
「うおッ…と…!」
その大きな岩は、むくりと起き上がった。いや、岩ではない、モンスターだ!
「…で……デカイな…!」
そのモンスターは、熊と虎を足して黒い絵の具で塗ったようなヤツだった。
[ブローグリズ]
危険度S
獣系のモンスター。主に森に生息している。気性が荒く、自分よりも危険度の高いモンスターにも襲いかかる。鉄を砕く程の力を持つ。
「…危険度Sか……」
俺はバーサークローとの戦いで、一度倒せた危険度のモンスターだからと油断して、死にかけた。だからこそ、決して油断しない決意と、焦らず次の一手を考える冷静さを手に入れた。
「……やってやるぜ…!」
グローグリズは立ち上がって咆哮した、身長は4m程だ。俺は松明を左手に持ち替えて構えた。
『…左腕は使えない…下手に松明で攻撃して火が消えたら終わりだからな……それに…コイツは火を怖がっていないようだからどちらにせよ武器としては使えない…』
クソ、松明が邪魔だな。だが、無くてはならないものだ。
『……右腕だけか…』
俺が構えながら考えていると、グローグリズは暗闇の中へと消えた。
『クソ……コイツはヤバいぜ…』
背後からの攻撃を避けて俺は殴りかかったが、グローグリズは再び暗闇へと消えた。
『………厄介だな…』
片腕は使えず松明の光が届かない5m先は暗闇、全く最高のコンディションだな。
『…ッ!』
グローグリズが再び暗闇から攻撃してきた、避ける事はできるが、こちらの攻撃を食らわせる事ができない。
『………クソ…逃げるか…?』
だが、ここで逃げたら強くなれないような気がするし何より神を殺す目的を持つ俺が、ただデカイだけの熊のモンスターから逃げたら駄目だと思ったからだ。
『…なんだ……何かが向かってくる…!?』
その時、俺が歩いてきた方から足音が聞こえた。まさか、もう1匹くるなんて事はないよな?
「お前は!!」
走ってきたのは、俺が助けた熊だった。熊はグローグリズを見て咆哮すると、爪で引っ掻いた。グローグリズの胸に引っ掻き傷ができたが、グローグリズも負けじと熊を攻撃した。
「…あれは…」
熊の胸には、あの時の傷と全く同じものが付いていた。なるほどな、どうやらこのグローグリズに付けられたものだったらしい。
「…!」
その時に熊は俺の方を向いた、その視線に敵意は感じられなかった。
「……助太刀してくれんのか?」
俺はグローグリズが完全に熊との戦いに、夢中になっているのを見て。背後へ回り込んだ。
「暗闇に隠れなくてもいいのか?」
そして、グローグリズがハッとして背後を振り返ったが、もう遅い。
「……【牙王】…!」
俺はグローグリズに思い切り掌底打ちをした。グローグリズは大きく仰け反った。
「…【魔弾ライフル】…!」
そして、俺は【魔弾】のライフルを放ち、弾丸はグローグリズの胸を貫通した。
「……やったか…」
グローグリズは魔素になった、俺はその魔素を拾い上げた。熊は魔素を見た後、来た道を戻って暗闇に消えていった。
「………熊の恩返し…ってか?……フッ…ありがとな…」




